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2012.10.18|夕刊フジ

自民は「世襲」について説明を(夕刊フジコラム「ズバリ直球」12年10月18日号)

 iPS細胞の作製で、京都大学の山中伸弥教授に対する、ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった。日本人に自信と希望を与える話題であり、素晴しいことだ。心から、お祝いを申し上げたい。研究内容も画期的だが、山中氏の経歴がとてもユニークだ。

 整形外科の研修医として勤務したが、通常なら20分で終わる手術に2時間もかかり、指導医から「ジャマナカ」と呼ばれたという。臨床医としての限界を感じ、基礎医学の研究者に転じて歴史的成果を挙げた。

 エリート街道を突き進んだのではなく、多様な経験を経てのノーベル賞受賞。「失われた20年」などといわれ、どこか元気をなくしている日本の将来、日本人の生き方を暗示しているのではないか。

 規制改革という、私の仕事とも関係がある。

 現在、医薬品と医療機器の認可手続きは1つの仕組み(薬事法)で対応しているが、規制改革の議論の中で、これを分けることに決めた。全く性格が異なるものだからだ。

 山中氏の研究結果が実用化されれば、再生医療の実現や新薬開発など幅広い分野への応用が見込まれている。そうなると、従来とは違う第3の認可手続きが必要になるかもしれない。

 政府としては、引き続き予算面で支援するとともに、今から法律の問題点などを検討して、制度面でも後押しをしていきたいと思う。

 さて先日、新聞を読んでいたら、自民党の大物議員が引退を続々と表明し、後継者として子息らが選出されているという記事を目にした。私は首をかしげてしまった。

 自民党は2009年の衆院選マニフェストに「引退する議員の配偶者と3親等内の親族が同じ選挙区で立候補する場合、次回の総選挙から、公認または推薦をせず、世襲候補を制限する」と書いていた。

 子息らは一応公募という手続きを経ているようだが、これは事実上のマニフェスト違反ではないのか。「いまは野党だから」とか、「前回衆院選で負けたから」といった理由は通らない。党で決めればできることだ。

 「世襲議員がすべてダメだ」というつもりはない。ただ、特定の環境で育った人ばかりが議員に選ばれることは好ましくない。国民の代表として、多様な人材が必要だ。小選挙区制で世襲候補を認めたら、国会はおそらく今以上に世襲だらけになる。

 民主党は09年6月、「国会議員の配偶者および3親等以内の親族が、当該現職国会議員の引退、転出などに際して、その直後の選挙において議席を連続して引き継ぐために、同一選挙区から立候補しようとする場合、党はこの親族を公認しない」と、常任幹事会で決定している。

 先の自民党総裁選は、候補者が全員政治家の子息で、さながら中国の「太子党」のようだった。ぜひ、安倍晋三総裁には、マニフェスト違反ともいえるこの問題について、国民の前で説明していただきたい。(副総理)




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