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2010.03.02|記者会見

外務大臣会見記録(平成22年3月2日)

外務大臣会見記録(平成22年3月2日(火曜日)14時00分~ 於:本省会見室)

○冒頭発言
(1)チリにおける大地震被害に対する支援について
(2)国会審議について
○米軍再編問題
○六者協議
○北朝鮮及びイランの核開発問題
○日本漁船に対するロシア国境警備局の銃撃事案
○政治資金問題
○チリにおける大地震被害に対する支援(医療チーム派遣見合わせ)
○海外における外務省と日本企業との連携の可能性
○原子力発電所の開発協力(ベトナム)

冒頭発言
(1)チリにおける大地震被害に対する支援について

【岡田大臣】私(大臣)からは、まず今朝の閣議において既に張り出しはしておりますけれども、チリにおける大地震災害に対する緊急無償資金協力について決定をいたしました。当面の支援として、現地赤十字社等と協力しつつ、300万米ドルを上限とする緊急無償資金協力を行うことを決定したということであります。この支援に加え、3000万円を目途に、マイアミに我が国が備蓄しております発電機、テント、送水機といった緊急援助物資の供与も決定したところであります。そして、昨日決定いたしました国際緊急援助隊医療チームの派遣につきましては、既に先発隊は現地に向かっておりますが、本格的な二十数名のチームの派遣を考えていた訳でありますが、チリ政府の方針として「医療チームについては追加派遣を見合わせてほしい」という申し出がありましたので、これについてはチャーター機による移動を考えていた訳ですが、これを見合わせることにいたしました。
 今後とも、よく現地と連絡を取りながら、チリ政府のニーズに沿った支援という視点で、そのニーズを見極めながら、必要に応じて医療チームの派遣や物資の提供などを担っていきたいと考えております。
 なお、震源に近いコンセプシオン市における在留邦人33名のうち、現在のところ32名までが無事を確認できているところでございます。

(2)国会審議について

【大臣】本日は衆議院予算委員会において予算案が可決されました。本日中には、順調にいけば衆議院を通過の予定であります。今回の予算委員会における審議は、どちらかというと政治とカネの問題にかなり焦点が当たり、外交案件はあまり答弁の機会がなかったということは、やや残念な気がいたします。あまり残念だと言うと、参議院でいっぱい来ても困りますが、明日以降参議院に場を移して、予算委員会で様々な議論がなされると思いますけれども、外交についてもしっかりと、普天間以外も含めて議論ができればと考えております。もちろん普天間の問題についても、現時点でお答えできることについては誠意をもってお答えしていきたいと考えております。

米軍再編問題
【週刊金曜日 伊田記者】先程、普天間の問題についても「誠意を持ってお答えしたい」というお言葉がありました。ご存じのように、沖縄県議会が2月24日午前に与野党超党派で議員提案した米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と、県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書を全議員の賛成により、全会一致で可決しております。これを受けて3月上旬にも県議会代表団が上京して政府に要請するという報道がありますけれども、岡田大臣はこの代表団に対応する基本的なお考え等をお聞かせいただければと思っています。
 余談ながら、前政権のときの集団自決の問題について、あの時は沖縄県議会の最初の要請に対して、当時の文科省の対応が著しく悪かったということで、沖縄の人々の怒りがさらに燃え上がったというようなこともあると承知しております。

【大臣】県議会の代表者の皆さんが私(大臣)のところにお見えになるのかどうか、まだそういった情報に接しておりませんので、私(大臣)自身がどうするかということも決めておりません。必要に応じて判断していきたいと思います。県議会で全会一致ということは、非常に重いと思います。沖縄議会の皆さんの思い、そこにはもちろん県民の思いが反映されておりますので、そのことについてはしっかりと受け止めていく必要があると思います。ただ、従来から申し上げておりますように、この普天間の移転の問題は、一つは普天間の危険性の除去というところから議論がスタートしております。なるべく早く危険な状況を除去するために、どこかに移転しなければいけないということであります。現時点で「どこ」ということが具体的に議論されている、あるいは決まっている訳ではありませんので、私(大臣)からこれ以上のコメントは差し控えたいと思いますけれども、スタートは普天間の危険性の除去だということが一つです。
 もう一つは、この問題は沖縄の負担の軽減と、日本における米軍の存在、抑止力の重要さということの二つの視点で議論されてきている問題ですので、日本の平和や安全のために米軍が果たしている役割、あるいはアジア太平洋地域における米軍の存在の意味、そういうことについても併せて考えていかなくてはいけない問題であると考えております。

【週刊金曜日 伊田記者】関連してお聞きします。「危険性を除去するために移転しなければならない」というお考えですけれども、結果として移転した先に作った基地が、今よりもかなり機能を強化した強力なものになってはならない。つまり、除去と移転ということであれば、沖縄の負担軽減の意味から、強力な基地の新設に繋がるような動きは避けるべきだと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

