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新型インフルエンザ特措法改正 ― 早期成立を

 新型インフルエンザ特措法、感染症法、検疫法の改正が、衆議院本会議で可決されました。賛成した野党は立憲民主党と維新で、他の野党は反対しました。
新型コロナウイルス対策の実効性を高めるために特措法の改正の検討が必要であることは、私自身早い時期から指摘してきました(昨年9月13日ブログ参照)。今回の改正案は、来年度予算案の審議開始が急がれる中で、十分な審議時間を確保することができず、いくつかの論点を残すことになりました。この点は残念ですが、緊急事態宣言がなされている中で、早期の成立が必要で、今週中(水曜日)に参議院でも質疑・採決見込みです。

 政府は、全国知事会や野党の特措法改正の求めに対して、第一波が収束し、第二波到来が予想されていた昨年の夏がそのチャンスだったのにもかかわらず、なぜかコロナウイルス感染が収束した後に行うとしてきました。その結果、第三波が到来し、二回目の緊急事態宣言発令後に泥縄で検討開始ということになったのは、本当に残念です。
 限られた時間の中で、重要な法改正を成立させる必要があるということから、立憲民主党は異例の事前協議に応ずることになりました。最大の焦点は、刑事罰適用の可否で、当初案では感染者が入院に応じない場合や、入院先から逃げた場合に懲役もしくは100万円以下の罰金を科すことになっていました。しかしこれは厳しすぎます。安住国対委員長はじめ関係者の強力な交渉の結果、刑事罰の導入は見送られることになりました。
 刑事罰だけでなく、行政罰の導入も問題だとの指摘もあります。入院の場合に加えて、緊急事態宣言下での知事が行う外出制限や施設等の使用制限に反した場合にも、行政罰が可能となりました。行政罰すらないということでは、「やり得」ということになりかねず、対策の実効性が失われることになりかねません。結果として、感染拡大防止が遅れることになりかねないのです。
 
 残された問題としては、①特定の地域、業種の事業者に対して、緊急事態宣言が発出されていない段階で知事が営業制限を行うことができるとする「まん延防止等重点措置」の導入が決まりましたが、その手続きにおいて、国会への報告なしに行われる可能性があること、②営業制限された飲食業をはじめとする事業者に罰則までかける以上、十分な財政支援または補償がなされることが必要で、法律上これを明確にすべきではないかという点が挙げられます。これらは附帯決議である程度対応することになりました。
 
 論点が残り、議論が尽くされていないことは事実です。しかし緊急事態宣言が延長される中で、その実効性を高めるため、そして第四波に備えるためにも、今回の法改正は必要です。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せることになった段階で、政府のとってきた一連の措置の妥当性・実効性の検証を、政府、国会、第三者が行い、それを踏まえて法制全体の見直しを行うことが必要です。十分な時間的余裕がある中で、より深い議論がなされるべきです。



コメント
  1. むろけん より:

    新型インフルエンザ特措法、感染症法、検疫法の改正はしないよりはした方が良かったと感じます。しかし、飲食業者へ営業自粛の要請が強権発動できる法令となったのに、病院や医療施設に非常事態としての対応を迫る仕組みを作らなかったことに矛盾を感じます。お願いベースでは十分な危機管理ができないのは、医療業界も全く同じでしょう。

    あれだけ多くの感染者が出ている欧米諸国の多くが医療崩壊を起こしていないのは、病院の大半が公営だからとの報道を聞きました。感染症のリスク管理として、医療体制を最適に総動員できる仕組みをもっておく必要があると考えています。そのためには病院の公営化がベストかもしれませんが、特措法の改正によってある程度は対応できるはずです。

    自宅療養中に亡くなられた方は、ナースやドクターの居る場所で過ごしていれば命を落とさずに済んだのかもしれません。東京都はオリンピック関連施設を含め、あらゆる公的な施設をコロナ対応に当てる努力をしたのでしょうか? 行政ができることを全部やっていないのに、国民の私権を制限する法律ができたことに少し違和感を覚えます。

  2. むろけん より:

    新型インフルエンザ特措法、感染症法、検疫法の改正にはやはり違和感があります。

    秋冬の感染再拡大は素人にも想像できることだったので、重症者や入院者を受け入れるキャパシティを夏までの5倍10倍に拡充しておく必要がありました。ところが政府も自治体もそういったコロナ対応の核心の課題を放置して何もせず、東京都はPCR検査の拡充に拘り、政府はGOTOキャンペーンへそれぞれ現を抜かしていました。

    そのせいで医療キャパシティが不足して緊急事態宣言による感染予防をすることになったわけですが、政府や自治体のサボタージュや失策の付けを国民に回す法改正であると感じます。私に近しい人々の中にも数人くらい同じ意見を持つ人がおり、それが素直な国民感情なのかもしれません。

    そもそも専門家会議や分科会は何を議論していたのか不思議でなりません。医療キャパシティの拡充に十分な予算を投入すべき場面で全くそうなっていないのは、提言があったのに採用されなかったのでしょうか。あるいは、たとえ厚労省や分科会から上がってこなくても、国会で議論することはできなかったのでしょうか? 

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