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1997.02.27|国会会議録

140回 衆議院・予算委員会

岡田委員 新進党の岡田克也です。官房長官に来ていただいておりますので、最初に沖縄問題を少し質問させていただきたいと思います。

先般のオルブライト国務長官の訪日時に、総理との間で沖縄の海兵隊の問題について議論があった、こういう報道がございます。報道の中身は新聞によってかなり差がございますが、例えばある新聞は、海兵隊削減について緊密に協議するという話が総理から出された、あるいは他の新聞は、将来の削減を含め柔軟に対応していく、こういう話になったというふうに伝えております。あるいは官房長官御自身の記者会見の中で、極東情勢の変化、そういうものを踏まえれば、中長期的には当然変更がなされなければならないし、その時代に合うような体制にこれから持ち込まれるであろう、こういう発言もあるわけでございますが、総理と国務長官の間で、この沖縄の海兵隊の問題について正確にはどのようなやりとりがあったのか、官房長官にお聞きをしたいと思います。

梶山国務大臣 オルブライト長官と総理の、私は陪席をいたしておりませんからどういう話が正確になされたのかは知りませんが、それぞれニュアンスの違いのある表現に新聞等においてはなっております。それぞれ、ある意味では期待、願望を持ちながら双方がお話しになっているわけでありますから、それぞれの所感が違うかとは思いますが、全く話題にならなかったということではない。

しかし、一般のことでもそうでありますが、軍事力、特に考えますと、これは仮定の条件で物事を判断をするわけにはいかない。将来の推定そのものはありますけれども、現実の今の対応はどうするかというと、そういう新しい体制が発生しない限りそう簡単に変えることはできない。

昔から、百年兵を養うはこの一戦のためという言葉がありますが、精兵を養い、なおかつ保有をすることは、それは百年間平和が続くことを祈念をするからであります。百年間平和が続かない場合に敗れないためであります。

そういう二つを考え合わせてそれぞれのお話を聞きますと、含蓄のある思いがしますけれども、私は残念ながらその表現力を持っておりません。何とお答えをしていいかわかりませんが、それぞれの思いを込めて話があったというふうに理解をいたしております。

岡田委員 官房長官、沖縄問題、大変熱心に取り組んでおられるわけですが、この沖縄の普天間の問題を考えましても、やはり私は、最終的に沖縄から兵力あるいは基地を減らしていこうという考え方に立てば、海兵隊の削減あるいは撤退ということに行き着かざるを得ないんではないか、そういうふうに思っております。

沖縄にはもう一つ嘉手納の空軍基地がございます。どっちをとるかという話になったとすれば、嘉手納の空軍基地というのは全体の、場合によっては中東まで含む米国の空軍の戦略拠点であります。もちろん普天間の海兵隊についても重要であることは論をまたないわけでありますが、しかし、二つある限りは抜本的な兵力の削減や基地の削減にならないとすれば、そしてその中でどっちをとるかといえば、私は、海兵隊に将来撤退をしてもらう、そういうことしか道はないんではないかという気がいたします。

もちろん、今の極東情勢、特に朝鮮半島の情勢を考えれば、今撤退をしてくれ、そういう情勢にはないようにも思います。しかし、今撤退をしてくれということは言えなくても、将来、例えば朝鮮半島が安定をするとか一定の条件が満たされれば、そのときには撤退をしてくれ、そういう話を今することは、私は決して不可能ではないと思います。

先ほどの官房長官のお話では、それは将来のことは予想できないからという趣旨の話であったと思いますけれども、しかし、今沖縄の県民の皆さんの気持ち、そういうものを考えれば、何らかの将来の展望がなければ、普天間の基地の移転の問題もデッドロックに乗り上げておりますし、結局、この四月に迎える大変な問題について、それを乗り越えていくことはできないんじゃないか、そういう気がするわけでございます。ここは、私は、もう政治家の判断だ、政治家の決断の問題だという気がいたします。四月には日米首脳会談も予定されておりますが、私は、その場で、将来の一定の条件が満たされた場合の沖縄からの海兵隊の撤退について首脳間で話をして、そういったものがきちんとメッセージとして沖縄に伝わる、そのことが、少なくとも沖縄の県民の皆さんが将来について希望を持つための最低条件じゃないか、そういうふうに考えているわけでございます。

官房長官のいろいろな沖縄についての答弁をお聞きしておりますと、沖縄の問題を何とかして、自分の政治生命をかけて解決しようという意欲は伝わってまいります。そういうことがわかった上で御質問申し上げたいんですが、今私が申し上げました海兵隊の問題について、官房長官、今どういうふうにお考えでございましょうか。官房長官の政治家としての御見識を聞きたいと思います。

梶山国務大臣 岡田委員の発言の意味がわからないわけではありませんが、私は、政府を構成する一員として、国家に責任を負わなければなりません。そういうことを考えますと、冒頭、私、例えを引いて申し上げましたけれども、百年兵を養うはという言葉がありますが、決して自国の兵ではありませんが、日米安保条約によって有効に日本の安全が維持をされている、この現実を考えますと、みだりにそういうことは今軽々に申し上げるわけにはまいらない。

しかし、沖縄の県民の痛いほどの気持ちを理解しないわけではありません。私は、政府を構成する一員として、また国会議員として、国益を最大限に考えなければなりません。苦痛を乗り越えてもやっていかなきゃならないという決意でおります。