【大臣】これは全体で見なければならない問題です。ですから、「普天間の移転」だけではなくて、その他「8000名の海兵隊のグアムへの移転」、その結果としての「基地の返還」ということをトータルで、この三つのことを一つにして考えないと、普天間の移転だけの問題ではないと思います。

【琉球新報 滝本記者】関連で普天間の問題ですが、普天間に限らず、オスプレイの配備について、長島防衛政務官が「2012年の10月に、沖縄に24機が配備されることになっている」というお話を講演されたり、前原大臣が「オスプレイが来るので1300(メートル)とか1500(メートル)とかいう滑走路が必要になってくる」というお話をされたということで、オスプレイが来るという前提で、ここのところお話や発言が相次いでいるように思うのですが、オスプレイの配備について大臣はどのようにご認識されておられますか。

【大臣】現時点で確たることは、私(大臣)は聞いておりません。前原大臣も一定の仮定の議論をしておられ、それが決まったという前提で、前原大臣は議論している訳ではないと思います。長島政務官はよく分かりません。どういう根拠で仰っているのか、しかもそれは政務官としての発言なのかどうかということも分かりません。それは長島政務官ご自身か、あるいは北沢防衛大臣がお答えになるべき問いだと思います。私(大臣)が答えるべきではないと思います。

【共同通信 西野記者】対米交渉は外務省の責任でやるという基本的なお考えだと思いますけれども、その場合、いろいろな新たな案が政府、それから与党の委員会の中で提示されたといった場合、対米交渉の前提は、新しい案の地元合意ができているところからスタートするのでしょうか。それとも、地元合意ができていない段階でも、米国と交渉することになるのでしょうか。

【大臣】それは、一般的に答えるのは非常に難しいと思います。お答えできるのは、最終的には地元に対しても理解が得られ、そして、米国も合意できる、そういう案である必要があるということであります。プロセスについてはいろいろあるでしょうから、それを一概に言うことは、私(大臣)は決して、結果をまとめるという立場から見たら、いいことではないと思います。

【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者の質問を代読いたします。国民新党の下地議員が予算委員会の集中審議の中で「首相が5月末までに判断せず先延ばしにすることがあれば、沖縄選出の国会議員として6月1日には衆議員を辞める」と述べました。この発言に関する大臣の受け止めをお願いいたします。

【大臣】私(大臣)は直接その話を聞いておりません。下地議員は、私(大臣)を予算委員会に呼んでくれませんので、普天間の話であるにも関わらず、私(大臣)はその場に居合わせることはありませんでした。議員が自らの身分に関わる話を発言されたということでありますが、そういった身分に関わるという性格上、本人以外がコメントすることは避けたほうがいいと、私(大臣)は思います。

六者協議
【時事通信 水島記者】六者協議についてお伺いします。議長国の中国が本会合へのステップということなのでしょうが、「予備協議のようなものを考えている」という報道がありますが、日本政府に対してこうした考え方が伝えられているのでしょうか。

【大臣】六者協議についての様々な意見交換、中身については、私(大臣)はコメントをいたしません。

【共同通信 斎藤記者】六者協議についてお伺いします。ボスワースさんが来られて、いろいろ意見交換をされました。報告を聞いた限りで、全体として六者協議の再開に向けて、実質的な進展、動きは出てきているのか、それとも、いろいろ議論はあるけれども、とても現時点では早期再開の目途が付いていないと見るべきなのか、この辺の大臣の感触をお伺いしたいと思います。

【大臣】「中身を私(大臣)が語るべきではない」という先程の答弁を繰り返させていただきたいと思います。ただ、全く何も動きがないということではなくて、様々な動きがあると(いうことです)。しかし、それが最終的に六者協議開催に繋がるのかどうかということは、現時点では判断しかねるということだと思います。そもそも六者協議を開催することが目的ではありません。開催をして、そこで核やミサイルの問題等を解決していくということ、あるいは、日本政府から言うと拉致の問題も含めて解決していくということ、これが六者協議の意味ですから、開催自身が自己目的化しているということにならないように、気をつけなければならないと思います。

北朝鮮及びイランの核開発問題
【共同通信 西野記者】東アジアでは北朝鮮、中東ではイラン、核問題については世界的に見れば二つの大きな問題が起きています。この問題はおそらく、4月、5月の世界全体の核関連の重要課題になると思いますが、日本における北朝鮮の危機の問題とイランの問題というのは関連していると、あるいは関連づけていくというお考えでしょうか。それとも、このような問題について世界全体の取り組みを進めるために、何か日本としての提案のようなものは考えておられるのでしょうか。

