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2003.07.18|国会会議録

7月18日衆議院予算委員会

藤井委員長 この際、岡田克也君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。岡田克也君。

〔岡田克也君登壇)

岡田克也 民主党の岡田克也です。

まず、今菅代表が質問したことについて、私から補足的に質問したいと思います。

総理は、今御説明の中で、イラクが査察を拒否した、あるいはかつて大量破壊兵器を持っていたということを、唯一と言っていい根拠として挙げられました。では、追い返したのは一体いつなんですか。

藤井委員長 ちょっと専門的なあれですから……(岡田委員「では、答えられないならいいです」と呼ぶ)では、岡田君、続けてください。

岡田委員 総理がお答えにならないということは、知らないわけですね。かつては、この十年間の中で……(発言する者あり)

藤井委員長 落ちついて、冷静に。まず冷静に、冷静に。

岡田委員 十年間の中で確かにそういう局面はありました。しかし、国連事務総長が仲介に入る中で査察が再開をされ、少なくとも二〇〇三年一月からは、査察は、積極的 にイラクは応じる、こう副首相が言って、順調に査察が進んできたわけですよ。だからこそブリクス委員長も、査察を続けたい、それは数日ではないが数年でも ない、数カ月だとはっきり言ったじゃないですか。

その状況の中で、どうしてあなたは大量破壊兵器をイラクが持っているというふうに確信をしたんですか。もう一回説明してください。

小泉内閣総理大臣 いつ妨害したかというのは、それは具体的な日時は今私が、調べなきゃわからない。しかし、過去あったでしょう。それは認めるでしょう。総理が一々、何月何日に追い返した、そこまで言う必要はないと思ったから、担当してわかっている人に答弁してもらった方がいいからと。

それで、現実に、今まで言っているように、過去妨害したことがあるんですから。そして、査察団も、国連安保理決議もイラクが持っていないということを証 明する責任があるという決議をしているんですから。それに誠実にこたえてこなかったというのも事実でしょう。イラクがそんなに誠実にこたえてきたとあなた は思っているの。そうじゃないでしょう。

私は、そういう数々の今までのイラクの行動、そして安保理の決議を踏まえて、それを根拠に大量破壊兵器があるなと言ったということを、もう再三再四答弁しているでしょう。

岡田委員 私の問いにお答えいただいていないと思います。かつてのことはともかくとして、二〇〇三年一月からはイラクはきちんと査察に応じていたわけです。そういう 中で査察団も、もう数カ月欲しい、こう言っているわけです。そして、多くの安保理の構成国は、アメリカ、イギリス、スペインを別にして、査察の継続が必要 だと言っていたわけです。そういう中で総理は、いや、イラクは大量破壊兵器を持っていると確信をして、アメリカの戦争に対して、イラク戦争に対して支持を されたわけですから。

どういう根拠で確信したのか。ほかの多くの国がまだ査察が必要だと言っている中で、過去の、昔のことだけで判断をしたというのは、それは適当じゃないと私は思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 それは再三答弁しておりますように、イラクが証明する責任があったんです。

最後の機会を与えるということに対して、有効にそれを示せなかった。イラクが、本当にないんだったら査察を受け入れて、最後の機会を利用すれば、戦争は 起こらなかったんです。そういう点について、私は、国連決議等を根拠にして、これは大量破壊兵器があるな、アメリカの主張に正当性があるな、国連安保理決 議、これの正当性にかんがみて、総合的に判断して武力行使を支持したわけですから、そういうことについては、私は、再三再四答弁しております。

これは気に食う、気に食わないは別ですよ。

岡田委員 全く私の質問に答えていただいてないんですが、多くの国がまだ査察が必要だと判断しているときに、日本は、大量破壊兵器が存在する、総理はそう確信をして 支持をしたわけです。その大量破壊兵器があると確信をした根拠を聞いているわけです。かつて持っていたということじゃないんですよ。

それでは、総理は、単なる疑惑で戦争を支持したんですか。単なる疑惑があるだけで、英米の始めたイラク戦争を支持したということですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは、再三再四答弁しているんです、誠実に。過去の国連決議、イラクが疑惑に証明しようとしなかった、そういう点を総合的に判断して、その根拠としたわけであります。