岡田委員 この話は大変微妙な話であります。政府の中でもいろいろな御議論があって、検討されていることだと思いますが、ぜひ政治家としての御判断、御決断というものを期待を申し上げておきたいと思います。

官房長官、以上で結構でございます。

さて、次に、日米ガイドラインについて質問をしてまいりたいと思います。

先般の予算委員会で、堀込委員の質問に対しまして、ガイドラインの国会への中間報告の問題でありますが、防衛庁長官は、ある程度まとまりが出てきた場合に、できるだけ早くオープンにしていきたい、こういう議論の中でさらに詰めていきたい。つまり、国会にまず報告する中で国会の議論もやり、そして日米の詰めもやっていきたい、そういう趣旨だと私理解いたしましたが、そこで、じゃ、いつごろ国会に対して中間報告をいただけるのか、時期について明確にお話をいただきたいと思います。

久間国務大臣 ワーキンググループ等をつくっていろいろと検討しているところでございますけれども、この問題は、我が国の安全保障のあり方の基本にかかわる問題でもございますから、国会初め広く国民の御理解を得ながら政府間の作業を進めていくことが極めて重要だということはこの間も言ったとおりでございますけれども、その作業の過程である程度の区切りが出た段階でということを申し上げるわけでございまして、それがいつかというのは作業の進捗状況にもかかわってくるわけでございますので、できるだけ早くやれれば越したことはないのですけれども、やはりある程度の区切りができます時期を、今ここでいっという時期を切ってはなかなか申し上げにくいわけでございまして、今作業が続いておりますので、ある程度の区切りが出た段階でまた議論をさせていただきたい、そういうふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

岡田委員 この問題を議論しているのは防衛協力小委員会、SDCの場だというふうに理解しておりますが、近々局長クラスでこの会を開く予定はいつなんでしょうか。それが一つの区切りになるだろうというふうに思っておりますが。

折田政府委員 防衛協力小委員会は、御指摘のように局長レベルの会合でございますが、今のところ国会の御日程その他がありますので、いつごろ会合が開けるかということでめどが立っているということは、今の時点ではございません。

岡田委員 この日米ガイドラインの問題、非常に大事な問題を、後で申し上げますがたくさん含んでおります。そういう中で、国会の会期は今のところ六月半ばということになっているわけでございますので、ぜひ国会開催中に十分議論ができるようなタイミングで中間報告をしていただきたい、そういうふうに考えておりますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。

久間国務大臣 先般もそういう御意見が出ておりまして、それを十分頭に入れながらできるだけ早くという気持ちでおりますけれども、作業の詰めぐあいがどうなりますか。しかし、今おっしゃられましたそういう趣旨は十分尊重してまいりたいと思っております。

岡田委員 それでは具体的中身に入っていきたいと思いますが、外務大臣にお聞きいたします。

ガイドラインの対象とする地域の問題であります。

ガイドラインの中で、具体的な検討対象として、日本周辺地域において発生し得る事態で日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合についていろいろ研究をする、こういうことになっております。

ここで、日本周辺地域という概念が登場するわけでございます。この日本周辺地域というのは防衛計画の大綱、防衛大綱でも出てくる概念でございます。この日本周辺地域というのは、これは外務委員会で外務大臣に一度お聞きしたことがあるかと思いますが、具体的にどの範囲までを言うのか、そしてまた、極東地域に限らず、日本周辺地域という概念がここで用いられているのはなぜかということについて、お答えをいただきたいと思います。

折田政府委員 御指摘のように、日米防衛協力のための指針の見直しにおきましては、「日本周辺地域において発生しうる事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力」についても研究、協議することになっておりますが、ここに言います日本周辺地域というのは、日本の周辺であって、そこで発生する事態が我が国の平和と安全に重要な影響を与える可能性のある地域という一般的な意味で使用しているものでございまして、特定の地理的概念を念頭に置いたものではございません。

岡田委員 今の答弁はトートロジーの典型でありまして、日本周辺地域というのは日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす地域だ、それで日本周辺地域において発生する事態で日本の平和と安全に重大な影響を与える場合について検討するんだというと、一つの言葉の中に二つ同じ言葉が出てきまして、全く答弁になっていないように思います。

じゃ、具体的にお聞きしたいと思いますが、時間も限られておりますので、例えばインドネシアやあるいはタイやマレーシアでの米軍の活動に対する日本の支援、こういうものはこの指針の対象ということになってくるんでしょうか。

折田政府委員 いろいろな事態が考えられるわけでございますが、我が国の平和と安全に重要な影響を与える可能性のあるということでございまして、現段階で日米間で、そもそもこの作業はどこかの地域を、特定の国を念頭に置くものではございませんし、今委員がおっしゃられた区域について特定の議論をしているということはございません。

岡田委員 ガイドラインというのは抽象的なものですから、特定の地域についてというものではないというのはわかりますが、しかし、そのガイドラインをつくったときに、それが適用対象になるのはどこまでかということは、それは当然政府として前提としてあるはずですね。それが抽象的には日本周辺地域ということになっているわけですが、じゃ、具体的にインドネシア、これは極東には入っていない。極東というのはフィリピン以北だ、こういうことですから極東には入っていないわけですが、インドネシアやあるいはその他のその周辺の国というのはどうなんですかということを私はお聞きしているわけであります。具体的にそこで何かあったときに、この防衛協力の指針が適用されて、そして自衛隊が例えば後方支援活動をするんですか、どうですか。そのことについて防衛庁長官、いかがでしょうか。

