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2001.09.21|その他

構造改革についてどう考えるか

1 当面の緊急課題

現在、非常にざわついておりまして、例のテロ事件への対応ということが、今、かなりの勢いで政府あるいは与党の方で動いております。おそらく、国会が始まると予算委員会が2、3日あると思うのですが、その直後に法案が出てくるのではないかと予想しております。したがって、それについて党の中ではいろいろと議論しているところです。

簡単に申し上げますと、出てくる法案は2本あります。まず、国内の重要施設について、自衛隊の警備業務ができるようにするということについては、いろいろと具体的な詰めは必要ですが、基本的にはそういう自衛隊法の改正は必要であるという前提で具体的な詰めをしたいと思っております。治安出動にいたる前の出動ということになりますが、要件としては治安出動と同様の要件、例えば総理大臣が命令をするとか、あるいは国会に対して20日以内に承認を求めるというような規定が必要だと基本的に考えております。いろいろと定義の問題はありますが、基本的に必要だという前提で、党の中の議論は進んでいるところです。

もう一つはテロに対して米軍などが報復などをしたときの日本の協力ということでありますが、これも基本的には新しい法律が必要だということは党の中で確認はされております。今、周辺事態法という法律がありますが、これを拡大解釈することは認めないということであります。今回の事態の深刻さ重大さに鑑みて、本来であれば大議論がいるところでございますが、非常に限定した範囲での立法で対応すべきだと思っております。

ただいろいろ難しい問題はあるわけで、憲法が禁ずる武力行使との境界線をどう引くかという問題があります。しかし、それについては周辺事態法という法律が既にあって、そこで一応線引きが行われておりますので、それをそのまま持ってくるならさほど問題はないのではないかと思っております。我々は周辺事態法そのものに当初は反対しましたが、考え方については反対したわけではありません。線引きを変えるということになると大議論が要りますが、そのままもってくるのならいいのではないかということであります。

議論が分かれるのは、国連の決議というものをさらに求めるかどうか、つまりアメリカが勝手に反撃するという時に、それだけで日本は協力するという形にするのか、それとも国連で湾岸戦争時の武力容認決議のようなものがあってはじめてできると考えるのか。ここは法律そのものの性格を日米協力法にするのか、あるいは国連活動の一環としての法律にするのか、法律の性格そのものに絡んでくる基本的な問題であります。基本的には国連決議が要ると思っておりますが、どうもアメリカはそういうものは必要ないと思っているようですし、アナン事務総長もそういうのは要らないと言っているようなので、あまりここを強く言ってしまうと、法律そのものができても使えないということになりますので、非常に悩ましいところであります。

もう一つは、アメリカが正当防衛ということで説明をしておりますが、それを超えてしまう場合というのが十分考えられるわけです。例えばテロ行為をした人以外の、それを匿った国とか国民に対して攻撃を加える、あるいはもっというと、国際テロ活動そのものを根絶するというような話もありますので、世界中いたるところのテロに対して協力的な国に対して攻撃することも考えられますので、どこまでお付き合いができるのかということを法律上きちんと書いておくことが必要ではないか。その辺がおそらく法律的には重要なポイントになると思っておりまして、基本的には協力が必要だという前提で、今私が申し上げたことについて煮詰めていく必要があると考えております。その結果によっては、賛成もあれば反対もあるという風に党の中はなりつつあるということです。

もう一つだけ申しますと、これだけでも大変なことなのに、衆議院の選挙制度改正の問題も出てまいりました。これもテロの問題と絡んでいるという説も濃厚であります。つまり公明党に対して、こっちで認めてあげるからテロは協力しろという取引があると囁かれてもおります。自民党や公明党の弱いところは中選挙区、強いところは小選挙区にするという無茶苦茶な考え方でありますが、与党間で合意されましたので、テロに関連する法案次に出てくるだろう、非常にピッチが早いだろうと言われております。これは我々政治改革を10年間やってきた立場からいいますと、そもそも法の下の平等に反しますし、とんでもないことだ、こういうのを認めると日本の民主主義が死んでしまうと思います。いずれにしても、これは党として全力で取り組まねばならない問題だと思っておりますので、ぜひ皆さま方のご理解やご協力をお願いしたいと思います。

2 構造改革について

こうした二つの大きな問題が出てきましたのでややかすみがちでありますが、しかし経済の状態も極めて厳しい状態にあります。そういう中で構造改革というものをどう進めていくか、そもそも小泉内閣が登場した原点は構造改革を進めるというところにあったわけですし、参議院選挙もそれを争点にして彼は勝利したわけですから、ここが一番重要な問題であることは間違いありません。補正予算も11月の半ば頃には出てまいりますので――我々は遅いと思いますが――、この構造改革の問題についてどう考えるかということについて、お話したいと思っております。

