ホーム > トピックス > 国会会議録 > 140回 衆議院・本会議

トピックス

1997.04.08|国会会議録

140回 衆議院・本会議

岡田克也君 私は、新進党を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、橋本総理並びに小泉厚生大臣に質問をいたします。

総理、まず私がお聞きしたいのは、社会保障制度改革についての総理の基本的な考え方であります。

橋本総理は、いわゆる六つの改革の一つとして、社会保障構造改革の必要性を強調されています。しかし、その道筋は明らかではありません。

今、国民は、この国の社会保障制度の将来について大きな不安を持っています。急速な少子・高齢化社会の進展の中で、今後の社会保障費が増大することはだれの目にも明らかであります。しかし、働く世代の負担にも限りがあります。年金は本当にもらえるのだろうか、質の高い医療が今後も受けられるのだろうかといった疑問の声が、私と同世代または若い世代から上がっています。

今政治に求められているのは、これらの不安を解消するために、将来の社会保障制度の明確な改革ビジョンを示すことであります。総理の社会保障制度改革に対する基本的な考え方、方向性を、この場をかりて、国民に対して明らかにすることを求めます。

また、この問題に関連して、より具体的に二点質問いたします。

第一に、先般の財政構造改革会議は「国民負担率が五〇%を超えないよう経済、財政と調和のとれる社会保障制度を構築する」と決定しました。また、二〇〇五年までのできるだけ早い時期に赤字国債の発行をゼロにするとしています。これらの目標を本当に達成するためには、社会保障制度の抜本改革が不可欠となりますが、これは果たして実現できるのでしょうか。また、その際、全体予算に占める社会保障予算の割合、位置づけはどうなるのでしょうか。総理にお伺いをしたいと思います。

第二に、世代間の負担の問題についてお聞きをいたします。

私は、この問題に対し政治が率直に語ることが社会保障制度改革の実現の第一歩であると考えます。世代間の負担について、総理は基本的にどのように変えようとしているのでしょうか。言葉をかえれば、高齢者に対し、どのような考え方で、どの程度の負担増を求めようとしているのか、明快な答弁を求めます。

次に、医療保険制度改革の基本的視点についてお伺いします。

政府は、どのような視点で構造改革を行おうとしているのでしょうか。基本的視点を欠く改革は、結局は利害関係者の妥協の産物になってしまいます。

私は、診療報酬制度により物やサービスの価格が細かく決められている現状は、わかりやすく言えば、ソビエト型社会主義経済と同じ状態であると考えます。その結果、価格競争の余地はなく、また民間活力を生かすことも難しい状態にあります。私は、たとえ部分的であっても、市場メカニズムが働き競争が行われることが、医療の分野における効率性を上げるために極めて重要と考えます。また、競争がないことが、不正や不公正が発生する余地を大きくします。これを防ぐためには、幅広く情報公開を行っていく必要があると考えます。医療保険制度改革は競争原理の導入と情報公開を中心に行うべきなどの私の考え方に対する厚生大臣の見解を求めます。

同時に、価格メカニズムが十分機能するためには、医療行政に特有な民間企業のカルテル体質を打破しなければなりません。予算委員会でもたびたび取り上げられた医療食や病院寝具をめぐる独禁法違反事件は、診療報酬制度の硬直性や不透明性を悪用したものと言えます。加えて、最近、厚生省所管の全国福祉用具製造事業者協議会の会長会社が独禁法違反容疑でまたも立入検査を受けました。このような医療分野においで根深く存在している一部企業の競争制限行為について、これを全面的に見直し、是正する気持ちがあるのか、厚生大臣にお伺いをいたします。

次に、医療保険制度改革の進め方について、二点伺います。

消費税の引き上げ、特別減税打ち切りの中で、約二兆円の医療保険の負担増が提案されていることに対し、国民各層から強い反対の意思表示がなされています。しかし、国民は単に負担増に反対しているのではありません。負担増を求めるに際しての手順、プロセスに対して怒りを覚えているのであります。本年一月の医療保険審議会は、今回の改革案は「負担増が中心であり、制度の総合的な改革に向けての取り組みが十分でなく誠に遺憾である」と、政府の審議会としては異例の答申を行っています。なぜ構造改革に着手することなく負担増のみを求めようとしているのか、総理の見解を伺います。

次に、改革のスピードの問題があります。

医療制度改革は、既に政府の各種審議会において論点の整理ができており、あとは政治家が大局的な見地から決断をする段階に来ています。私は、国民負担増を求めるのみの法案を撤回し、一年間に期限を切って抜本的な構造改革の徹底的な議論を行い、構造改革と負担増をセットで行うべきではないかと考えます。この点について、総理の見解を伺います。