池田国務大臣 日本の周辺地域ということをどういうふうに考えているかということは、先ほど北米局長から御答弁したとおりでございます。

それから、今回ガイドラインのいわゆる第三項でいろいろ協議しておりますのは、日米安保条約に基づくいろいろな日米間の協力だけじゃございませんで、例えば国際的な人道的な面からの救援活動に際してどうするかとか、あるいはいろいろな事態が生じたときに、例えば邦人の避難をどうするか、そういったことも対象に入っているわけでございます。そういった面におきましては、委員が意識しておられる極東地域とこの日本周辺地域云々ということは直接には並んでこない、こういうことは言えると思います。

それから、すぐれて防衛的な意味でのインプリケーションと申しましょうか、それと極東地域との関係はどういうことになるかという点でございますが、当然のこととして、日米安保条約に基づいて米軍がいろいろと行動していくというのは、安保条約上はこれは極東地域に入る、これは当然でございます。

ただ、極東地域の安全を守るためのものであるということは当然でございますけれども、これは従来からの政府の答弁で明らかになっていますけれども、極東地域の安全を守る、平和を守るために具体的に米軍が行動する地域がどうなのかというのは、これはまた若干別の観点から見ていく必要がある。必ずしもこの条約上平和を守る対象となっている地域に限定されるものではない、場合によっては、その地域の、極東地域の平和を守るために他の地域に米軍が行動することもあり得るということは、従来からの長年の政府答弁の中で明らかにしておるところでございます。

しかし、いずれにいたしましても、今回のガイドラインで研究しております日本周辺地域のいろいろな事態というのは、先ほどの局長答弁のとおり、そこで生起する状況というものが我が国に対していろいろな影響を及ぼすことがあり得べしという、まあトートロジーとおっしゃいましたけれども、それはトートロジーかもしれませんが、現実に我々の問題意識、そして研究をします場合に想定している事態というものがそういうものでございますから、具体的にどこからどこまでというふうに地域を確定するということは、この論議の前提からいいまして必ずしもその必要はないんじゃないのか、あるいはむしろ地理的に確定することがそれほど大きな意味を有するものとは考えない、こういうことでございます。

岡田委員 私は、これは非常に大事な問題だというふうに認識をして質問しております。

例えば、防衛庁長官、二月十三日の堀込委員の質問に対してこういうふうに答えられていますね。「武力行使はだめでございますが、それ以外の分野では極東以外のそういったところ」、これは日本周辺地域のことです。「極東以外のそういったところへも平和貢献その他いろいろな形で防衛の役割としてあり得るのではないか、」これを私聞いたときにおやっと思いました。ちょっと今までの答弁とニュアンスが違うんじゃないかな。つまり、日米安保とは別だから、しかも武力行使でないんなら、それは極東ということにとらわれずにもつと広い範囲、日本周辺地域というところまで自衛隊の活動領域としてもできるんだ、そういうふうに私受け取ったんですが、久間長官、いかがでしょうか。

久間国務大臣 そのときに、国際平和協力活動とか人道上の活動とか、そういうことが頭にいって、議論の前後がどうだったのか今急に思い出せない点もございまして、そういう分野ではもっと幅広く行動することがあり得るというようなことがかすめたのかもしれません。

いずれにしましても、非常にこの問題で、最後の表現がガイドラインができ上がったときにどういう形になるのかなかなかつかみにくい点があるわけですけれども、それは一つには、その作業の過程においてはあらゆるいろいろなケース、あらゆるいろいろな状況を検討しながらやるけれども、きちっとまとめるときにはかなり抽象的な表現にせざるを得ないという、そういう問題があるわけですね、根っこには。

そうしますと、今具体的に言われましたような、そういう地域を含めてここは入るか入らぬかというような、そういうことはなかなか最後にでき上がったときでも表現しにくいんじゃないかという気がするんですよ。

だから、我が国に非常に安全保障上問題になるような、そういうような状況で我が国周辺という表現で今来さしてもらっておりますけれども、これが、詰めていった最後にでき上がった状況のときに、機能とか分野とかをいろいろ抽出しながら、いろいろなことで表現できると思うんですけれども、場所についてここは入るとかここは入らないとかという表現ができないんじゃないかなという気がしておるもので、非常に抽象的なことでお答えしておるわけでございますので、どうかそういうような、特に今その経過のさなかでございますから、ぜひひとつそういうことについても御理解賜りたいと思うんです。

岡田委員 私は、だから問題だというふうに申し上げたいんです。

で、私個人的には、自衛隊の活動範囲というものが極東を超えて広がっていくということについて決して否定しているものではありません。しかし、それにはきちんとした、そういうことですよということを政府からお示しになって、そしてきちんと説明がなければ、抽象的な議論の中でいつの間にかそれが入ってしまうということは私は絶対やっちゃいけないことだと思います。

