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2013.11.21|夕刊フジ

理解できない”小泉発言” 具体策出さずに「原発即ゼロ」(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年11月21日号)

 小泉純一郎元首相が先週12日、日本記者クラブで「原発即ゼロ」を主張した。政府・自民党はこれまで「小泉氏と方向性は同じだ」などと言い繕ってきたが、さすがに「原発即ゼロ」と言われれば、言葉も出ないだろう。自民党の元首相で、安倍晋三首相に近い人物から、政府方針とは明らかに違う考え方が示されたことになる。

 私は最初に小泉発言を聞いたとき、福島の惨状に対する「反省」が述べられていないことに、強い違和感を覚えた。

 福島第1の原発事故は、緊急時に原子炉を冷却させる予備電源が発電所内の低い場所に設置されていたため、津波で使用不可能になったことが致命的だった。そうした設計を認めていたことや、専門家の津波への警告を放置していたことなど、5年半も首相をやった小泉氏自身の責任が何も語られなかったことは、おかしい。

 私も原発は過渡的エネルギーだと考えている。近い将来、再生可能エネルギーに転換していくべきと確信している。民主党は新たな原発は造らない立場だ。

 ただ、地球温暖化も深刻な問題だ。二酸化炭素の排出量が多い、石炭やガスによる発電に頼り続けることはできない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末までに最大で気温5度、海面水位が82センチ上昇する可能性を指摘している。とはいえ、再生可能エネルギーは現時点では総発電量が不足しているうえ、一気に転換した場合、電気料金が跳ね上がってしまう。

 こうした難しい問題に答えを出さなければならないのに、小泉氏は具体策も出さずに「原発即ゼロ」と言い切った。元首相として複雑な背景が分かっていながら、「知恵のある人がいい案を作ってくれる」などと説明を避けたことは、政治家として到底理解できない。

 安倍首相は「恩師」から逃げずに、論争してほしい。そうでなければ、国民の方々にエネルギー問題への理解を深めてもらうことはできない。

 さて、特定秘密保護法案の国会審議が煮詰まってきた。私は「特定秘密」が存在することや秘密保護強化の必要性は否定しない。だが、秘密の範囲や期間は極力限定すべきだと考えている。

 政府は放っておくと、どんどん秘密を増やし、最後には民主的統制が及ばなくなってしまう。私は外相時代、外交密約の問題に取り組んだが、歴代首相が都合の悪いことには国会でもウソをついてきたことが分かった。

 だからこそ、「情報公開」「公文書管理」「一定期間経過後の公開」が重要であり、秘密の厳密な定義や第三者機関による権限あるチェックの仕組みが不可欠なのだ。事後的でも情報が公開されれば、政府はいい加減なことができない。大幅な法案修正が求められる。

 みんなの党の修正案も不可思議だ。首相は政府の最高責任者であり、その首相自身が政府の秘密を第三者的にチェックするなど滑稽でしかない。

 この法案は、国民の視点が欠如していて、国家の視点が強調されている。安倍政権の特異な立ち位置が表れている。 (民主党衆院議員)




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