基本的なスタンス

まず個々の中身に入る前に、基本的な考え方として小泉構造改革についてどう考えるかということがあると思います。ここはいろいろ議論があって、もっと民主党が対立軸をはっきりさせろという議論が一部にあります。小泉総理の言っていることと民主党の言っていることにはあまり違いが見えない、もっとはっきり違いを出すべきだという議論があります。

たしかに選挙の戦いぶりを考えると、違いをはっきりさせた方がいいのは間違いないことだと思います。ただ、あえて申し上げたいのですが、今まで民主党がいろいろ述べてきたことにかなり近いことをあとから小泉総理が登場して述べている、そういう時に結果的に一見似ているからといって、われわれが元々述べてきたことを変えて違う場所に移動して、そして小泉改革を批判すべきなのかというと、私はそうではないだろうと思います。つまり我々が従来主張してきたようなことを時の総理が言うのであれば、もちろん全く一緒ではありませんし、あとでお話するようにいろいろと問題がありますが、方向性として似ているのであれば、我々の主張がある意味では正当化されたということでありますから、堂々と胸をはって主張を続ければいい。そこで従来の主張と全然違う主張をするとなると、今まで民主党が言ってきたことは一体何だったのか、単に批判をするために言っていただけではないのかということにもなりかねない。私はそういう意味で、大きな方向として不良債権処理の問題とか財政構造改革を重視をして、それと景気回復という二兎を追うとか、あるいは官から民へというような大きな方向については、我々は微動だにせずに引き続き堂々と主張していけばいいと思っています。

そんなことをしていると、小泉が倒れるときに民主党も一緒に倒れるぞという意見もあります。しかし、私は小泉が倒れるときは、彼が構造改革をやり抜く中で世の中から受け入れられずに倒れるということではなくて、結局、彼が言っていることができなくて倒れるあるいは倒されるということだと思っておりますので、逆にそういう時には、本当にできるのは本家本元の民主党だということになるだろうと思います。小泉改革が中途でできなくて、小泉改革というよりは本来の構造改革を小泉総理がやりきれなくて倒れてしまったときに、構造改革そのものを民主党が批判していたならば、民主党に期待が集まらないわけで、今は苦しいですが、私は構造改革をきちんと主張していくということが民主党の未来に?がっていくと思っております。

自民党の中で中心にいたわけではなく、周辺にいた小泉さんが総理になったということは、国民は従来の自民党に対してははっきりNOだと言った結果だと思います。したがって、小泉が倒れたからといって、従来の自民党に国民の期待が戻るかというと、そういうことはないと思っておりまして、そのときこそ民主党が政権を担っていかなければいけない事態だ、つまり小泉の次は民主党だと私は思っております。そういう意味で私はしっかりとした構造改革を主張すべきだと思っております。

もちろん小泉改革そのものが、我々が主張する構造改革とぴったり合っているわけではありません。今まで、参議院選挙では総論で争われましたが、これからは各論、具体論の世界ですから、政府の出してくる法案に対して、一つ一つ見極めて、いいものがあれば賛成する、問題があればどこが問題かを具体的に指摘し、それでも直らなければ反対するという態度で臨んでいけばいいのではないかと思っているところです。

ここは党の中でも若干議論が分かれるわけです。参議院選挙の総括のときでも、なぜ我々は勝てなかったかということについて2つの考え方があったと思います。1つは、小泉改革の問題点、特に痛みの点についてしっかり手当てをするということを主張すべきだった、それが足りなかったから、民主党は伸び悩んだという意見です。もう1つは、そうではなくて、本当に民主党が構造改革を進めていくというアピールに乏しかったのではないか。むしろ痛みを強調するあまり、構造改革をやるんだという本来のところがどうしても弱くなって、民主党は構造改革に反対だと思われたことが伸び悩んだ理由ではないかという2説があります。私は後者の考え方で、だからこそ痛みを強調した社民、共産が惨敗をしたのだと思います。投票に行かなかった人の中で、かなりの割合で小泉はいいけど自民党は嫌だという人がいた。民主党が構造改革をしっかり主張していれば、民主党と書かせることができたはずだというのが私の意見であります。この辺はまだ科学的な裏づけをしっかりとっているわけではありませんが、そういう私の理解から言っても、しっかり構造改革を主張していくということが大事だと思います。そして小泉が倒れれば、本家本元の民主党に出番が回ってくる。そんな考え方をしているところであります。