先ほど長官の答弁を引用しましたが、私は、長官の論理でいけば、例えば後方支援活動、一つの国の例をとって恐縮ですが、インドネシアで何らかの武力衝突があったときに米軍がそれに対して行く、そして米軍も戦闘行為に入っている、そこで日本が何らかの後方支援活動をするということも、それが武力行使にはならない限り、後方支援活動の武力行使にはならない限りそれも可能であるかのようにも思えるわけです。

そこのところについて、きちんとしたやはり線引きをして、そしてそういうことも認めるんなら、それはこういうことで認めるんですよ、憲法上あるいは従来の考え方から変わるところがあれば、その変わるのはどういうふうにして変わるんですよということをきちんと説明していただかないと、抽象的にいつの間にか入っているということでは困るわけで、そういう問題意識で私は質問申し上げているわけであります。

久間国務大臣 今は検討の過程でございますからなかなか言えない点がございますが、ただ言えることは、少なくとも、武力の行使となるような、今までの従来の政府が憲法解釈上とっているその武力の行使になるようなことはしないというその限定だけはきちっと守りながらやっていく、それを強調しておったわけでございまして、この間の多分あれでも、武力行使になるようなことはしませんということを強調したんだと思います。

だから、そういうような限定の枠の中でどこまでが精いっぱいやれるかということを今いろいろと検討しておるわけでございますので、だから、そういうふうにひとつ御理解しておっていただければ、これから先、詰まってくる中でまたいろいろな御論議もいただきたいと思いますけれども、今言えますのは、とにかく憲法の枠、日米安保条約、そういうものの従来のそういうような枠はきちんと守りながらやらしていただくということを強調したかったわけでございます。

岡田委員 武力行使ができないのは憲法上当然であります。ですから、武力行使に至らない後方支援などについてそういった幅広い範囲まで自衛隊がやっていくということについて、私は、きちんとした説明が、もしそういうことをお考えであれば、あるいはそういうことが読めるようなガイドラインになるんであれば、きちんとした説明が必要ではないか、そういうことを申し上げているわけでございます。

それでは次に、その後方支援活動と憲法九条との関係について少し議論さしていただきたいと思います。

これも例で恐縮でございますが、例えば極東有事になって、そして既に米軍は戦闘状況になっている、戦っている、そういうときに、公海上において日本の自衛隊が武器弾薬を供給するということは憲法九条との関係で許されるというふうにお考えでしょうか。

久間国務大臣 戦闘状態になってというふうに言われましたけれども、具体的にどういう地域でどういうような形でなっているのか。そのときに、後方支援といってもいろいろありますけれども、どういう状況を想定してかなかなか難しい点がありますが、今言われましたような、武器弾薬等をじゃ供給できるかというように言われましても、今言う状況ですけれども、非常に憲法の制約があって難しかろうと思います。

ただ、抽象的には、戦闘状態にあってと言われましたので、それがどれぐらい遠いところでなのか、今まで法制局長官がずっと述べてこられましたああいう四つの条件みたいなことを一々クリアしながら、その中で可能性があるのかどうか、それはまた研究したいと思いますけれども、非常にシビアな感じがするんじゃないかなという感触はあります。

しかしながら、これがじゃ絶対できないかと言われますと、それはまだそういう場面が具体的に提示され、提示といいますか、具体的にどういうところでどういう形で戦闘がどの程度になっているのか、それは日本とどう離れているのか、そういうことがやはりきっちりしませんと、一概に絶対だめだと言い切れるかどうか。これもまた抽象論になりますけれども、非常に難しいけれども、ただ、感覚的に言うと非常に問題が多いんじゃないかなという気がいたします。

岡田委員 従来、法制局の御答弁では、そこで武力行使との一体性の議論ということになって、主として四つの判断要素というのが出てくるわけでありますが、今長官がおっしゃったように、個々に判断していくんだということですが、それでは、その個々に判断をするのはだれがするんでしょうか。国としてするのか。それとも、現実に後方支援しようとするときに状況は刻々変わってきますね。そういう中で現場の指揮官がそれを判断するわけですか。いずれなんでしょうか。

久間国務大臣 少なくとも、現場の指揮官がそれを判断するようなことのないようにはしたい。やはり国がきちんとそういうものについては指導、指導といいますか例示をしてやれるような、そういうことをやはりすべきじゃないかというふうに私自身は思っております。現場の指揮官に憲法判断をゆだねるようなことはすべきでない、そういうふうに理解しております。

岡田委員 私も、それはおっしゃるとおりだと思います。私は、国が判断するといっても、先ほどの四つの武力行使の一体性の議論ではありませんが、いろいろな複雑な抽象的な条件で一々判断をしていくというのは、国であってもこれはなかなか大変なことだと思います。

で、私は、やはりこれは法律であらかじめ決めておくべきじゃないか。もちろん、決めるといっても全部細かいところまで決められませんが、基本的な考え方について決めておくべきじゃないか。

今、ガイドラインの作業の前提として、具体的な個々の状況の物事について、先ほど言いました後方支援も含めてですね、具体例を挙げてそれぞれ判断を今している、あるいはこれからするんだというふうに聞いておりますけれども、その判断をするに当たって、やはり客観的な基準があるからこれは黒だ、これは白だと言うことはできると思うんですね。じゃ、その判断をきちっと法律に書いておいて、そしておおよそここまでは憲法に問題なくできるんだ、ここはだめですよということをあらかじめきちんと立法しておくのが私は筋だと思いますが、そういったお考えはありますか。

