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2013.06.06|夕刊フジ

アベノミクス”バラ色の幻想”から覚めるとき(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年6月6日号)

 選挙制度改革や議員定数削減について話し合う各党の実務者協議は毎週開かれているが、なかなか進展はない。こうしたなか、自民党の石破茂幹事長が「国民の代表は少なければ少ないほどいいのか。定数だけ削ればいいというのはポピュリズムだ」と、テレビ番組で語った。これは許しがたい暴言だ。

 昨年11月の党首討論で、当時の野田佳彦首相と、自民党の安倍晋三総裁(現首相)は一票の格差是正と議員定数削減について、次期通常国会(今国会)で結論を出すことを約束した。だからこそ、野田首相は衆院を解散した。この約束は、民主、自民、公明3党の間で文書でも確認され、3党は衆院選マニフェストにも明記している。

 国民に消費税増税をお願いしている以上、国会議員自らが身を削らなければならない。これは民自公3党の合意であるだけでなく、国民への約束でもある。何としても、今国会中に、格差是正と定数削減を実現しなければならない。

 さて、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が閉幕した。アフリカ54カ国のうち、51カ国の代表が出席、74の国際機関やNGO(非政府機関)も参加するなど、成功裏に終わったことは喜ばしい。

 ただ、少し気になる点もある。私も外相時代、タンザニアで行われたTICAD閣僚級フォローアップ会合に出席したが、当時、アフリカ諸国に対して「インフラ支援、企業投資などの開発を重視すべきか」「貧困や医療、教育問題などの人道支援を重視すべきか」と相当議論した。

 アフリカ諸国は最近10年間で、年平均5・8%の経済成長を誇っている。そのせいか、今回のTICADでは、インフラ整備や日本企業の貿易・投資拡大ばかり注目された感がある。安倍首相の冒頭発言もまさしくそうだった。

 しかし、いまだにアフリカは、人間としての最低限の生活すら保障されない最貧層が最も多い地域だ。こうした分野での日本の協力は決して忘れてはならない。

 先月末から日経平均株価が乱高下し、長期金利が上昇している。為替も円安一辺倒から不安定な動きになりつつある。これらは極めて気になる動きだ。

 長期金利の上昇は、住宅ローンや社債発行に影響を与える。現に、住宅ローン金利を引き上げる金融機関や社債発行を見合わせた企業も出ている。長期金利がさらに上昇すれば、日本の財政や予算にも大きな影響を与えかねない。

 安倍首相は就任以来、「株高・円安」をアベノミクスの成果として高らかに誇示してきたが、果たして、一国の首相としてふさわしい言動だったか。そろそろ、アベノミクスで将来がバラ色になるかのような幻想から覚めて、日本の現状と将来を冷静に見つめるときではないか。 (民主党衆院議員)

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