不良債権の処理

具体論を少し申し上げようと思いますが、経済財政改革については政府の方からも若干具体論が出てきておりますが、まず不良債権の処理の問題です。ここは、小泉総理の所信表明演説の中でも、従来のものは2年、新しいものは3年の内に処理を終えるということを明言をいたしました。総理としてはかなり歯切れよく述べられたわけであります。そういう方向性については、我々は評価をしております。ただ具体的な中身ということになると、言葉は明快ですが中身は中途半端というのが我々の評価です。

何が中途半端かというと、一つは不良債権の範囲があまりにも狭すぎるということであります。これは我々が3年前の金融危機の時から言っていることですが、金融庁の検査が甘すぎて資産の査定が不十分である。その不十分な資産の査定に基づいて引当をしていますから、引当も不十分である。こういうことを我々は主張しているわけであります。このことは結果が裏付けているわけでありまして、例えば昨年、倒産・破綻をした企業の約4割が要注意債権か正常債権として分類されていました。つまり、破綻や破綻懸念先に分類されていたのは6割未満であったということから見ても明らかだと思います。そごうもそうでしたし今回のマイカルもそうですが、直前まで要注意債権で、引当も数%であったと聞いていますので、問題企業である大企業30社のほとんどについては、十分な引当がされていないのではないかということであります。

これは海外からみればいわば常識のような話ですが、金融庁は依然として分類は適正であると言っているわけです。ただ最近はちょっと変わってきて、もう一度分類を見直そうという動きになっておりますが、我々はそれをちゃんとやるべきだと主張しているわけです。おそらくそれをやると、債務超過に陥る大手行というのも出てくると思います。少なくとも資本不足、過小資本になるところは続出するだろうと思っておりまして、その時には再度の資本注入を行うべきだと考えております。ただその前提として、経営責任、リストラということを前提にした上で、資本の再注入をやって金融を安定させるべきで、それが本来の不良債権処理だと考えております。形式はよく似ているのですが、中身はかなり違うということであります。

あと、あまり小泉改革の中では出てきていませんが、今の政府与党の中にあるインフレターゲット論に関しては我々は慎重であります。日銀の主張に近いのですが、ほとんど意味がないということと、将来のインフレのリスクを持つ、あるいは国債を日銀がどんどん買っていくということになれば財政規律が失われることにつながっていく。そういう意味で特定の目標を決めて、そして資金供給を増やしていくという考え方には賛成できないということであります。これは小泉さん自身もそういう立場だと聞いていますので、小泉改革とは違う話かもしれません。

財政改革

それから財政政策ですが、来年度の国債発行額を30兆円に抑えるということは、これは小泉さんが所信表明で言われまして、我々もこれは当然だと思っております。総理があそこまで言っている以上、今年度も30兆円でいくべきだというのが我々の考え方です。もちろん経済の実態を無視してこれを金科玉条のごとく言うつもりはありませんが、基本的に景気対策として公共事業をやるべきでないと考えておりますので、もし資金が今の30兆円までの隙間で充分でない、雇用対策その他をやるので3兆、4兆さらに必要というのであれば、それは予算の組み替えで財源を出すべきだというのが我々の意見です。来年度予算については5兆円削って2兆円再配分するという考え方を政府もとっているわけですが、今年度予算を聖域のように考えてここはいじらないというのではなくて、まだ半年ありますから、公共事業の見直しを中心に財源を得て、雇用対策その他に、つまり今度の補正に充てればいい。それを来年度からではなく、今年度からやるべきだ。これは実は、我々春の小泉政権登場の時から主張しているわけですが、そういう形で30兆円の枠を極力守っていくべきだと考えております。財政規律をしっかり守っていくというのが政府の1つのメッセージなので、それをあまり安易に壊してしまうと来年度はどうなのか。結局、財政規律というものに対してやはり日本は考えていないということになり、長期金利の上昇、国債の暴落とかいろいろな問題が生じてくると申し上げているのであります。

税制改革については、小泉改革であまり話が出てきているわけではありません。我々もプライマリーバランスを何とか均衡させることを5年ぐらいでやりたいと、実は小泉政権ができる前から主張してきたところであります。そのためにはおそらく16?17兆の予算を削らないと、5年ぐらい先を考えたときに、プライマリーバランスは均衡いたしません。そのためには予算に対する考え方を相当転換しないと、従来型の予算を5%や1割を削るという発想ではとてもできない話であります。そういう意味でも財政の歳出構造の改革を徹底的にやらないとできないわけであります。その分、増税でやればいいではないかという意見もありますが、今の経済の実態から増税が大幅にできる状況にないということは当然のことでありますし、同時にプライマリーバランスを均衡させれば財政改革が終わるわけではありません。つまり、プライマリーバランスの均衡とは、我々が財政規律を求めていくための一里塚にすぎないと思っております。つまり私は予算委員会でボードを使って説明をいたしましたが、プライマリーバランスを均衡させたあとは、次に国債の発行額をゼロにする必要がある。つまり80兆円の予算50兆円にするということです。その先にあるのが、地方も合わせれば666兆と言われる膨大な借金をボチボチとではありますが返していかなければならない。こうした目標をたてると、いまは高い富士山の1合目、2合目程度の話ですから、プライマリーバランスの均衡までは増税という手段を使わずに徹底した切込みをやらないといけない。そこで増税という手を使ってしまうと、おそらく消費税率が20%、30%という世界に最終的になってしまうだろうと考えております。したがって、大型の増税というのは、プライマリーバランスの均衡のめどがついた次の段階で考えるべきだと整理をしております。

