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2015.04.28|記者会見

岡田克也代表記者会見(4月20日)於 日本外国特派員協会

岡田克也代表記者会見 
2015年4月20日(月) 於 日本外国特派員協会
編集・発行/民主党役員室

★民主党HP記事
http://www.dpj.or.jp/article/106604/
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■冒頭発言
〇アジアインフラ投資銀行について
〇安全保障法制をめぐる議論について
■質疑
〇党勢回復に向けて
〇戦後70年談話について
〇アジアインフラ投資銀行について
〇集団的自衛権の行使をめぐる議論について
〇国家権力と報道機関の関係について
〇党勢回復に向けて
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■冒頭発言

【代表】
 限られた時間ですが、今日は二つのことをお話ししようと思います。
一つは、アジアインフラ投資銀行(AIIB)この一連の騒ぎから見えてくるもの。
もう一つは、安倍政権が推進しようとしている安全保障法制、この二つにつ
いて簡単にコメントしたいと思います。

〇アジアインフラ投資銀行について

【代表】
 まず、AIIBについてですが、このニュース、つまりイギリスはじめヨーロッパ
の国々がこの構想に参加することを聞いた時に、私は非常に驚きました。
つまり、このAIIBには言われているような問題はあります。例えば融資基準
の問題、あるいは理事会が常時設置はされていないことなどの問題はあり
ますが、いずれにしろ私が驚いたのは、G7が一致した行動をとることがで
きなかったことです。これはアメリカ、そして日本の外交的な大きな失敗で
あるということはまず言えると思います。それだけアメリカの力が落ちてい
ることを象徴的に示す事案だったかなと思います。
 日本にも大きな問題がありました。日本の問題としては、まず通貨とか国
際金融を司る財務省とその他の外交を司る外務省という、いわば二元外交
があったために、うまく統一した力が出せなかったということだと思います。
もちろん官邸がどれだけ強い関心を持って外務省や財務省に対してリーダ
ーシップを発揮していたかという問題もあります。
 そしてヨーロッパの国々もほめられたものではないと思います。やはりビ
ジネス優先でこの問題に対応してしまった。しかし、根底にあるのはもっと
大きな問題だと思います。世界の中で中国が急速に力をつけてきた。しか
もそれは民主主義国家ではない。つまり今までのルールとは違うルールの
もとに参加しようとしている。そういった、先進国が共通して取り組まなけれ
ばいけない非常に大きな問題を、ヨーロッパの国々は経済の問題に矮小化
してしまった。
 日本とアメリカにも問題がありました。つまり中国がこれだけ急速に力を
つけてきている。その姿を認めたくない、見たくないという潜在的な意識が、
この問題への対応の遅れにつながったのではないかと思います。
 私は、今、日本がとるべき選択肢として、チャーターメンバーには加われ
なかったものの、6月末の設立協定制定に影響力を発揮できるのであれば、
今から交渉に加わることも選択肢ではないかと思います。もちろん、その前
提としてG7の国々が共同歩調をとれること、どうしても言い分が通らない時
には共同して行動する、つまり最悪の場合このAIIBに参加しないという選択
肢も含めて、G7の国々が協調することが日本が入る時の前提だと私は思
います。
 いずれにしてもこれに類似した問題はこれからも起こるでしょう。その時に
重要なことは、G7がしっかりと同一歩調をとることだと思います。そうでない
と、戦後、民主主義国家が築き上げたさまざまなルールがうまく維持できな
いことにもなりかねない。他方で、中国はじめ新興国が力をつけてきたとい
う現実も無視できない。それについてどう、よりよい妥協をしていくかという
問題だと思います。