【大臣】特に新しい提案などを考えていることはありません。関連しているか、していないかというご質問は、あまりにも漠然としていてよく分かりませんが、核不拡散を止めるという意味では共通の問題ということは言えるかと思います。いずれにしても4月は、我が国は安全保障理事会の担当議長国でありますので、非常に重要な1ヶ月になるのではないかと思っております。

日本漁船に対するロシア国境警備局の銃撃事案
【読売新聞 川崎記者】昨日、北海道国後島沖で銃撃された漁船の事案で、区域外操業ということで船長二人とその会社が追送検されたということがございました。区域外操業ということが改めて起訴ということで明らかになったことについて、大臣のご見解をお願いします。

【大臣】まだ起訴されてはいないですから、起訴するかどうかという判断はまだ下されていないと思います。ただ、仮にそういうことになったとすれば、これは誠に遺憾なことだと思います。もちろん、今回の一連の事件の中で、一歩間違えれば人命が失われる可能性があるような対応がロシア側にあったということに対して、日本政府としてそれを批判するということについては何ら変わりがない訳ですが、同時に我々の抗議の中に北方四島周辺水域操業枠組み協定に基づく了解覚書を守っていたにも関わらずとして、抗議をしていた部分については、もし事実が違うということであれば、その部分に限っては修正と言いますか、撤回しなければいけないと思います。しかし、だからといって今回のロシア側の銃撃という事実に対して、我々が批判しているということは和らぐことはありません。

政治資金問題
【日経新聞 山内記者】昨日、民主党の小林議員の陣営に不正な資金を提供したとして、北海道の教員組合の幹部等が逮捕されました。大臣も先ほどおっしゃいましたが、明日から参院の方に予算審議が移ります。参院の議員会長は日教組出身の輿石会長で、これについて自民党は追及する構えなのですが、これについての今後の審議への影響についてお願いします。

【大臣】これだけの事件が起きましたので、予算委員会でそれが取り上げられることについて、私(大臣)が特にわざわざコメントすることはありません。当然、自民党は取り上げるだろうと思います。ただし、事件として(捜査が)今進んでいるところでありますので、政府としてどこまで納得がいく答弁ができるかどうかというのは、状況を見なければ判断できないということだと思います。それ以上、外務大臣として申し上げることはございません。

チリにおける大地震被害に対する支援(医療チーム派遣見合わせ)
【ジャパンタイムス 伊藤記者】チリの医療チーム派遣について、見合わせの要請があったということですが、それは事前に現地との調整はされていなかったのでしょうか。

【大臣】厳密な意味での調整はしておりません。ある程度見切りで、時間もかかりますので、飛行機を一便逃してしまうと24時間また時間が経ちますので、最低限の人数ということで、先ず4名を送ったということです。4席しか空いてなかったということもありましたが。それは調査ということで、先発隊で自ら医療行為をすることも可能ではありますが、機材等は送っておりませんので、いわば調査的な先発隊として送ったということです。その上で、改めて大使がベガ保健次官と会合を行って、そこで改めて確認をしたということです。それまでもいろいろなルートで確認をしていましたが、改めてベガ保健次官に確認したところ、「日本の支援の申し出には感謝をするけれども、誠に申し訳ないが、チリは海外からの医療チームの受け入れをお断りしている。したがって、第二次隊については、日本の出発をキャンセルして頂きたい」ということです。我々は飛行機をチャーターして機材を搬入して、約20名が第二次隊として本日出発ということを想定していた訳です。今朝早く、この件の報告が私(大臣)のところにありましたので、相手方がそう言っておられる以上、ここは見合わせた方がいいということで、出発をキャンセルしたということです。もちろん、これから更に必要が出てくれば、いつでも派遣できる態勢というものはとり続けたいと思います。大統領が出された要請の中には、いろいろなことが書いてありましたが、保健省としても、送水装置や診療所の施設、手術可能な設備を備えた野戦病院等、そういうものについては要請がきています。野戦病院を要請しているのですから、当然医師も必要であろうと思いましたが、その辺りがよく分からないのですが、「医療チームについては見合わせてもらいたい」ということです。ハイチのように政府そのものがほとんど機能マヒに陥っているというのではなく、そこはきちんと政府が機能しておりますので、その考え方というものは最大限尊重されるべきだと考えております。

【伊勢新聞 中森記者】出発式の30分前に中止という話が現場にあって、現場の皆さんも困惑したようですが、現場が困惑したということに対するコメントをお願いします。

【大臣】出発式を考えていたというのは承知しておりませんが、いずれにしても必要があれば派遣するということですから、必要がないということであれば派遣しないということは、やむを得ないと思います。今回、先発隊を派遣したことも含めて迅速にやろうと思えば、そのようなリスクを恐れては迅速に派遣できませんので、安全等そのようなことは、非常に大事だと思いますが、場合によって結果的に空振りになるというリスクを恐れては迅速な派遣ができないということだと思います。