それに対して、政権をめざす政党として無責任だ、増税をちゃんと言うべきだという意見もあります。しかし、私に言わせるとそういう意見こそが無責任であって、今から増税をやるということになると、先ほど言ったような大増税、まさしく30兆円以上の増税するという道になってしまうわけなので、それはちょっと取り得ない道だと考えているところです。

当面の税制改正

ただ目の前の税制の改革は必要になります。当面の課題は証券税制です。あまり詳しくは申しませんが、基本的に株式市場に個人株主をもっと参加させることは重要だと思いますが、それには株式市場に対する信頼感、一般投資家が安心して、少なくとも騙されないと確信をして入ってこられる市場にすることがまず前提で、単に税制を少しいじれば変わるというものではないと思います。そうは言っても、ドイツの例を見ても、有利にすることでお金が流れやすくなることも事実でありますので、そこはちゃんと手当てをした方がいい。例えば、今で100万円までは課税されませんからかなり有利な状況になっていると思いますが、基本はやはり申告によって課税するということにすべきであって、源泉分離課税との選択制を前提にした制度を改める。そういうことは一度決めたわけですから、必要ならそれを2年後といわずに早めて、そういう中で全体の税率を下げるということを考えていくべきだと思っております。我々は前からこういうことを主張してきたわけですが、政府税調の考え方とかなり近いということであります。その前提としている納税者背番号制なども合わせて準備をして、早く導入すべきだと考えております。

税制でいいますと、所得税について、鳩山代表が一時、課税最低限を引き下げるべきだということを衆議院選挙の時に言われて、少しいろいろな議論が出ました。あの時、私はあれを消そうとして、わけのわからないようにしてしまったのです。そうしないととても説明できないと思ったものですから。ただ基本的な考え方としては、我々は例えば、配偶者控除とか配偶者特別控除とか扶養控除とか、そういうものをもう一回きちんと整理し直さなくてはならないとは思っておりまして、その結果として増税になるところが出てくるのは当然ありうるだろうと思っております。財源を求めるためではなく、税制を人生選択についてニュートラルにすべきだと考えております。専業主婦の方が悪いというつもりは全くありません。私の家内も専業主婦なので、そんなこと言ったら殴られてしまいますが、やはり働いている人と働いていない人で差がつくというのはおかしいのではないかというのが私の基本的な考え方です。そういう意味で、いろいろな控除について、特に配偶者特別控除から始まるのだろうと思いますが、将来的には配偶者控除も含めて、見直していくという視点は必要だと思っております。これはむしろ女性政策というパッケージで民主党も検討を始めておりますので、そういう中で議論をしていきたいと思っているところであります。

あと、規制改革とか競争政策は、我々も必要だと思っておりますが、まだ政府の方もそんなに具体的な話として出てきているわけではありませんので、特に今日、私の方から申し上げることはありません。

医療制度改革

それからもう一つ大きなかたまりは社会保障です。社会保障については年金、医療、福祉、介護とありますが、介護は今の制度で充分と思っておりませんが骨格はいいのではないか、ただし手直しは要るという認識であります。年金については我々は基礎年金は税でやるという考え方でありますので、その時には増税が必要になりますが、その分保険料も安くなるので、その分プラスマイナスゼロでニュートラルだと考えております。基礎年金を税にして、二階建て部分は積立方式に転換する、あるいは完全に民営化するという意見もありますが、私は、そこまではなかなか現実的には難しい。したがって、もう少し二階建て部分を縮小していく中で、世代間の公平を図っていくべきだと考えております。