次に、法案の具体的内容について質問いたします。

第一に、老人の負担増についてであります。

私は、負担増を言う前に、少子・高齢化時代における老人医療のあり方について基本的な考え方を明示することが政治の責任であると思います。単なる負担増には反対であります。

老人保健に対する拠出金制度が健保組合赤字の原因であり、これ以上、現役世代の負担増には限界があります。私は、高齢者は社会全体で支えていくとの理念のもと、高齢者独自の制度をつくるとともに、その財源については基本的に税金で対応すべきと考えます。私の考えも含めて、老人保健制度についてどのような改革をしようとしているのか、お伺いをいたします。

また、老人の負担について、定額か定率かの議論があります。この問題について、小泉厚生大臣は、予算委員会における私の質問に対して、今国会では定額制で推進していきたい、将来についてはしばらく見ないとわからない、こういうふうに答弁をされました。厚生大臣御自身が定額制に対して疑問を持っているようにも聞こえます。政府が現在国会に提出している介護保険法案で、老人に定率一割の自己負担を求めていることも考え合わせれば、医療についても将来一割の定率負担とすることが論理的ではないかと考えますが、この点について厚生大臣の率直な御意見をお伺いしたいと思います。

第二に、薬剤費の新たな負担についてであります。

本案では、薬剤については新たに窓口で一日一種類十五円の負担を課すことになっています。しかし、価格の高い薬も低い薬も負担が同額であるならば、患者側からすれば個々の薬のコストは全くわからないわけであります。これではコスト意識を持ちようがありません。何のために薬剤について定額制にしたのか、またなぜ十五円であるのか、明快な答弁を求めます。私は、日本の国際的に見て明らかに高い薬価の抜本的引き下げが薬剤費負担導入の前提条件であると考えます。また、新薬の価格設定に当たり、一部政治家の不当な介入が行われているのではないかとの報道があります。私は、このような疑念を払うためにも、新薬の価格算定プロセスを完全に公開すべきであり、またそのことは政治家の決断により十分可能であると考えます。厚生大臣の見解を求めます。

最後に一言申し上げます。

私は、さきの予算委員会において、私の質問に対し小泉厚生大臣が次のようにお答えになったことを大変印象深く記憶しております。すなわち、医療保険制度改革についで、構造改革をせよせよと言う人は多いのですけれども、あらゆる聖域をなくして歳出削減をせよと言っているような人でもなかなかまとめ切れない、いかに民主主義というのは合意形成が難しいかということを痛感いたしました、このように述べられたわけであります。私は、率直に申し上げて、郵政三事業の民営化に信念を曲げずに閣内で孤軍奮闘しておられる厚生大臣らしからぬ弱気な答弁であると感じました。

しかし、さまざまな反対論を説得し、最後は政治の決断を行うことがすなわち改革であります。厚生行政に深い経験を持つ橋本総理と小泉厚生大臣がみずからのしがらみを断ち切って改革を断行することなくして、他の分野における改革実現は到底不可能であります。

与党医療保険制度改革協議会のまとめた基本方針が昨日発表されました。診療報酬や薬価の扱いについて、当初伝えられた案よりも大幅に後退したとマスコミは一斉に報道しています。この間、調整は与党協議会にゆだねられ、自民党総裁でもある橋本総理のリーダーシップは発揮されませんでした。これで本当に六つの改革はできるのでしょうか。

医療保険分野における構造改革に取り組む総理並びに小泉厚生大臣の決意を最後にお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)



内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 岡田議員にお答えを申し上げます。

まず、社会保障構造改革についてのお尋ねがございました。

先ほどもお答えをしたことですけれども、急速な少子・高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に確実に対応しながら、医療、年金、福祉等を通じて給付と負担の均衡がとれ、しかも経済活動と両立し得る、サービスの選択、民間活力の発揮といった考え方に立った、効率的で安定した社会保障制度を確立していかなければならないと考えております。そうした視点に立って社会保障構造改革を進めていくこととしており、その第一歩として、介護保険制度の創設と医療保険制度の改正について、今国会で御審議をお願い申し上げております。

財政構造改革につきましては、我が国の財政状況が極めて深刻でありますことから、先般の財政構造改革会議で明らかにいたしました財政構造改革五原則にのっとって、改革の実現を図りたいと考えております。社会保障予算につきましては、歳出全般の見直しの一環として、十三の重点の項目の一つとしてこれをとらえておりますが、今後、医療、年金を中心に必要な見直しを行うなど各分野の合理化を図りながら、必要な給付は確実に保障していくという考え方で取り組んでいきたいと思います。