久間国務大臣 これから先、ガイドラインの見直しをやっていくわけでございますので、それが出てきて一つの方向が決まったときに、それを国内的にどういう形で実施していくかについてはこれから先やはり検討しなければならないわけでございますので、今委員がおっしゃられたようなことも、それは場合によっては出てくるかもしれませんし、あるいはそこまでいく必要はないかもしれませんし、それは、これから先の進め方によって一つの方向が出てきたときに実施の国内の体制づくりについてどうするか、以後、その時点で判断しなければならない問題だと思っております。

岡田委員 私はやはり、こういった非常に重要な問題、憲法に触れるかどうかという問題については立法府においてきちんと審査をしてあらかじめ基準を決めておくべきだ、当然のことであるというふうに考えるわけであります。

そこで、法制局長官にお聞きしますけれども、法律的にそういった基準をきちんと決めておくということはできないというふうにお考えでしょうか。

大森(政)政府委員 お尋ねは、憲法運用法と言われるような基本法を制定することができるのかできないのかというお尋ねだと思いますが、これは一般的に、できるとかできないとかということを一義的に答えることができる問題ではなかろうと思います。具体的にどういう趣旨、目的でどういう項目をその法案に盛り込むのかということに関連いたしますので、やはり個々具体的な、こういうものならばいいのか悪いのか、そういうレベルでしか考えることができないのではなかろうかと思われます。

一般論で恐縮でございますけれども、私ども、法案審査の任に当たっているわけです。その場合には、特定の法案が各省庁から閣議請議前に持ち込まれますと、憲法との整合性とかあるいは他の関連法案との整合性とか、そしてまた、その前に、盛り込もうとする内容が法律事項としてふさわしいものであるかどうかというようなものを、まさに全般的、網羅的に検討いたしますので、ただいまのお尋ねに対しましては、そういう観点から具体的な問題が提起されれば慎重に検討させていただきたいということになろうかと思います。

岡田委員 法制局長官のお立場としてはそういうお答えかと思いますが、いずれにしても、これからこの後方支援の問題、かなり憲法上微妙でありますから、個々の具体的なケースについて、これは憲法九条との関係どうなっているのかということは、外務省なり防衛庁が法制局と御相談されるだろうと思います、ガイドラインをつくる前に。

御相談するということは、そこに何らかのやはり価値の基準が、判断の基準があるからシロとかクロとかそういう結果になるわけでありまして、その判断の基準について、私は、単に政府の中でそういうものを検討するというのではなくて法律にきちんと書いておくべきだ、そういう考えを持っております。

この問題はまた引き続きやらせていただきたいと思いますが、ガイドライン関係で最後に一つ質問したいと思いますが、自衛隊が後方支援活動をするという場合に今の自衛隊法上の扱いはどうなるのかという問題であります。

自衛隊法では、治安出動とか防衛出動、こういう場合にはこういう要件を満たせば自衛隊は発動できるということが書いてございます。あるいは個々的に、機雷の除去、九十九条、あるいは邦人の救出、そういうことが書いてありますが、後方支援活動については、私の知るところ、今の自衛隊法には出てこない。ということは、そういったものについて自衛隊法を改正しなければいけない、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 これから先、ガイドラインを見直して一つの方向が出てくれば、その時点で考えなければなりませんが、現時点で、まだその内容が具体的に決まっていない段階で、自衛隊法の改正が必要かどうかということについて、この時点で申し上げるようなわけにはなかなかいかないわけでございますので、これから先のその検討の推移を見ながらまたその問題についても考えさせていただきたいと思います。

岡田委員 今の答弁はちょっと納得できません。例えば自衛隊法の七十六条の防衛出動、これは外部からの武力攻撃に際して自衛隊の出動について規定しているわけですね。それから七十八条、治安出動ですね、「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができない」私は、いずれからも後方支援というのはどう読んでも出てこない、こういうふうに思うのですが、法制局長官、いかがでしょうか。

秋山(昌)政府委員 今委員がお挙げになりました防衛出動あるいは治安出動、その規定から、今ガイドラインで議論になっておりますいわゆる後方支援といったようなものとぴったり合っていないという点はそのとおりだと思います。しかし、後方支援、その中身とか機能とか、これから議論していかなくちゃいけないわけでございますけれども、一般的に輸送とか補給とか整備とか、あるいは邦人の救出、それに伴うその他の方々の救出、いろいろな支援活動が想定されるわけです。お挙げになりました機雷の問題もあるわけでございます。

現在、自衛隊の法律に一部、委員もお挙げいただきましたけれども、そういう条文はございます。それで十分かどうかという議論は、もちろんこのガイドラインが一応まとまった段階で我々も政府の部内で議論していかなければならないと思いますけれども、今お挙げになりました七十六条、七十八条とは違った意味でのいろんな条文がありますけれども、またガイドラインができ上がったところでよく政府部内でも議論してみたい、かように考えております。

岡田委員 なかなか局長にお答えいただくとよくわからなくなるものですから、法制局長官に、本当に今の自衛隊法でさっき言ったような後方支援活動、そういったものができるのか。例えば、それは公海上で支援することも場合によったら含まれるかもしれませんね、あるいは国内でもそうですけれども。そういうものが今の自衛隊法上果たして読み得るのか、その点について御意見を聞かせていただきたいと思います。