問題はやはり医療制度の改革の問題です。これは政府の方もいろいろ議論を行っておりますが、小泉総理が厚生大臣の時、当時私は野党の厚生委員会の筆頭理事をしておりまして、野党全体の筆頭理事でもあったので、随分、厚生委員会、予算委員会で議論をさせていただきました。いろいろな約束を彼はしてくれましたが、何一つ実行してくれていませんので、総理になっても同じ事になるのではないかと懸念をしております。私は、今厚生省が作った案というのは、全くお金の帳尻合わせにすぎないと思っております。違った視点で改革をしていくべきだと思いますが、そこでのポイントは部分的な市場主義の導入という考え方だと思います。医療の部分で市場主義を入れるのはおかしいという議論もありますが、私は全面的に市場主義を入れるのではなくて、考え方を部分的に入れるということを主張しております。

たとえば、今の診療報酬制度については、厚生省は厚生委員の時に詳しく説明にきましたが、私はじめてその説明を聞いたときに、これこそまさしく社会主義であると思いました。診療行為、薬の値段も含めて全てのモノの値段を厚生省が決めて、それに基づいて財源を配分をしていくということです。大体そんなことを厚生省ができるわけがないので、医師会の意見を聞きながらやっていくわけですが、いろいろなゆがみがそこに出てきております。例えば病院と開業医のどっちにウェイトを置くか、あるいはお医者さんの中でも小児科とか精神科とかは中医協に代表を送っていませんから、厳しいことになっていると思います。だから何科にウェイトを置くかという問題もあります。社会主義ですから全部人工的にやるわけですが、そういうことの弊害というのは本当に大きい。

私は従来から、点数の配分を決める中医協の改革をまずしっかりやるべきだと主張しております。これは武見さんが会長の時にもめた問題でありますが、医療提供側が8人、支払い側が8人、中立側が4人となっておりますが、政府の審議会で中立委員が全体20人のうち4人しかいない審議会は他にありません。半分以上が中立委員というのが常識だと思います。労使交渉なら別ですが、利害関係者が大半を占めて、そこで税金や保険料の分配を決めるわけですが、そういう形で決めているのは絶対におかしな話だと思っております。

今、国の予算80兆円について国会の予算委員会で議論したり、いろいろな形でチェックもされるわけですが、医療費30兆円については、そういう意味で利害関係者が勝手に分けているというのはどう考えてもおかしい。30兆円という金額の大きさから考えても絶対おかしいと思うので、中医協の構成をまず過半数が中立委員にすべきだと思います。

それから、部分的な市場主義の導入と申し上げましたが、私は一定程度の割合を患者側が負担するという考え方は必要なことだと思っています。例えば高齢者の医療を定率制にする。最初は定額制でしたが、定額制では意味がない。定率制にすることで、自分が1割でも2割でも3割でも負担することで、これはタダじゃないんだということでいろいろなチェックが入るわけなので、やはり定率制がいい。これは部分的な市場主義の導入だと考えております。

あと、いろいろな規制緩和をしていく中で、医療提供者側にもサービスを競うような形をつくるべきですし、そういう意味では株式会社が病院を経営することも今よりはいいと考えますし、患者側が病院を選べる情報提供あるいはカルテなどの情報開示ということもどんどん進めていくべきだと思います。大体、今世の中でなにかを買いに行って、細かいレシートをもらえないのは医者と寿司屋だけです。寿司屋も今は回転寿司でちゃんと細かいレシートをもらえるようになりましたし、一部は病院もちゃんと出していますが、レシートを出さないという前近代的なことをしているのはお医者さんぐらいではないか。そういうことをきちんと義務づけるべきだと感じているところであります。

そのほか、患者というのはバラバラですからなかなか対抗力がないのですが、健保連という固まりなると相当な力を発揮できますので、やはりそこで医療提供者側に対する力を発揮できるような工夫をしていくべきだと考えております。例えば医療機関を健保連が選択をする、あるいは駄目なところを排除していくというようなことを認めていくべきだと思っております。 医療制度の改革は、そういう基本的な考え方に基づいて効率化することにより30兆円という全体の医療費をどれだけ抑えられるかという発想でやるべきで、頭から抑えてしまうというのも手法の一つとしてわからないわけではありませんが、まず徹底的な中身の効率化をやることが構造改革だと思っております。安易に負担増を言ったり、上限を設けるという発想はいかがなものかと感じております。

公共事業の改革・地方分権

次に公共事業です。民主党の公共事業の考え方はあえて申し上げる必要はないかもしれませんが、かなり具体的なものをもっているわけで、5年で3割カットするということを言っているわけであります。同時にそれは、単純にカットするだけでなく、次に申します分権の考え方とセットで考えるべきで、カットした結果をどう使うかを、一番、現場に近いところの行政に判断をさせるべきだと考えております。公共事業の問題は、昨年の衆議院選挙でもかなり国民的にも受け入れられ、大きな前進のあった、逆にいいますと民主党として大きな貢献のできた分野でないかと思っています。