岡田委員 僕は、総理は全く誤解していると思うんですね。

国連決議の六七八、六八七、一四四一、これを、アメリカ、イギリスの始めた戦争が国連憲章に違反する違法な戦争であるか、あるいは憲章に合致する戦争で あるか、そのことが一つの問題として提起されています。しかし、それは違法かどうかの判断です。私は違法だと思いますが、その問題を今ここで議論している のではありません。国連決議に百歩譲って根拠があったとしても、だからといって、あの段階で武力行使を始めたことが妥当な判断だったということにはならな いわけです。違法かどうかと妥当かどうかは違いますよ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは見解の相違で、私は妥当だと思っているから支持したんですよ。それは、違うと言うのは御自由です、妥当でないと言うのは御自由です。私は、妥当だと今でも思っております。だから支持したんです。

岡田委員 この問題はなお国会の場で議論していきたいと思いますが、私、総理に一つだけ申し上げたいです。

戦争というのは国家の行う殺人です。だからこそ、もちろんすべての戦争が違法ではありません。しかし、本当に限られた場合に、正当な戦争というのがある んです。今回の戦争でも、恐らく一万人以上の方が亡くなっていますよ。罪のないイラクの市民だけで、AP通信の調査でも三千人、英米の兵隊さんも亡くなっ ています、もちろんイラクの兵も亡くなっています。それぞれに家族もあるし、人生もある。一万人のその命を一瞬のうちに奪ってしまったのがこの戦争です。 けがをした人とか家族ばらばらになった人、財産を失った人、無数にいるでしょう。

そういう中で、だからこそ、戦争を始めるということに対しては、政治家として、人間としてぎりぎりの判断を求められるはずです。総理の今の答弁の仕方か ら見て、そういった重さが全く感じられないわけですよ。単に、アメリカがやったからそれに追随しているとしか思えない。もっと総理が苦しんだ末、支持する というならわかりますよ。そういう総理の軽さが、私には、日本国総理大臣の資格、資質、果たして小泉さんがあるのかどうか、そのことを非常に疑問に思って いるということを申し上げておきたいと思います。

もしコメントがあれば、おっしゃっていただきたいと思います。(小泉内閣総理大臣「最後、聞こえなかった」と呼ぶ)もしコメントがあれば、答弁をしてください。

小泉内閣総理大臣 それは、私に総理大臣の資質があるかどうかというのは、これは国民が判断していただけると思いますし、私はそれほど優秀な人間でありませんので、浅学非才でありますが、与えられた総理大臣の職責を精いっぱい務めようと思っております。

いずれ、菅さんなり岡田さんなりが私よりも資質があると思えば、総選挙で国民から選ばれて、菅さんなり岡田さんなりが総理大臣になるでしょう。それは国 民にゆだねますが、私は、フセイン大統領が疑惑にこたえるように誠実に対応していたら戦争も起こらなかった、また、独裁体制で、フセイン大統領がもっと民 主的な運営をしていれば、イラク国民はあの専制と圧制に苦しまなくて済んだと思います。

そういう面において、今回の問題についてはいろいろ議論がありますが、私は米英の行動に対して妥当性があるということで支持したわけでありまして、その根拠というものも再三答弁しているとおりでございます。

岡田委員 一言だけ申し上げておきたいと思いますが、そういった独裁、圧制、確かにフセイン大統領は大きな問題を抱えていました。しかし、そういう国は世界にイラク だけなんでしょうか。多くの国が残念ながら現実問題としてそういう状況にあるわけです。そういう中で、だからといって、国連が、きちんとみんながそろって いるのならともかくとして、一部の国が武力行使をする、そういうことに対して安易に支持をするということは、私には、理解に苦しむところであります。

さて、規制改革について少しお聞きしたいと思います。

私は、規制改革というのは日本を再生するための切り札だ、そういうふうに考えております。しかし、その規制改革がなかなか進んでいかない。具体例で幾つ かお話をした方がわかりやすいと思いますが、この予算委員会でも何度か取り上げられております、一つは幼保一元化の問題です。

幼保一元化の問題は、さきの六月二十七日の閣議決定で、教育、保育を一体化した総合施設の設置を可能とすることを平成十八年度までに検討するということ が決まりました。私に言わせれば、霞が関用語では、この総合施設とか十八年度とか検討するというのは、何もやりませんと言っているに等しいです。

この幼保一元化の問題について、総理はなぜもっとリーダーシップを発揮されないんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 いや、リーダーシップを発揮しておりますよ。難しい問題をもっと柔軟に、保育園、幼稚園、親御さんの立場を考えて、子供の立場を考えて、総合的に運営でき る方法を考えたらいいと。今までできなかった問題を、私がやろうということをやっているんじゃないですか。リーダーシップを発揮しなかったら、こんなこと 今までどおりですよ。保育園は保育園、幼稚園は幼稚園。

