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2013.05.09|夕刊フジ

憲法改正の前に現行法の基本認識を議論すべき(夕刊フジコラム「ズバリ直球」13年5月9日号)

 憲法改正の発議要件を定めた憲法96条の改正を、今年夏の参院選の争点にしようという声が、首相官邸や自民党から聞こえてくる。安倍晋三首相が5日、東京ドームで巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏と、巨人や米大リーグ・ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏への国民栄誉賞の授与式に臨んだ後、始球式に背番号「96」のユニホーム姿で登場したことも憶測を呼んでいる。

 まず、私自身は96条に限らず、憲法改正について否定的立場は取らない。時代の変化に応じて、新しい権利を加えたり、地方自治に関する抽象的表現を修正するなど、改正に向けた議論はやぶさかではない。

 ただ、今、声高に改憲を唱えている方々との、基本的な認識の違いが気になる。

 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、GHQ(連合国総司令部)占領統治時代に押し付けられた憲法を変えると主張している。石原慎太郎共同代表率いる日本維新の会は、綱領の中で「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」と位置付け、石原氏は憲法廃棄を公言している。

 私は、こうした憲法観とは見解を全く異にする。確かに、日本国憲法はGHQ時代に公布されたが、施行から66年、私たちの先輩たちが努力して育んできたものと考えているからだ。頭から「現行憲法は押し付けだからダメだ」との立場に立つか、現行憲法を積極的に評価するべきとの立場に立つかで、憲法論議は全く違ったものになる。96条改正を急ぐ前に、こうした基本認識を国会で議論してから、国民に問うべきだ。

 さて、ゴールデンウイーク後半、東日本大震災の被災地(岩手、宮城、福島各県)を回り、漁港や農家、商店街などを訪ね、各地域のNPOの方々と交流してきた。

 震災前に比べるとまだまだだが、海ではカキやホタテの養殖が復活しつつあった。宮城県南三陸町の漁協直販所「タブの木」では、おいしいホタテやホヤをいただいた。近くにある「南三陸さんさん商店街」にはGW中、1日2万人が詰めかけたという。

 このほか、青森県から福島県に及ぶ太平洋岸に、震災ガレキを活用して盛土を築き、その上に津波から命を守る森の防潮堤を築いていく「森の長城プロジェクト」や、岩手県陸前高田市の津波到達点に桜の木を約1万7000本植樹し、震災を後世に伝えるプロジェクト「桜ライン311」なども視察した。

 勇気付けられる復興の動きに数々出合ったが、被災者の多くがいまだに仮設住宅で暮らしており、高台移転はこれからだ。復興事業など一時的な仕事はあるものの、安定して長く働ける仕事の確保も課題だった。福島では、幼い子供がいる家族が戻るに戻れないという状況が続いている。

 この時代にある政治家として、被災地の現状に強い関心を持ち続け、被災者や被災地とコミュニケーションを取り、復興のために努力していきたい。(民主党衆院議員)



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