次に地方分権であります。民主党はかなり具体的な考え方を出しているつもりでありますが、小泉さんは地方分権についてどういう考え方をしているか、私にははっきりと見えておりません。まず地方交付税1兆円カットというような話から入ったりしましたので、財政という視点を重視しているのかなという気はしますが、やはり我々は、一番住民に近いところに重点を置いて、つまり市町村という所に重点を置いて考えていくべきだと考えております。国がいろいろなことを判断して、地方に対して、親会社が子会社、孫会社に対するように、ああしろこうしろと指示をし、資金も流し、場合によっては人も派遣するというのが今の日本の姿ではないかと思っておりまして、それはやはりそうじゃなくて、子会社、孫会社という部分は少しは残るかもしれませんが、基本的にはそれぞれが自己責任で自律的に経営判断ができるような仕組みにする。回りくどい言い方をしましたが、市町村や都道府県が自らの財源をもち、自らの権限でやる。その代わり、結果については責任を負う。つまり変なことをしたら首長や議員は選挙で落とされる。そういうきちんとした、民主主義が機能するような仕組みに改めることが、地方分権の一番根本のところだと思っております。

具体的にどのようなステップでそういう方向にもっていくかということは党の中でいろいろ議論しておりますが、我々はまず今ある補助金を5つぐらいに括って、完全な統合補助金、包括補助金という形で渡すということにすべきだと考えております。例えば公共事業なら公共事業でひと括りにしてしまう。その中でいくら使って、何をつくるかは都道府県や市町村に任せてしまうということであります。その前提として、国がやるべきこと、都道府県がやるべきこと、市町村がやるべきことをもう一度再分類しなければいけないのですが、そこについては、すでにいろいろな議論があるように、国道は2桁までは国がやるけれども後は地方に任せる。河川は1級河川の中でも都道府県の境界を流れるものは国がやるけれども、ほかは都道府県や市町村に任せるという形で、まず何をどこまでやるかという分類をした上で統合補助金に改める。それは5年間の措置として、最終的に地方に税源を移譲するというか、地方が課税をするという仕組みに移行していくという考え方です。

ただこの問題を議論していく中で一番難しいのは、どこまで地域間の差を認めるかということだと思います。つまり地方分権の議論というのは、一般論で議論しているうちはみんなそうだそうだと言うのです。たとえば、北海道のある議員と議論して完全に意見が一致していたのですが、ある時点まで来て、この考え方を適用していくと北海道の過疎地域の町村などは予算が何分の1かになってしまうということに気づいて、ぱっと現実に戻った議員がいたのですが、それをどの辺まで認めるのかを党の中でもう少し議論を進めなければいけないと思っております。

それから、かなり税源を移してしまったときに、どう考えても大都市は税収が突出してしまうわけです。それをそのまま認めるということにするのか、大都市に税収があがるのはそれなりの理由があるので、何らかの論理で上前をはねる、あるいは税制そのものを変えてしまうことを考えるべきなのか、そこも議論があるところであります。いずれにしても1人あたりで見て、倍ぐらいの差があるのは、やむをえないと思っておりますが、それが4倍、5倍となるといろいろ議論が出てくるし、そういう意味では倍ぐらいの差を認めるというところからスタートして、財政調整をその分残すというところかな、というのが大雑把な私の感覚です。今日は専門家の先生が沢山おられますので、またご批判をいただければと思っております。

民主党の理念

以上ちょっと細かく申し上げましたが、最近理念の話がよく出てきますので、最後に申し上げます。この前も鷲尾さんに朝日新聞に書かれてしまいまして、かなり痛いなと思いました。ながら読み、私も反論のようなものを書いたのですが、テロですぐには掲載できませんと朝日新聞に言われてしまいました。

まずいろいろな議論をするときに、民主党は理念がないとか目指すべき方向がわからないといわれるのですが、他の政党だってそんなに理念があるわけではありません。自由民主党に理念があるかというとありませんし、小沢さんのところも理念、理念と言いますが、何かあるのかというと無いように思いますから無いんだろうと思います。それが民主党についていわれるのは、一つは民主党に対する期待の現れだと思いますが、同時に何かバラバラ感が民主党にある。これは、一つ流行のようなもので、今日の朝日新聞を見ても鳩山さんと私の意見がすれ違っているような書き方をしていますが、そういう風に書くのが一つのパターンになっているような気がします。しかし同時に反省をしなければならないところもあります。党としていろいろな議論があるのは当然だと思いますし、むしろ健全なことで、アメリカ合衆国のようにいろいろな考えの持ち主が民主党にはいるんだと思うのですが、問題は大いに議論をして決まった時には同じ方向を向いてやっていく、何かあった時には星条旗をかざして団結するという姿勢が、民主党には少し欠けているのではないか。決まった後も、いや俺は違うんだといろいろな言い訳を言い続ける。支持者に対するためかどうかわかりませんが、それはやはり決して望ましいことではない。それは今回の党改革の中でいろいろ工夫もいたしましたが、まず心がまえの問題として、もし民主党の議員で新聞記者はじめマスコミに、あなた党で決まった方針に反対じゃないのですかと聞かれたら、今までは「私は個人的には反対だ」というところで終わっていたのですが、これからは「個人的には反対だけど党の方針には従う」と必ず言うようにすれば、大分違うのではないかと思います。少し話はずれましたが、大事なことではないかと思っています。