もう団体が反対陳情、それに絡む議員がけしからぬ、けしからぬと言っているけれども、これはもっと柔軟に考えろと。やっているのは、私がいろいろな方面 の意向を聞きながら、反対論を抑えて、これからもっと柔軟に考えて保育園、幼稚園の壁を取り払うような措置をしろとはっきりと指示を出しているんです。指 導力がなかったら、こんなことできないんです。

岡田委員 指導力があれば、もっと早くできると思うんですね。

この問題は、文部科学省と厚生労働省の問題なんですが、保育所というのは、厚生労働省によれば家庭で保育が受けられない子供に対する福祉施設だ、そして 幼稚園というのは、文科省によれば就学前の教育を受けさせる学校である。こういう話は霞が関だけの話で、両省のお役人がこういう議論をする。しかし、一般 の方から見たら全く理解できないですね。

結局、この規制改革の話は、お役所を基点にして話をする、あるいは今回でいえば保育園や幼稚園の関係者を基点にして議論をするのか、それとも、現実に子 供さんを抱えて、そしてその子供さんを安心して預けられる、そういう施設を求めている、そういう若いお母さん、夫婦あるいは子供の視点に立って考えるの か、これで全然考え方は違ってくるわけですよ。もし子供の立場から、あるいは若い夫婦から見たら、それは学校教育でも、保育に欠ける、そういった福祉施設 でも、そんなことはどうでもいいんですよ。とにかく安心して預けられる施設が要る。

そういう観点に立ったら、こんなややこしい話、宗教論争をやめて、もっと地方に全部ゆだねる。お金もゆだねる、法律だけは、最低限のことだけ決めておい て、どういう子供を預かる施設をつくるかも市町村や都道府県にゆだねる。そこまでやれば、こんな問題、全部解決するじゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そのように、地方の裁量権、親御さんの立場、お子さんの立場、それを重視してできるようにしなさいと。今までどちらかというと、保育園経営者の立場、幼稚 園経営者の立場、そういう面の配慮が過ぎたのではないか、要は、親の立場、子供の立場、そして地方にできることは地方に任せるという方向でやりなさいと はっきり指示を出しているんですから、この方向に沿って進むんです。

第一、親御さんは保育士の免許、幼稚園の教員免許を持っていなくたって、三歳児だろうが五歳児だろうが、みんな育てているじゃないですか。よく考えろ と、そういうことを。厚生労働省にも文部省にも、保育園団体にも幼稚園団体にも、私よく言っているんですよ。何のために小泉さん支持してきたんだ、我々の 逆のことばかりやってと責められているんだけれども、私は、たじろがないで、やはり親御さんの立場、子供さんの立場に沿ってこういう改革を進めていきなさ いと。その方向に沿って進んでいるんです、進めているんです。よく御理解いただきたいと思います。

岡田委員 総理の話を聞いているといかにも進んでいるみたいですが、一つだけ例を挙げましょう。

例えば、これは厚生労働省ですが、保育所に調理室というのが、設置が義務づけられていますね。なぜなのか。これに対して、厚生労働省はこう答えています よ。調理しているところを見せることがちゃんとした大人になる条件だ、こんな次元の議論で、物事進んでいかないですよ。本当に保育所に調理室が要るのか、 私はそうじゃないと思います。しかし、調理室要らないと言った瞬間に、幼稚園との境目がぐっとなくなっちゃうんですよ。だから頑張っているんですよ。

そういうことを一つ一つ、総理がそこまでおっしゃるんなら、もっときちんとリーダーシップを発揮してやっていくべきじゃないですか。総理には聞こえませ んか。安心した施設に預けることができない若いお母さんの悲鳴や、あるいは子供たちの気持ち……(小泉内閣総理大臣「厚労省、言ってないって」と呼ぶ)そ れは厚労省の課長が言っていますから、議事録お届けしますよ。

とにかく、これは一つの例ですが、総理が本当にやる気があったら、もっとできるはずですよ。分権したらいいわけですよ。そんな、今の保育所、幼稚園の前 提に立って調整しようとするからできない。発想を変えたらできるはずなんですよ。そのことが十分できていないということを申し上げて、もう一つ例を挙げま す。――どうぞ。