〇安全保障法制をめぐる議論について

【代表】
 2番目に、安倍政権の安全保障法制についてコメントしたいと思います。
 まず、この問題は戦後の日本の安全保障政策の大転換であるということ
を正しく認識していただきたいと思います。憲法9条のもとで、わが国は「海
外で武力行使をしない」と。つまりわが国自身が攻撃を受けた時にそれに
対する反撃、つまり個別的自衛権の行使はするけれども、それ以上の武力
行使はしないということにしてきました。(政府の動きは)そこに例外を作る、
ということです。
 一つは、集団的自衛権の限定的な行使です。(政府は)わが国自身が武
力攻撃を受けた場合と同じくらいの深刻・重大な被害が日本国民に及ぶよ
うな場合に限って集団的自衛権の行使が認められると説明しています。他
方、国会質疑の中では、ペルシャ湾が機雷で封鎖された場合にその機雷を
取り除く、つまり武力行使をすることも場合によっては認められると言ってい
ます。集団的自衛権が「限定されている」と言いつつ、実は野放図に広がっ
てしまうのではないかということを我々は懸念しているわけです。
 もう一つの問題は、後方支援の問題です。だんだん話は複雑になってくる
のですが、これには二つのケースがあります。一つは、世界の平和と安全の
ために必要な時、もう一つは、日本自身の平和と安全に重大な影響が及ぶ
時です。それぞれのケースによって適用される法律は異なりますし、その要
件も異なります。ただ、共通しているのは、その後方支援の範囲が、従来は
戦闘地域と一線を画した地域ということになっていたわけですが、今回いず
れの場合にも「現に戦闘行為が行われていない現場」であれば後方支援が
できると、非常に戦場に近いところに広がっているところです。
 もちろん世界の常識からすれば、武力行使も含めて一定の範囲で貢献す
べきだということになるのかもしれません。しかし、わが国はそういった考え
方には立たずに戦後やってきました。そのことに対する一定の評価、例えば
日本の自衛隊がどこかに行って誰かを殺したとか、そういうことは一度もな
いということに対する評価はいろいろな国にあるわけです。
 憲法9条の制約、もう一つは、物事が変わることに対する国民の理解とい
ったものが不十分なまま急ぎ過ぎることは、後で大きな混乱をもたらしてしま
うと私は思っています。物事を変えるには、一歩一歩、国民の理解を得なが
ら変えていかなければならないと思います。5月から国会の審議が始まりま
すが、民主党としてはしっかりとした議論を国会で行っていきたいと思います。

■質疑

〇党勢回復に向けて

【記者】
 最近の選挙の結果は、国政レベルでも地方レベルでも、残念ながら民主
党支持者は燃え上がっていないというか、大勢投票してくれていない感じが
する。(民主党の)得票率は実際に下がっている。自民党との差別化をもっ
と鮮明に図るために、どのようなことをお考えになっているか。どうやって民
主党への投票をもっと上げようと考えているか。今、安全保障法制などにつ
いて話されたが、そのアピールを増すために何をお考えになっているか。

【代表】
 民主党の現状は、さまざまな問題を抱えています。そのことについて短期間
で回復するというのは不可能ではないかもしれませんが、やはりより根本的な
党の立て直し。それは多少時間がかかるかもしれませんが、より根本的な党
の立て直しをしていかなければならないと私は思います。
 一つ言えることは、例えば過去2年間くらい党の政策が非常にあいまいにな
ってしまっていないか。よりクリアに政策を訴えていく必要があると思います。

〇戦後70年談話について

【記者】
 安倍首相は今週にジャカルタに行って(アジア・アフリカ会議で)話をするわ
けで、戦争・歴史認識について何を言うのか非常に注目されている。来週は
ワシントンD.C.でも同じようにスピーチをする。8月には戦後70年の安倍
談話を発表することになっている。安倍首相のメッセージはどういうものであ
るべきか。戦争・歴史認識について、アジアへのメッセージはどうあるべきか、
米国に対するメッセージ、そして世界に対してどういうメッセージを出すべき
だとお考えか。

【代表】
 これは話せば非常に長くなります。基本的には、これは日本国民に対して
のメッセージでもあります。過去のことについてはよく言われているとおりで
すので、私からは繰り返しません。国会でも何度も私自身も取り上げていま
す。日本の認識が後退したととられないように十分注意してもらう必要があ
ると思います。
 未来について語る部分について、総理はおそらく「積極的平和主義」という
ものを中心に据えてお話しになるのだと思います。その「積極的平和主義」の
中に、先ほど説明した「海外での武力行使はしない」という今までの原則を変
える考え方が含まれています。過去、戦後70年の日本に対する高い評価の
中に、日本が海外で武力行使してこなかったということがあるとすれば、総理
の言う「積極的平和主義」がはたして歓迎すべきものなのかどうかということ
について、海外での評価は分かれるだろうと私は思います。まだそこまで深
い理解がない段階ですが、やがてそういう議論が出てくるだろうと思います。

