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2010.10.07|夕刊フジ

夕刊フジコラム「ズバリ直球」10年10月7日号

わが党の小沢一郎元代表に対し、東京第5検察審査会が2度目となる「起訴相当」の議決を出した。これで強制起訴が決まった。正直、驚いており、残念というしかない。まず、小沢氏自身が政治家として、国民の皆さんに自らの考えを示すべきだろう。それ以前に、私があまりコメントすることは控えるべきだと考えている。
 
さて、報道各社による最新の世論調査で、菅直人内閣の支持率が十数ポイント下がった。国民の皆さんの気持ちも分かる。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件への政府の対応が、「検察任せ」「中国に弱腰だ」と見られたのだろう。
 
ただ、政府としては「日本は法治国家であり、司法判断に政治は介入しない」「検察が法と証拠に照らして粛々とやる」ことを貫いた。一部に、菅首相や仙谷由人官房長官が関与したと受け取られるような報道もあったが、事実とは異なる。

確かに、政府の関係部局が事実関係を検察に説明することはあっても、中国人船長釈放は、司法の独立のもと、あくまで検察が最終判断を下した。国民の皆さんが誤解されているとすれば、きちんと説明する責任が政府にはあるだろう。
 
こういう時に重要なのは、日中両国とも偏狭なナショナリズムを刺激しないことだ。感情的に承服しがたい情報も飛び交っているが、冷静かつ総合的に判断してほしい。
 
今回の一件で、最も大きな損失を被ったのは中国だといえる。世界各国は「中国は横暴だ。常識が通じない」「やはり民主主義国とは違う」と改めて気付かされた。中国は経済成長著しく、非常に魅力的な市場を持つ国だが、国としての根本的な違いや投資リスクが改めて浮き彫りになった。

事件発生時、私は外相だった。丹羽宇一郎駐中国大使は、深夜を含めて、中国外務省に4回呼び出された。日本国内には「同様の対抗措置を取るべき」という強硬な意見もあったが、私は中国の程永華駐日大使を一度も呼び出さなかった。「お互いに冷静になろう」というメッセージを込めたつもりだった。

ハイテク製品に不可欠な「レアアース」の取引停止も問題となった。私は外相時代に「資源確保の多角化」を訴え、7月末からの1カ月で、カザフスタンやウズベキスタン、モンゴル、ベトナム、インドなどを回ってきた。カザフスタンやウズベキスタンなど中央アジアは貴重な資源国だが、日本の外相が訪れたのは6年ぶり。今後、中国に過度に依存している状況が改善されることを期待したい。

在日米軍、特に尖閣諸島に近い、沖縄にある米海兵隊の重要性も再認識させられた。海兵隊は即応性があり、紛争や災害が発生した時に真っ先に駆けつける。クリントン米国務長官が「日米安全保障条約は尖閣諸島にも明らかに適用される」と発言した意味は大きい。

同時に、米国との同盟関係も大切だが、まず日本自身が、領土、領海、領空を守れるだけの力を備えなければならない。そのためにも、海上保安庁や海上自衛隊などの能力を高めることが必要だ。

先週末、臨時国会が召集された。尖閣問題の議論とともに、不透明な経済状況に対応する今年度補正予算も急がねばならない。欧米経済は依然として悪く、円高も続いている。一時しのぎではなく、中長期的視野に立ちながら、かつ即効性のある補正予算を組まなければならない。

ねじれ国会の中、政府・民主党は誠心誠意、野党各党と話し合うことを表明している。いまこそ、55年体制の発想ではない、新しい政治モデルの構築が求められている。補正予算について、与党と野党各党は中身も規模もそれほど大きな違いはない。国民生活を守るためにも、真摯な姿勢で対応していきたい。

緊張が途切れない日々が続いた先週金曜日、私は妻と2人で、歌手・平原綾香さんのコンサートに出かけてきた。平原さんは、日本の政府開発援助(ODA)を紹介するテレビ番組に、主題歌「地球VOCE(ヴォーチェ)」を提供してくれている。その歌唱力は素晴らしく、透明感のある歌声に私たちは癒された。

平原さんの曲を耳にされた方々が、ほんの一瞬でも、貧困や病気に苦しむ世界の人々に思いを致してもらえれば、とても嬉しい。

(C)夕刊フジ




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