少し余談になりましたが、もう一つ、日本全体として先行きが見えていないというのが、民主党として理念がないという形で言われているのではないかということであります。しかし、この問題を議論していくときに非常に大事なことは、国が目標を掲げる時代ではないということを前提に議論をすべきだと思っております。つまり昔の富国強兵とか、戦後の欧米にキャッチアップするとか、なんとなく国民的なコンセンサスがあって、そっちに向かって凄い勢いでみんなが走るという時代ではない。やはり多様性を前提にして、それぞれの多様な価値観をもって、しかし国としては緩やかにめざす方向があるという感じで議論をしないと、ちょっと今風じゃないというか、私の感覚に合わないという気がします。

そういう緩やかなめざすべき方向という意味で、民主党がどういう方向を目指すかというと、これは党の中でもいろいろ議論しており非常に難しいのですが、一言で言うと、私は経済の再生と社会的な公正を両立させていくということではないかと思っております。もちろんそれで全てではありませんが、一言で言えとなれば、そういうことではないか。民主党を作ったときに、旧民主党から来た枝野君と友愛から来た川端さんと3人が政策の担当者だったものですから、民主党の理念をどうしようかと一日議論をしました。おやめになった細川さんからは民主中道という言葉をいただいたのですが、訳のわからない言葉だからこんな言葉を使うのは止めようということになりまして、結局議論をしたけれども煮詰まらずに、その時民主党の規約には市場原理主義でも福祉万能主義でもないと書いたのです。これも何も言っていないのですけれども、そのぐらいにせざるを得なかった。それをもう少し幅を狭くしていうと、私の今言ったような経済の再生と社会的な公正の両立ということかなと思っておりますが、いろいろこれから党の中でも議論をしていかなければなりません。

その時にいくつかのポイントがあります。まず市場主義というものをどう考えるかということですが、私は市場主義というのは手段であって目的でないと思っております。よく欧米の考え方で、民主主義と市場主義というのが普遍的な価値だと言われます。しかし私は、民主主義はそう言っていいと思いますが、市場主義というのは、よりよく生きていくための効率的に資源を配分するための手段であって、それ自身が目的というのはおかしい。そういう前提で考えるべきだと思っています。ただ、そうは言っても、今までの日本を見たときに市場主義というものをあまりにも軽く考えてきたといいますか、市場主義というものは非常にゆがんだ形でしか導入されてこなかったというのも事実だと思いますし、経済もこういうことになっておりますので、それを立て直すという意味では市場主義を幅広く入れていくということは大事なことだと考えております。目的ではなく手段だけれども、市場主義を入れていくことは大事なことだと思っております。そして、それは本来の経済分野が中心になりますが、先ほど言った教育や医療の分野でも、部分的には考え方として、それを活用していくことは必要なことであると私なりに整理をしているところです。

それから社会的公正ということを議論するときに、何が社会的公正かということになりまして、これまたそもそも論をやっていると、そういうのが好きな人はいいのですが、なかなかまとまってこない。いくつかのキーワードを挙げるとすると、一つは機会の平等だと思っています。これを非常に重視する。今の結果の平等を保障すべきだという人はさすがに少なくなっていると思いますが、しかし機会の平等というのも言葉は簡単ですが、実質的に機会の平等を確保していくということは、それはそう簡単なことではありません。そこをもう少し深めていく必要がある。私は一番大事なことは教育だと思います。やはり子どもが、意欲や能力のある子どもがそれに見合った教育を受けられるということは非常に大事なことだと思いますが、いずれにしても機会の平等を重視する。

もう一つはセーフティーネットです。セーフティーネットという言葉もいろいろな意味で使われますが、本来の意味である程度狭く考えますと、私は人生には努力が大切で、努力した人が報われるのが当然だと思いますが、努力だけではなく運もあります。努力したけども能力が足りなかったという人も沢山いらっしゃるわけで、そこを補うのがセーフティーネットだと考えております。そういう意味では、運悪く自分の会社が倒産したという失業者の方を救うための制度とか、あるいは運悪く病気になったひとを救うための医療制度とか、そういう意味でのセーフティーネットを張る。そして何度でもチャレンジできる、人生一回勝負ではなくて何回も勝負できるようにすることが大事なことだと思っています。