〇アジアインフラ投資銀行について

【記者】
 AIIBに参加しないことになったら、どのような悪影響を日本は受けると思わ
れるか。例えば、極端に言うと日本の経済が崩壊することはあり得るのか。

【代表】
 悪影響ということになれば、アジアのインフラに対する投資は、今はADB
(アジア開発銀行)、あるいは世界銀行が行っていますが、AIIBも行うことに
なると、そこの部分について日本の影響力が全くなくなってしまうということで
す。
 今、厳しい基準のもとにADBなどの融資は行われていますが、より緩い基
準、あるいは特定の国に有利な基準で融資が行われることになると、さまざ
まな混乱のもとになってしまいます。

〇党勢回復に向けて

【記者】
 自民党と民主党の差別化をどう図るかという点で言うと、先日知事選があっ
たが、私の理解が正しければ、12の選挙のうち、二つの知事選においてだけ
対立候補を立てたが、10の選挙では自民党も民主党も同じ候補者を推薦し
た。自民党と民主党が同じ人を推しているケースがほとんどであれば、どうや
って差別化を図るのか。

【代表】
 これは民主党だけではなくて、自民党が民主党系の候補者に乗っかるとい
うケースもあります。昨日明らかになった、私の選挙区のある三重県の県庁
所在地・津市の市長選挙などは、4年前は民主党が立てた候補者と自民党
が立てた候補者が争ったのですが、今回は民主党の立てた候補者、現職で
すが、そこに自民党が乗っかることになりました。
 選ばれた市長が大きな問題を起こさず、成果を上げているのであれば、あ
えて候補者を立てなくてもいいという考え方はあってもいいのだと私は思いま
す。もちろん現職にさまざまな問題があるような場合、あるいは現職が引退な
どして存在せず、新しく市長を選ぶような場合、そういう場合には第1党と第2
党は候補者を立てるべきだと思います。

【記者】
 今、市長の話をされましたが、知事についても同じことですね。

【代表】
 はい。首長です。

〇集団的自衛権の行使をめぐる議論について

【記者】
 憲法では武力行使は正当防衛以外は使ってはいけないとなっているわけで
す。しかもその正当防衛というのは欧米の正当防衛とはだいぶ違っていて、敵
が銃を発射するまで自衛隊は銃を発射してはいけないとなっている。それが日
本の正当防衛ですね。そう書いてあるにもかかわらず首相が「外国で武力行
使できる」と言うことは、そういうふうにしたいということならば憲法9条を改正
する必要があるのではないか。

【代表】
 私の理解では、最初に武器を使用してはいけないということは憲法には具体
的には書いてありません。憲法の9条では、武力行使そのものが禁じられてい
ると読める、そういう条文になっています。ただ、国会におけるさまざまな議論
の中で、自国が攻撃を受けた時まで無抵抗を貫くというのは国家としてあり得
ないということで、個別的自衛権は認めようと、憲法9条の「解釈」として、そう
なっているわけです。
 安倍政権は、日本は攻撃を受けてはいないが、それと同等の大変な事態が
国民に及ぶのであれば、自衛権の行使ができると。ただ、日本は攻撃は受け
ていないわけですから、個別的自衛権の行使ではなくて集団的自衛権の行使
だと、こういうふうに整理をした。それが正しいかどうかは別にして。

〇国家権力とメディアの関係について

【記者】
 今、メディアと政治の関係が問題になっているが、特に放送局に関しては、日
本では政府が直接放送免許を放送局に出すようになっているところが、政府が
簡単に放送局に圧力をかけたり介入できる一番大きな原因になっているという
ことは、言われて久しい。民主党が政権を取った時に日本版のFCC(米連邦通
信委員会)を実現するとうたい、原口総務大臣(当時)がこの場に来られて「日
本版FCCをぜひ作りたい」とおっしゃっていた。今は政権の座にないが、これだ
け明らかに政治とメディア、とりわけ(政治の)放送局への介入が問題になって
いる今、民主党として、野党の側からも改めてそれを復活させる考えはあるか。

【代表】
 ちょっと昔のことなので私、記憶が定かではないのですが、我々の提案の中
には、免許、電波の割り当て、これを入札で決めることも含まれていたと思いま
す。そこの部分についていろいろな意見もあって、必ずしも実現に至らなかった
と記憶しています。入札制にすることのデメリットも当然あるわけで、そういった
ところについて注意深く、もう一度党の中で議論する必要があると思います。
 ただ、今までは時の権力はメディアに対して一定の慎重な対応をしてきたと思
います。それが今の安倍政権になってかなり変わってきたのではないか。例え
ば前回の総選挙の時に、「中立な報道を求める」という要請をした。その結果と
してかはわかりませんが、昼の番組における選挙報道のボリュームが非常に小
さくなってしまった。ですから、メディアのほうにも、さまざまな圧力と思われるも
のに屈しない気概が求められるということもあると思います。
 それからNHKの会長はじめ一連の人事なども、今までの政権であれば考えら
れなかったような人選が行われています。そういったことについて、我々は国会
で繰り返し取り上げています。