次に、世代間の負担についてのお尋ねがございました。

高齢化に伴って増加が避けられない社会保障の費用をどのように公平に負担していくか、十分な国民的論議を経た国民の選択によるべきものだと思います。しかし、高齢者の経済的な水準が既に相当なものとなっていること、また今後の高齢者の増加を考えますと、社会の自立した構成員としての高齢者にも応分の御負担をお願いし、現役世代と高齢世代の間の負担の公平を確保していくことが大切だと考えております。

次に、医療保険の負担増の提案に対して、なぜ患者の負担増のみを求めるのか、さらに、医療保険の構造改革と患者負担の見直しをあわせて実施すべきではないか、そうした御質問とともに、構造改革に取り組む決意についてのお尋ねがございました。

二十一世紀に向けて社会保障構造改革を推進していく必要があることは御理解をいただけるものと思いますし、その一環として医療保険制度の改革に取り組んでいく考えであります。そのためにも、老人医療制度のあり方や診療報酬体系の見直し、薬剤使用の適正化、医療提供体制の見直しなどについて早急に着手するなど、抜本的な改革を進めてまいります。こうした改革を進めていくためにも、現行の医療保険制度の財政の安定を確保していくことが緊急の課題でありますことから、医療保険改革の第一段階として、平成九年度に給付と負担の見直しなどの制度改革を実施することといたしたわけであります。

残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)

   〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕

国務大臣(小泉純一郎君) 岡田議員にお答えいたします。

競争原理の導入と情報公開の推進が必要でないかというお尋ねですが、大筋で、基本的に私も同感であります。医療における情報公開についても、私は今後積極的に取り組んでいきたいと思います。

企業の競争制限的な行為はどうかというお尋ねでありますが、平成八年五月に、医療食については医療用食品加算制度を廃止するとともに、本年三月、財団法人医療食協会の解散を認可したところであります。また、病院寝具の代行保証契約については義務づけを廃止するなど、厚生省は関与を行わないことにいたしました。今後とも、公正な競争が阻害されないように適切に指導をしていきたいと思います。

老人保健制度についてのお尋ねですが、現在でも年間八兆円を超える老人医療費を税により賄うこととすれば、これは大幅な公費負担増となるという問題点があります。税だけではなかなか難しい。こういう点も含めて、私は、今後、制度改革について、いろいろな意見を聞きながら抜本的な検討を進めていきたいと思います。

それから、定額の負担はどうなのか、定率負担の方が論理的ではないかというお尋ねであります。

論理的といえば確かに論理的なのです。それができないところに難しいところがある。それも含めて、できるだけ論理的なものにしたいという気持ちは、私にあります。しかし、こういう問題については、将来の一部負担はどういうあり方かというのはこれから議論されるわけですから、その中で世代間の公平や高齢者の経済能力等を考慮しながら今後検討を進めていきたいと思います。

それから、薬剤費負担を十五円の負担とした理由はどうかということですが、薬の使用量に応じた薬の一部負担を新たに設ける。これは、若人の給付率が各制度で異なっております。若人と老人を通して公平な負担をお願いするということからしたわけですが、今は老人の薬剤費の一種類一日分の額が百五十円程度であります。その一割というとちょうど十五円でしょう。ということで十五円としたわけであります。

それから、薬価基準の算定なんですけれども、これは確かに、現在の薬価基準、価格設定は問題があります。新薬の価格算定プロセスの公開についで、これは、薬価の算定方式等の一般的ルールについては中央社会保険医療協議会の建議等に基づき定められておりますから、その取り扱いについては公表しているところであります。新薬の価格設定については、このルールに基づき算定を行っておりますが、国民に適切な情報を提供する観点から、今後その算定根拠の公表に向けて取り組んでいきたいと思います。

それから、今後の医療保険分野における構造改革に取り組む厚生大臣の決意いかん、郵政三事業に比べて歯切れが悪いんじゃないか。確かにそうなんですが、これは、現実に法案を出している、多数の意見が賛否両論に分かれて各党がみんな法案を出している段階、こういう段階においては、当然現実論というものも考えなきゃいかぬ。そして、しがらみがありますけれども、私は今後できるだけそのしがらみを打破する努力をしなきゃいかぬと思っております。

これから二十一世紀に向けて、医療提供体制あるいは医療保険制度の両面にわたって総合的、段階的に実施をしていく必要がありますので、私はこれからも、今回の法案を提出したことによって、その抜本的な意見がいろいろ出ておりますから、この機運をとらえて今後早急に抜本的な改革に取り組んでいきたいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。




TOP