大森(政)政府委員 ただいまの防衛局長からの答弁、納得できないということでさらなるお尋ねでございますが、やはり、今答弁がございましたように、後方支援、いろいろ種類がございます。そして、いろいろな局面がございます。いろいろなその時々の目的があろうと思います。それを十把一からげ、抽象的に、一般的に現行自衛隊法でできるのかできないのかということを一義的に答えることは、これは私の立場でも困難であろうと思います。

したがいまして、具体的にこういう局面でだれに対してどういう行為を行う場合には現行自衛隊法でできるのかできないのかということを個別的にお尋ねいただければ、それに対して現在の自衛隊法上できるのかできないのかということは、慎重に検討した上、確定的なお答えはもちろんできる性質のものであろうと思います。

岡田委員 自衛隊法というのは、抽象的な、一般的な概念ありませんね。自衛隊はこういう場合に限って出動できるということで幾つか書いているわけで、これは事の性格上当然だと思いますが、私はとても後方支援的な活動について読めないだろうというふうに思っています。

具体的にというお話でございますから、それでは、例えば自衛隊が米軍に対して水や食糧を補給する、これは自衛隊法のどこで読まれるのでしょうか。

秋山(昌)政府委員 結局、ガイドラインでどういう支援を米軍にするのかというところにかかわってくるわけでございますけれども、現在の自衛隊法でも、先ほど挙げましたような条文以外に、例えば百条の八、輸送に関する法律ですとか、あるいは災害派遣それから医療関係、それから、これがストレートに適用できることになるかどうかわかりませんけれども、八十二条の海上警備行動ですとか、あるいは九十九条の機雷の除去、それから、自衛隊法ではない法体系としても物品管理法の世界もあるわけでございまして、結局、ガイドラインで具体的にどういうケースでどういうふうに自衛隊が米軍に支援をするのかということにかかわってくるわけでございます。

今御質問の点も含めまして、我々、ガイドラインの中身が確定した段階で、果たして現行の自衛隊法の条文で対応できるのかできないのか、できるとすればどういう制約があるのか、できない場合にはどうするのかということは、その時点でよく検討させていただきたいと思っております。

岡田委員 時間のむだですからこの辺でやめますが、私はどう見ても難しいと。別に自衛隊法を改正することがだめだなんて言っているわけではありません。しかし、やはり法律の根拠なくしていろいろなことが進んでいくというのは大変気になりますので、ぜひ中身も詰めていただいて、そして同時に、自衛隊法を初め関係法律についてもきちんとしたものをこの国会に出していただきたい、こういうことを御要望申し上げておきたいと思います。

それでは、ちょっと一つ飛ばしまして、医療保険改革を先にさせていただいて、時間があれば集団的安全保障について少しお話をさせていただきたいと思います。

小泉大臣にお聞きしたいと思います。今回の医療制度改革でありますけれども、例えば医療保険審議会の平成八年六月の報告などを見ますと、二十一世紀初頭を目途とした総合的かつ段階的な改革ビジョンを作成し、その第一歩として目の前の平成九年の改革があるのだ、こういうふうに書いてあるわけであります。つまり、まずビジョンありき、具体的なビジョンありきで、その中で今回の改正がある、こういうことで考えておられたと思うのですが、いつの間にか、このビジョンありきがどこかに行ってしまって、負担増を中心とした今回の改正案になってしまった。これはどういうことなんでしょうか。どこでそういう方針が変わったのでしょうか。

小泉国務大臣 方針が変わったわけでないのであって、今、平成十二年度を目途に介護保険制度の導入を目指しております。そして医療保険制度の改革も並行して進めなきゃならないという中で、これからの医療保険を安定的に運営していくためには財政的な問題も解決していかなきゃならない。そして、各審議会で、あるべき構造改革についてもいろいろ建議をいただいております。そして、当面、その医療構造改革については、与党内でも今議論をいただいております。そして、論点もだんだん整理されてきております。診療報酬の見直しとか薬価基準の見直しとか、いろいろ出ておりますが、これは、国会の多数の方の賛同を得て構造改革をしていくというのにはなかなかまとまり切れない。

そういう中で、今回、いろいろな御意見を聞きながら政府としてまとめたのが医療保険改革案でありまして、この案ができたから構造改革の基本方針が変わったとか、あるいは構造的な改革ができないのかということではなくて、むしろ今回の政府案によって、私は、構造改革が進んでいくのではないか、必ずこの案をもとにしてあるべき姿というのが、各委員からも、議員からも、あるいは有識者からも出てくるのではないか、その議論を見守りながら、段階的に、総合的に構造改革を進めていきたいと思っております。

岡田委員 例えばことしの一月の社会保障制度審議会の答申でも、抜本的な改革の考え方を明確にするとともに、その具体的な改革スケジュールを早急に政府の方針として示すことが不可欠だ、こういうふうに書いてあるわけですね。つまり、負担増だけを求めるのではなくて、全体としてこういう方向で変えていくということがあって、そしてその第一歩としての今回の改革であるということでないと、なかなか国民は、負担増だけ押しつけられた1今回の改革案、もう負担増だけだということは、この場にこの前来ていただいた塩野谷医療保険審議会会長も、そういうことについて認めておられるわけですね。