〇党勢回復に向けて

【記者】
 先ほど「民主党が抱えている根本的な問題を解決するためにも少し時間が必
要である」といった話をされたが、外部から見ても、民主党の中は議論・討論が
多過ぎるのではないか。代替案になるような政策を一刻でも早く国民に提示しな
ければいけないのではないか。次の選挙で本当に国民が選べるようなオプション、
政策を早くまとめて出していただきたい。

【代表】
 もちろん我々はオプションを示しています。例えばエネルギー政策、先ほどの
安全保障政策。そして経済政策では、我々は「格差」に着目しているわけです。
ただ、そういったものがしっかりと国民に伝わるところまで行っていないという問
題があります。さらに努力しなければならないと思っています。

〇国家権力と報道機関の関係について

【記者】
 先週、自民党の部会はNHKとテレビ朝日の担当者を呼びつけた。野党の代
表としては、このような行為は、意図的であったとしても意図がなかったとしても、
やはりメディア側はそれを圧力と感じると思われるか。つまり、できるだけ政府・
与党の意向に沿った報道をしたほうがいいという圧力を感じると思われるか。

【代表】
 今回は、NHKもテレビ朝日もそれぞれなぜこうなったのかということについて
一応の説明は既にしているわけです。それにもかかわらずわざわざ呼びつけた
というのは、特定の意図があったと思われても仕方がないのではないかと思い
ます。
 特にテレビ朝日はコメンテーターがいろいろな発言をしたわけで、コメンテータ
ーというのは番組とは一応独立した存在です。ここに来られた古賀茂明さんです
が。ですから、呼ばれて、(テレビ朝日が)わざわざ行く必要があったのかどうか
という問題があると私は思います。

〇党勢回復に向けて

【記者】
 今まで同じような質問が出ていると思うが、なかなか我々が求めているような
答えが出てきていないと感じますので、繰り返して聞きます。
 例えば世論調査の結果を見ると、個別の課題においては、多くの国民は必ず
しも安倍首相が唱えているような政策に賛成していない。しかし、実際に選挙と
なると、なかなか投票に出てこない。反対意思を示していない。その理由は、多
くのアナリストが言っていることだが、野党側から、本当にみんなが興奮するよう
な代替案、代替政党というものが出てこないからではないか。自民党と違う本当
にすばらしいオプション、すばらしい野党というものを多くの国民が感じるために、
民主党は何をされるか。投票所にも出てこない多くの国民を本当に興奮させて、
何があっても絶対に投票するという気持ちにさせるために、何をされるか。

【代表】
 なかなか難しいご質問ですね。有権者を興奮させるという意味では、過去の総
選挙で有権者は興奮してきたわけです。
 2005年、「郵政を民営化すればすべてがバラ色になる」という小泉総理の発
言に興奮して投票しました。外交もよくなるし、財政もよくなるし、もちろん景気も
よくなると。今から考えると、なんでそんなことを信じたのか、と思っている人は多
いと思います。
 2009年には逆に、「政権交代すればあらゆることがよくなる」と信じて投票し
た人が多かった。しかし現実は、もちろんよくなったこともありますが、そうでな
いものもたくさんあったと。
 2年前の選挙は、「アベノミクスで経済が劇的によくなる」と。一部、株価などは
確かに上がりましたが、全体としては“ハズレ”。しかし国民は今でも一部は期待
を持っていると思います。
 さて、我々が次の選挙を考えた時に、同じように有権者は興奮するが実はあま
り中身のない政策を打ち出すべきなのか、それとも冷静に判断していただけるよ
うな、正直な、しかし、あまり興奮はしないかもしれない政策を打ち出していくべき
なのか。これは重要な選択肢だと思います。私は極端な選択というのはないと思
いますが、しかし、わが国の置かれた、例えば人口の大幅な減少とか、財政の危
機とか、そういったことについては誠実にこたえる、そういう政策で、かつ夢が持
てる政策を打ち出していくべきだと考えています。




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