小泉内閣総理大臣 それは、幼稚園と保育園の壁をもっと取り払って柔軟に考えろということを、私はっきり言って、その方向に進めているんですよ。今の話は私も初めて聞きましたけれども、今、厚生労働大臣来ている、そんなこと言ったの。

ちょっとこれはうそかどうか、本当かどうか、確認していくために厚生労働大臣にちょっと答弁させてくださいよ。

坂口国務大臣 保育所につくっておりますのは、それは最近のお子さん方が非常にアレルギーが強い、そういうことがありますので、それはやはりよそからとったのではぐあいが悪いということでございます。

岡田委員 今の答弁お聞きになった方はわかると思います。

とにかく、総理、いろいろおっしゃいますが、もう一回言いますよ。総合施設、教育と保育を一体化した総合施設の設置を可能とすることを平成十八年度までに検討する、これが総理のリーダーシップの実態ですよ。検討ですよ。十八年度ですよ。

すぐやる、総理の答弁を聞いているとすぐできるみたいだけれども、現実は、閣議決定したのはこういう内容になっているということを申し上げておきたいと思います。もし何かありましたら。

小泉内閣総理大臣 検討して実施するんですよ。これは、今までの風潮といいますか、今までの例からいって、検討するは何もやらないということに解釈しているようですが、これ は、この幼稚園と保育園の問題については、もっと地方に裁量権を渡して、幼稚園、保育園、お子さんの立場、親御さんの立場に立って柔軟に考える、壁をでき るだけ取り払うようにやるということは、十八年度を待たなくても実施に移していくようにします。

岡田委員 もう一つ、株式会社の農地取得の問題。

これも、多少の規制緩和をしたんですが、株式会社自身が農地を持ったり借りたりすることは非常に大きな制約があります。しかし、今だんだん耕作放棄地も ふえてきた。そういう中で、農業の担い手がいない。しかし、会社になら入って農業をやりたいという人は私はたくさんいると思います。どうしてそういう道を 封ずるのか。

私は、大事なことは、消費者から見て安心、安全な、そういった食べ物がきちんと供給されることであって、農協を保護することでもあるいは農家を保護する ことでもない。農家だって本当は、そういった形でいいものを出したいと思っている農家はたくさんあるはずです。むしろそういう視点に立って行政というのは やっていくべきだ。今、余りにも規制で、そして既得権の保護で、そして農業が、恐らく十年、二十年先には日本の農業、私は、米すら自給できなくなるんじゃ ないか、つくる人がいなくなって。そう思いますよ。

この株式会社の農地保有あるいは借りることについて、もっと大胆にやるつもりはありませんか。

小泉内閣総理大臣 これは、今まで、株式会社ということを聞くだけで猛反対、アレルギーを起こしてきたわけですよ。それを今回やろうとして、現実に、農業への株式会社参入に ついて、農地のリース方式の参入を解禁したんです。具体的に言えば、遊休農地で株式会社の農業経営への参入によって、オリーブの生産から加工までを一体的 に行う特区を小豆島で認めた。さらに、ブドウの生産からワインの製造までを一貫して行う特区を山梨県で認めているんです。

こういうふうに、私は、今までの状況から、もっと柔軟に株式会社が参入して、農業の活性化に資するような方法がないものかということを着実に進めている のであって、この状況を見て、いい状況だったらばさらに広げていきたいなと思っているので、私は別に、岡田さんとそんなに基本的な方向というのは違ってい ると思っていませんよ。

岡田委員 総理のお話を聞いていると、どんどん規制改革が進んでいる印象を受けるんですけれども、しかし、実態は全く違うと思います。今のも、特区でやるという話で、全国でやるという話じゃないんですね。

私は、この規制改革の問題の最後に、政府の総合規制改革会議の宮内議長がこの規制改革についてこう言っておられますよ、その言葉だけ贈っておきます。改革は遅々として進んでいる。

改革は遅々として進んでいる。責任者がそう言っている、遅々として進んでいると。これは、総理に対する思いっ切りの皮肉だと私は思いますよ。本当は全然 進んでいない、そのいら立ちが。しかし政府の議長ですから、進んでいないとは言えない、だから遅々として進んでいると言った。

すばらしい言葉だと私は思いますが、もし何かコメントがあればお述べいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これは、一つだけ取り上げて言われていますが、宮内議長はこういうことを言っているんですよ。「繰り返しになるが、「十二の重点検討事項」の中の多くの事 項は、総合規制改革会議及びその前身組織が長年にわたり努力を尽くしてきたにもかかわらず、今日までに結論を得ることができず、最も改革が困難とされてき たものである。これらの事項について、今回、改革に向けての第一歩を踏み出すことができたのは、小泉総理ほかの尽力によるものとして、これを高く評価した い。」これは宮内さんが、私が言っているんじゃないんですよ、宮内さんがこういうことを言っているんですよ、今回。