やはり、きちんとした将来の展望があって、その中の第一歩としてここは我慢してほしいということがなければいけないと私は思うわけであります。国民はみんな、今回負担増したらまた三年間それで何とかやっていけるから改革は三年間先送りになる、そういうふうに思っていると思います。政府の責任として、もう随分いろいろな審議会で議論をしてきたことでありますから、具体的な改革の方向あるいはスケジュール、そういうものについてこの負担増を審議する前にきちっとお示しになる、そういうお考えはありませんでしょうか。

小泉国務大臣 与党内でも、一年以内にあるべき姿に結論を出したいという方向で今議論を進めているということに聞いております。

私は、今回の患者に対する負担増、この案というものを御審議いただきながら、その結論、議論のあり方を見ながら、より総合的な改革案を近い将来出していかなきゃならない。そして、具体的なスケジュールというお話ですが、これは一年以内に結論が出ると言いますから、それを見守って決めていきたい。

今回の保険改革案も、患者負担増だけと言いますけれども、これはいろいろ、出来高払い制度とかあるいは総予算制度とかいうものを視野に入れながらこの患者負担増をお願いしているわけでありまして、私は、今回の案というものは、今後どのような総合的な、構造的な改革案が出ても、今回の法案がそれを阻害するというふうには思っておりません。むしろ、この法案を出したことによって構造的な改革案が進んでいくものと確信しております。

岡田委員 今の厚生関係の布陣、つまり、小泉厚生大臣、行革を一生懸命唱えておられる大臣であります。そして、総理自身も厚生行政には非常にお詳しい。だから、国民は、この厚生関係の改革ができるかどうかをもって、橋本行革が、あるいは橋本総理の言われる六つの改革ができるかどうかのリトマス試験紙だ、そういうふうに見ていると思うのです。ここがきちんとできなければ、あとも全部、結局ふろしきを広げただけでできないだろう、そういう位置づけにあると私は思います。

今、今回の改革が負担増だけではないというふうに大臣おっしゃったけれども、例えば、この場に来られた塩野谷公述人は、現在提出されている政府案は、おっしゃるように、改革を余り含まないで負担増を求めている、そういう提案だと思いますと、医療保険審議会の会長自身がそういうふうにおっしゃっているわけですね。そのことを指摘しておきたいと思います。

そこで、ちょっと具体的中身に入りますが、例えば、今回、当初、老人医療については定率制ということが言われました。それがいつの間にか定額制に変わりました。この点について、厚生大臣はどういうふうにお感じですか。

小泉国務大臣 医療保険制度を改革していく場合には、国会でも多数の方々の賛同を得ないと改革できません。そういう点も踏まえて、審議会では確かに定率制導入が多数意見だったと思います。しかし、現実、賛否両論があって、構造改革をせよ、せよと言う人は多いのですけれども、今回出している患者負担増でさえも、あらゆる聖域をなくして歳出削減をせよと言っている人でもなかなかまとめ切れない。いかに民主主義というのは合意形成が難しいかということを、その経過で痛感いたしました。

まず、国会議員の多数の意見を得るために、ある程度個人的な意見は妥協しなきゃならないなと。筋としては定額よりも定率の方がすっきりしている、国保は三割、健保は二割、老人が定額というのはおかしいといえばおかしいということも言えますけれども、私は、国会議員の多数の意見を尊重しなきゃこの法案は通らないということになれば、なるほどな、個人的な意見よりも多数の意見を尊重してまとめるためにこれもある程度必要なことではないかなと思っております。

岡田委員 ちょっと時間もなくなってきましたので、恐縮ですが、外務大臣、防衛庁長官、もうお帰りいただいて結構です。済みません。

今のお話ですと、国会議員とおっしゃいますけれども、別にこれは国会でこの問題を特に取り上げて議論したというわけではないのですね。今小泉大臣おっしゃる国会議員というのは、一体だれのことを言っているんでしょうか。

小泉国務大臣 議院内閣制として政権に協力してくれる議員、これを主眼に考えるのは当然だと思います。

そういう意味において、与党内の、今橋本政権を支えようとする政党の御意見を十分勘案したつもりでございます。

岡田委員 政府としては定率制がいいと思って出したけれども……(小泉国務大臣「いやいや、そうじゃない」と呼ぶ)審議会ですね、審議会としては定率制がいいと思って出したけれども、与党との調整の結果定額制に変わった、こういうことですね。

じゃ、将来的に大臣はやはり定額制でずっと老人医療についてはいくべきだというふうにお考えですか。一方で介護保険は一割という負担を入れていますね。そことの関係もあると思いますし、将来的には定率制に戻していくべきだとお考えなのか、それとも定額制でいくべきだとお考えなのか、いずれでしょうか。

小泉国務大臣 今国会では定額制で推進していきたいと思います。

将来の点については、国民の動向、議員の動向、国民負担の動向、そういうことを考えて、私は、必ずしも定額制がいいというのが多数意見になるとは、しばらく見ないとわからない。国会議員の間でも今定額制がいいと言っている人でもあるいは違う意見を持つかもしれない。その辺を見ながら判断していきたい。

