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2007.09.04|その他

オックスファム・ジャパン・TICAD市民社会フォーラム主催 国際シンポジウム 開会挨拶

岡田 克也氏:

皆さんこんにちは。

衆議院議員民主党元代表の岡田克也です。まずオックスファム・ジャパンとTICAD市民社会フォーラム主催でこういったシンポジウムが開催されることに心から敬意を表したいと思います。私がなぜこの場に立っているのか私自身も非常に戸惑いを覚えておりますが本日は数少ない私のアフリカでの経験をお話しすることで私の務めを果たしたいと考えております。

民主党代表時代、今からちょうど2年程前になりますがスーダンのダルフールを訪れました。私がなぜダルフールに行こうと思い立ったかと言うと、それはあるアメリカ人にダルフールの問題を聞かされまして、日本ではあまりにも関心が低すぎるのではないかと言われて以来ずっと関心を持っていたからです。ダルフールの状況は皆さんもご存知の方が多いかと思いますので繰り返しませんが私が訪れたキャンプは30万人位の非常に大きなキャンプでした。

そこで非常に小さな乳児を抱いた母親との会話を今でも私は忘れることができません。医療キャンプの中で乳児を抱えたお母さんの一人と話をしたのです。色々な話をした後で「父親はどうしているのか?」と聞いてみました。その時の彼女の無表情、そして「3年前にいなくなった。」という言葉に私はそこで言葉に詰まってしまいました。どう見ても目の前にいる子どもは1歳くらいの乳児であって、それと彼女の答えのギャップをどう考えたらよいのだろうかと困惑いたしました。その瞬間頭に浮かんだのは2つなんですが、1つは栄養失調ということで3歳くらいの年齢だったのが乳児に見えたという可能性。もう一つは当時、今もそうだと思いますが女性に対する集団レイプ、それも薪を取りにキャンプの外へ出ると民族の違う襲撃した側がわざとそういう形で違う民族の子どもを妊娠させるということが頻発していると聞きましたのでそういう形で生まれた歓迎されない子どもなのかなという風にも思いました。答えはどちらであったのかはわかりません。しかしそういう非常に厳しい現実を目の当たりにして改めてこの問題の深刻さというものを感じさせられた訳です。

そしてもう一つのアフリカの私の経験は去年ケニアに行ったときのことです。スーダンは代表として2日間しかおりませんでしたので代表も辞めて時間もできましたのでもう少し腰を落ち着けて1週間ほどケニアに参りました。ナイロビ周辺のスラムなども見せていただく機会もありましたが主としてビクトリア湖、ケニアの国境の西側ですが、その湖の端の島々を訪ねて貧困とAIDSというテーマで何泊かして参りました。私の訪れたある島ではHIVポジティブの割合が女性で4割超、男性が3割超という非常に厳しい条件の島でした。学校では子どもたちも元気に学んでいた訳ですが実は非常に孤児が多いのです。つまり両親ともにAIDSで亡くなってしまったというケースが多いのだと聞かされました。学校に来る子どもはいいのですがそのような中でストリートチルドレンになったり、あるいは女の子は少女売春という形で日々の糧を稼がなくてはいけないという正に貧困の連鎖というのを目の当たりにしました。そこでこれは同じ人間として我々も何かしなくてはいけないということを改めて感じた次第であります。

ただ、ケニアの人々の名誉の為に少し申し上げておきたいのですが我々が訪れたのはケニアの中でもHIV・AIDSという観点では最も厳しい地区の一つでした。ケニア全体ではHIVやAIDSの問題は改善の方向にあると思っております。現にケニアの幹線道路などを走っておりますと学校が非常に多いということに驚きました。至る所に学校があるというのは義務教育に対する無償化を進めてきた一つの成果だろうと思いました。そして子どもたちの笑顔は非常に明るかったのを覚えています。こういった面もあるわけですが全体としての厳しさということを感じさせられたケニア訪問でした。

このような経験の中で私がもう一つ素晴らしいと思ったのは日本を含めたNGOの皆さんが大変な厳しい条件の中でしっかりと活動しておられるということです。アフリカに限らずアジアの国々も色々訪れる中で日本のNGO、国際的なNGOの活動というものに非常に強い印象を受けておりますし、日本の若者、日本の女性がそのリスクの高い地域でしっかり活動しておられる姿は非常に印象深く、また日本の将来に対する大きな希望をそこに見るわけです。つまりそういう日本人も沢山いるとここでは同時に申し上げておかなければならないと思います。

さて来年はその日本にとって非常に重要な年です。後から色々お話が出ると思いますがG8サミットが日本で開催されます。またそして第4回TICADの開催も予定されている中でアフリカ問題あるいはグローバルイシューという貧困とか感染症と言った世界的な問題について日本としてどうリーダーシップを発揮していくかと言うことが問われるし、それが大きなチャンスでもあると思います。その為にこのチャンスをしっかり生かして政治も行政も市民社会もしっかりと活動していかなければいけないと思います。

私が地方などで活動しておりまして経済援助などの話をいたしますと、率直に申し上げまして、厳しい反応が一般の多くの方々から返ってきます。この二極化の中で自分たちの生活自体も厳しいのにどうして外国まで、遠いアフリカまで援助しなければならないのかというのが多くの国民の受け止め方だと思います。しかしそういう方々も先ほどのスーダンやケニヤでの経験をお話しますとそこで顔つきが変わります。そして私は彼らの考え方も大分変えて頂いているのではないかと思います。

重要なことはやはり発信だと思います。色々なことをしようと政治や行政がやろうとしても、そこに市民レベルのしっかりした受け皿があれば市民がしっかりと発信していく中で市民の動きがある中でその上に乗っかる行政やあるいは政治と言うものがこのアフリカの問題に対してもっともっとしっかり取り組もうということになるのだと思います。日本全体がこのアフリカ問題、あるいはグローバルイシューについてより関心を持つと言う意味で、私は今日のこのシンポジウムを非常に重要な機会だと思いますし、今日のシンポジウムで色々議論されたその成果を踏まえてまた皆さんからの多くの国民の皆さんに更に発信をして輪を広げていただきたいと、そのことをお願い申し上げて私の開催に当たっての挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。




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