岡田委員 人間というのは、公式の場での発言よりも、ふと漏らした言葉の方に真実はあるんです。そのことだけ申し上げておきましょう。

最後に、政治と金の問題を少しお聞きします。埼玉県知事の問題です。土屋さんは辞任されました。

この問題はいろいろなことを語っていると思いますが、その中でこういうのがありました。逮捕された市川桃子氏は、献金を申し出る企業に対して、上限五万 円の形に分けて献金してください、こういうふうに要請されたと言われています。ある企業は、社員二十名に給料を五万ずつ上乗せして、そして二十人の個人名 義で五万円の献金を行った、しかし、実際には会社がそれを取りまとめて献金していた、こういうことが伝えられています。そういったやり方に対して、総理、 何か御感想があればお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、土屋知事と桃子さんの関係は、親子という関係以外は詳しくは知りません。今の捜査中の問題であって、桃子氏がどのような献金の整理をしていたかとい うことについても私は知りませんが、いずれにしても、政治資金規正法違反に及ぶような行為はよくない。法律があるんですから、政治資金規正法にのっとっ て、いろいろな献金は適正に処理されるべきものだと思っております。

岡田委員 その法律を、与党・政府は緩めようとしているわけですね。つまり、今度上限を、五万だったのを二十四万に上げるわけです。そうすると、今回のこの事例に即 していえば、二十人の人に五万ずつ分ける、これが、二十四万に上がれば、そうしたら、五人の人に二十万ずつでよくなるわけです。つまり手間が省けるわけで す。ごまかしがききやすくなるんです。

こういう形で、せっかく五万にしたのを二十四万に引き上げる、つまり透明度を下げるということについて、総理は本気でこれをやろうとしているんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、政治献金のあり方については、受ける側と提供してくれる立場、両面を見なきゃいかぬということから、献金者名の公開基準が五万円が妥当かどうかとい うことをよく判断すべきだと。そういう中で、できるだけ多くの方々の協力を得て、企業でも団体でも労働組合でも個人でも、民主政治を支えるのは国民ですか ら、そういう受ける方がしっかり管理するのは当然でありますが、献金している側の立場も考えなきゃいかぬということで、改善策を考えるように指示していた ところであります。

今回、献金者名の公開基準を引き上げることについて、これはけしからぬという御批判だと思います。しかし、今言った五万円から二十四万円というのは、一 回に、一年間一回に二十四万円ということじゃないんですね。五万円以上というのは、一回で五万円以上やったらこれは公開しなさいということだけれども、中 には、毎月毎月機関紙の発行のサービスを継続的に受ける人たち、あるいは月割りで会費を払っているという人に対しては、別に特定の何か見返りを期待しての 献金ではないだろうということから、毎月毎月二万円以下でしたか、毎月二万円、毎月毎月二万円以下を払われている人はそれでいいんじゃないか、では結果的 に一年間で二十四万円だと。

そういう献金する立場に立って見ていれば、名前が出れば、あの人に献金してこの人に献金しないというのがわかるのは嫌だという立場も考えて、ある程度、 月二万円程度毎月毎月支援している人ということについては、それは私はいいのではないかということであって、別にこれは緩和とかそういうことじゃなくて、 政治献金をどうやって適正に管理して、なおかつ多くの方々からできるだけ政治献金の拠出を求める、そういう両面から、私は、この民主政治を支える意味で考 える必要があるんじゃないか。

全部禁止すれば、果たして各政党、恐らく民主党もそうだと思いますが、政治活動には金がかかるということがわかっている、その金をどうやって適正に調達 するかということについては、私は十分に議論することが必要だと思いまして、月二万円以内で献金するというのが、これは不正につながるとか、大幅に改悪に つながるというふうにはすぐ結びつかないんじゃないかと私は思いますが。

岡田委員 聞かないことまで答えて、質問を引き延ばさないでいただきたいと思います。

我々は、別に全部出せと言っているんじゃないんです。五万をきちっと維持していくべきだ。なぜならば、これは与野党の中で、あのリクルート事件から始 まった一連の政治改革の中で、一九九三年十一月に与野党でいろいろな議論、政治と金の問題を議論した、そのときの最大の争点です。百万だったのを五万に下 げたんです。それを、あなたがいとも簡単に逆噴射しているから、これは大変なことだということで申し上げているので、我々は別にゼロにしろと言っているん じゃない。五万を維持していく。せっかくこれは政治改革の、その結果としてつくられたことですから、それを簡単に戻していいのか、そういう視点で申し上げ ているわけであります。