今国会においては今回の定額制、これの方が理解を得やすいのではないかということで法案を提出しているわけであります。

岡田委員 私は、定率制というと所得の低いお年寄りにとってかなりきついというお話もありますけれども、それはどこに上限を設定するかという問題で十分回避できることであって、定率、定額、どちらがいいかと言われれば、定率の方が、私は、将来の老人医療費の自己負担を高めていくというときに、より妥当な道じゃないか、こういうふうに考えております。この点は、また厚生委員会でいろいろ議論していきたいと思います。

それでは、薬代の問題ですけれども、今回薬代も別途取るということになりました。

特にこの薬代を取ることのおかしさというのは、一般の、老人以外の方の場合に私は際立っていると思うんですね。二割、三割、定率で取られる。そこには薬代も入っているわけですね。別途薬代を取る、これは二重取りじゃないか。薬代、定率で取るならまだわかりますよ。ほかは二割だけれども薬だけ四割取るとか、そういう考え方はまだわかります。しかし、薬を定率で取っておきながら、次に定額でまた取る。この取る部分というのは一体どういうことなんだろうか。考え方が非常にわかりにくいのですが、厚生大臣のお考えを聞かせていただけますか。

小泉国務大臣 日本の医療は諸外国に比べて薬の使い過ぎではないかとよく言われます。そして、薬に対して、適正使用とかあるいは過剰投与あるいは患者がコスト意識等を持つために、もっと負担がいいのではないかというような議論もありました。

そういう中で、薬に対してはもう少し負担をしていいのではないかということを勘案して、確かに一割から二割取っていますけれども、それに対して、薬の負担の度合いをもう少し上げてもいいのではないかという意見を参考にして、二重取りというのではなくて、薬に対しては若干負担を上乗せしていいのではないかということでこの案を提出しているわけでありまして、二重取りということじゃなくて、薬に対して上乗せの負担をということで御理解をいただければなと。

岡田委員 上乗せ負担といいますが、これ、場合によっては実際にかかった薬代のコストを超えて払ってもらうということがあり得るわけですね、薬によっては。二割一方で取ってて、残りまた、今の案では一日一種類十五円ということですね。そうすると、それより安い薬だって当然あるわけですから、そういう場合に、何か不当に国が取っているということになりませんか。

高木(俊)政府委員 薬に対する今回一部負担を設けたいということでお願いしているわけでありますが、この趣旨は、今大臣から御答弁がございましたようなことで、我が国は非常に薬が多用されておる、そういった中でその適正化を図っていく必要がある。その適正化の方策としてはいろいろあろうかと思います。

その一つとして、これは審議会の建議でも出ておりますけれども、やはり薬剤の一部負担ということを設けるべきであるということが言われております。ただ、そのやり方として、定率のやり方もあろうと思いますし、また私ども定額というやり方もあろうと思います。

今回、定額というような形をとらさせていただきましたのは、全体として今度の一部負担、御老人については定額という格好でやらせていただいていますが、ただ、従来のように一カ月千二十円ということだけじゃなくて、一回行くたびに五百円いただく、ただし上限四回限り、こういうようなやり方に変えさせていただいておりますけれども、そういった中で、この薬の負担というものをどういう形でお願いするかというときに、お年寄りも、それからいわゆる現役世代も、この薬については同じように多用されておりますから、同じようにこの一部負担というものを創設させていただきたいということでありまして、そういった中で、御承知のとおり、現役世代は、一割、二割、三割という格好で定率の一部負担が設けられております。

そういった中で、お年寄りについては定額負担ということでございますので、それぞれについてお願いするとした場合に、やはりこの定額の形で各制度お願いすることが最も公平であろうということで設けたわけでございます。

岡田委員 私は、実際にかかったコストよりもたくさん取ることになるんではないかというふうに質問しているわけでありますから、一般論をお聞きしているわけではありません。時間も限られていますから、余り関係ない答弁で時間をつぶさないようにしていただきたい、こういうふうに思います。

私が申し上げたいのは、そういった今言った問題以外に、どういう意味があるのかということもあると思うのです。

例えば薬代について、これだけかかった、そのうちの何割負担するということになれば、実はこれだけ本当は使っているんだなということがわかって、そのことが将来の薬代の圧縮につながっていくかもしれません。しかし、どんな薬を買おうとも、種類以外は、みんな金額が十五円に決まっているということであれば、どれだけ薬代使っているかという意識は全然芽生えてこないわけですね、コスト意識。そこに何の意味があるのだろうか、そういう気がするわけでございます。

私は、そういう意味で、今回定額で薬を取るということについて非常に大きな疑問を持っておりますが、同時に、私は大事なことは、患者が自分がかかった医療費について、これだけ薬代がかかり、これだけ医療費がかかったということがはっきりわかる仕組みというものを法律できちんとつくっていくべきじゃないか。診療報酬であめを上げるんじゃなくて、むしろきちんと規制してやっていくべきじゃないか。買ったけれども値段わかりません、とにかく負担金出しなさいというような非常にばかげたやり方はいつまでも通用しないと思うわけでありますが、最後に、大臣のこの点についての御見解を聞きたいと思います。

小泉国務大臣 将来の方向として、今岡田委員言われたような考え方の方が私はすっきりしているという事実は認めざるを得ないと思います。

岡田委員 終わります。




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