【朝日新聞 五十嵐記者】今、「迅速に対応するためには空振りになるリスクも恐れてはいけない」と仰いましたけれども、ハイチの際に「初動が遅れた」という批判がありましたが、そういった批判を受けて考えられたのでしょうか。あともう一つ細かい点ですが、先発隊の方々はどうされるのでしょうか。

【大臣】先程言いましたように、先発隊4名、そのうち1名は防衛省ということで、それぞれ今後の活動を睨んで、必要な調査を行うということになると思います。例えば、機材、医療機器等を送るということになった場合、どういうものが不足しているのか等、そういったことも先発隊は調査できますし、防衛省の方は将来的に自己完結型の医療部隊を出すとか、或いは、瓦礫を取り除く為のPKO部隊が国際的に求められるとか、そういうことに仮になるのであれば、そういうニーズについても予め知っておくということは意味のあることだと思っております。ハイチは、いろいろなご批判がありましたが、しかし、あの治安状況の中で、あのタイミングで出したことが遅かったとは全く思っておりません。緊急支援隊の医療チームの皆さんがお帰りになって、私(大臣)は直接お話も聞きましたが、あれ以上早く行ったとしても何もできなかったということでした。通訳の確保とか場所の確保、それから24時間彼らを守ったスリランカの兵士、そういうものがない中で医療活動はできなかったということでありますので、私(大臣)は決して遅れたというようには思っておりません。ただ、場合によっては「空振りがあっても出していく」という考え方は、私(大臣)は意味があることだと思います。今回、結果的には少し空振りになりました。チャーター機まで出して、空振りになるともっといろいろなご批判はあったと思いますが、4名(の派遣が)、全く空振りになった訳ではありません。想定とは少し事態が変わりましたけれども、こういうことは災害ですから、よくあることで、それを織り込んで行っていくしかないというように思います。

海外における外務省と日本企業との連携の可能性
【ニコニコ動画 七尾記者】視聴者の質問を代読いたします。海外における外務省と日本企業との連携の可能性についてお伺いします。トヨタの大規模リコール問題を巡る米国の公聴会を見ておりますと、追求の仕方ひとつをとってみても、その国独自の傾向があると思います。国際問題が発生した場合、その国で活動する外務省職員の情報分析能力や経験等を事前に日本企業に伝えることで、より当該国の理解を得られる可能性が高まると思いますが、こうした連携は考えられないものでしょうか。

【大臣】そのような連携は考えられますし、現に必要に応じてやっているということです。この場でも私(大臣)は「トヨタのこの問題は、トヨタ一社の問題ではなくて、日本全体の信用に関わる話であるので、可能な範囲でバックアップしていく」ということは何回も申し上げているところです。ただ、今回を見ますと、トヨタというのは大きな会社ですので、自前で米国にもかなりの基盤を持ち、専門家も揃えておられますので、より脆弱なと言いますか、それだけ大きくない企業が同じようなトラブルに巻き込まれたときには、より日本政府の役割というのが重要になるのかなと思います。トヨタの場合にも必要な情報提供等、つまり、これは安全に関わる話でありますので、そのようなことについて日本政府も一定の役割を果たしたということです。

原子力発電所の開発協力(ベトナム)
【産経新聞 久保田記者】鳩山総理がベトナムに原発の誘致について親書を送られていると承知していますけれども、こうした首相のセールスといいますか、こういう方針はこれからも何か続けられるということなのでしょうか。

【大臣】ベトナムの親書の件は、私(大臣)はコメント致しません。個々のことについては申し上げません。といっても、総理が言ってたりするとなかなかつらいところがあるのですが。ベトナムに限らず、UAEもありましたし、いろいろな場で政府ができることをやっていくことは意味があることだと思いますので、親書というやり方もあるし、或いは会談の場で話題にするということもあります。私(大臣)も先般ベトナムの副首相がお見えになった時には、原発や新幹線の話は大分致しました。そういったことについて、政府が一定の関与をするということは決して悪いことではないと思っております。もちろん節度はいると思います。しかし、他の国はより関与の度合いが強い訳ですので、そういう国が多い訳ですので、政府としてもできることについて、協力していくということは必要だと思います。それから、仕組みの問題として、出資とか融資とか、そういうことがよりできるようにする、そういった制度を整えるということも議論のテーマになっておりますので、まだ具体的な方向性を決めた訳ではありませんが、既存のJBICとかJICAとかそういった政府系の機関に一定の役割を付与すると、追加するというようなことも議論はなされているとご理解頂きたいと思います。




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