ある報道によれば、五万が二十四万になれば、企業の名前も八割ぐらいは今よりも隠れちゃう。ほとんど透明性がなくなるわけですよ。少し変わるだけじゃな いんですよ。そのことを申し上げ、これは絶対再考してください。私は、他の与党も、こんなことを認めたら、政治改革は一体何のためにやってきたのか、そう いうことになると思いますよ。ぜひ考えていただきたい、そのことを申し上げておきたいと思います。

ほかにもいろいろ申し上げたいことはありますが、とにかくこの国会、政治と金の問題が次々に提起されました。自民党長崎県連の問題、これは七月十一日に 有罪判決、地裁です。坂井代議士はまだ逮捕されたままです。大島農水大臣の疑惑、松浪代議士の問題もありました。いずれも与党代議士の問題でした。そし て、そのたびに小泉さんは、いや、前向きに検討しなきゃいけない、変えなきゃいけないとおっしゃりながら、結局、出てきたのは、この後ろ向きの改悪だとい うことを申し上げておきたいと思います。

最後に、時間もありませんので、この予算委員会の場で、総理の弟さんが社長を務める会社、コンステレーション、これについて藤井委員長が、一般的な商行 為とは何なのか、よく事実を整理して、後日、また調整して報告していただきたい、こういうことを我が党の長妻委員の質問に対して三月三日に言われました。 その答弁はまだ示されていないというふうに理解をしています。委員長が言われたことについて総理としてきちんと答弁していただきたいと思います。

私は、そのことの中身ももちろんあります。同時に、この会社、総理に就任されたときに解散されていますけれども、弟さんが社長、弟さんは私設秘書です ね、そして公設秘書が取締役、監査役には今の飯島秘書官、そういう形でまさしくファミリー企業。本社は横須賀にある。中身はコンサルタント会社。こういう 会社をつくっていること自身が、私は、政治家としての資質、総理としての資質に欠ける。そのことを申し上げ、そして、先ほどの委員長の質問に対してもし答 弁があれば、最後にお伺いしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 これも何回も御質問をいただくんですが、そのときの質問に根拠となったものが、先方の企業にじかに取材をして、その状況の様子を全部委員に配付しました。 そういうことに対して私も、委員長が調べろと言うから調べてみました。そして、その議事録を調べているうちに……(発言する者あり)

藤井委員長 御静粛に。

小泉内閣総理大臣 ところどころ消えている。何でここが消えているのかと見たら、ここはちゃんとテープが残っているというのでテープの起こしているのを読んだら、何と、民主 党の議員が私に疑惑があると思って先方企業に取材いたしたときに、その人は、その消されている部分、これ、驚いちゃったんですけれども、そこに対して、小 泉純一郎とは一切関係ない、そこが消されている。そして、政治献金もない、これをはっきり書いているところだけ民主党は消して、皆さんに配付した。これは 実に無責任な、卑劣な姿勢だと思います。こういうことを民主党は許しているのか。何を根拠に、一番大事なところを消して、いかにも疑惑がないのにあるかの ように――もう何回も何回も答弁している。

藤井委員長 総理、時間が来ていますから、総理。

小泉内閣総理大臣 私は、こういう無責任な、都合の悪いところを消してやるというのは……

藤井委員長 総理、もうわかりました。答弁そこで終えてください、総理。

小泉内閣総理大臣 良識のある判断とは思えない。民主党の議員にも、しかも一党の代表の幹事長がこうしたところで本当に質問する問題か。私は非常に残念です。

藤井委員長 総理、答弁は簡明にしてください。

今、私が委員長として、この問題については後刻整理して御答弁を願いますと言ったことは事実であります。総理はそれに、委員長の言葉に従いますと言った ことも事実でありますから、そこを別の問題のことについて答弁をされるということは、委員長としてもそこはよく整理をして答弁をしていただきたい、このこ とを注意いたしておきます。

岡田君。

岡田委員 委員長、これは予算委員会の権威にかかわることですから。委員長がお聞きになったことに総理は全く答えていない。ここは権威に基づいてしっかりやっていただきたいと御要望いたします。




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