三番目、最後ですが、社会的公正を考えるときに中間層というものを、やはり重視することが非常に大事だと思っております。何が中間層かというのもよくわかりませんが、しかし、つい最近までは日本人の7、8割が自分は中間層だと答えていたわけで、そのことは貴重なことで、政治的に大きな資産であると思っています。そこはなるべく確保していった方がいい。アメリカに見られるように、所得が2分化していくような社会は決して望ましくないと思います。

最近、中間層が、どんどん日本においても、アメリカのようになっているという見解もあり、また、そうではないという見解もあって、そこは学者の先生方の間でもっと議論していただきたいと思いますが、中間層を重視するという観点からみますと、たとえば税制の問題では所得税や相続税をなるべく軽くするというのが一つのはやりでありますが、そこはもう少し慎重に考えたほうがいいのではないか。あまり税制の累進度を高くすると、働く意欲がなくなる、あるいは外国に逃げていくという意見もあります。しかし、それで働く意欲をなくす人は働いてもらわなくていいので、あるいは日本を捨てていくのであればそれでいいので、それでも頑張るという人が人間として尊敬できるのではないかと思うのです。そうした観点から税制を中心に中間層の問題というのを考えていく必要があるのではないかと思っております。

いろいろお話しましたが、一通り私なりに思っているところをお話したところであります。あとは皆さま方からの厳しいご批判をいただければと思っております。

質疑応答

(問)教育改革についての民主党の方針をお聞かせください。

(岡田)痛いところを突かれたという気がします。民主党の中で、教育はかなり検討が遅れている分野です。率直に申し上げて、党の中で2つの考え方の折り合いがついていないのです。2つというのは、従来の路線といいますか、重要な支持者として教職員組合という存在がありますが、そういう従来の考え方にたってやっていくのか、あるいは自由化路線をとっていくのかということについて、基本的なところで一致をしておりませんので、中々案がまとまらないのです。

いろいろ努力しながら、例えばこの前の国会で教育3法について、我々は政府の案を修正して賛成をしました。教育関係で野党が賛成をするというのは珍しいことのようなのですが、その時は教職員組合の方と相談をしながら、あるいは彼らと議論もしながらまとめることができましたので、これから議論をどんどんして信頼関係が煮詰まっていくだろうと私は期待をしております。

私の意見を言わせていただくと、一方的な自由化論はとらないのですが、今の教育の現状はかなりひどい。私も子どもが地元の公立の小中学校に行っているのでわかるのですが、不登校とかやはりかなり問題があることは間違いないわけです。だからいろいろなことを試してみるしかない。つまり、文部省が机の上で制度を書いて、全国一律でやっていくというようなことでうまく行くはずがないので、いろいろなことをトライしてみて、その中でいいものを取り入れていけばいい。そういう意味で品川区がやった学校選択制とか、それから今、我々が法案を検討しているコミュニティスクール構想とかをやってみる。これは勝手に学校をつくってしまおうと、いろいろな試みを有志がやる自由を認めて、実際に制度になるものは制度化していくというものですが、より大胆にそれを取り入れていくということでやっていくやり方がいいのではないか。そういう意味での自由化路線というのを私は考えております。

(問)経済政策の話をしっかりしていただきまして、大体、小泉さんがやりたいこととやはり似ているなと感じました。小泉政権ができる前に、鳩山さんと小泉さんの関係を見ているとほとんどラブラブじゃないかと見ておりました。しかし、政党として言っていたのは民主党の方が先なのに、なぜ小泉さんに人気があって、民主党には人気が出ないのかというところがポイントだと思います。そこはやはり、小泉さんが自民党の中の最大のスポンサーである建設業界とか郵政とか、そうしたところと戦う姿勢を見せている。それに対して、民主党はどうかというと、今日、ちょっと具体的に言わせてもらうと、例えば地方行革にどう取り組むか。分権の話が出ましたけど、行革のプロから見ると、国はある程度やっていまして、大問題は地方に残っているわけで、そこをしっかり言えるか。そこは民主党の最大のスポンサーの一つである自治労との関係が問われる。郵政改革も全く同じですね、全逓との関係が問われる。特殊法人改革でもそうでしょう。NTT改革でもNTT労組との関係が問われる。やはり小泉さんのように自分のところの既得権としっかり対立する政策を見せているところと、民主党が総論では同じようなことを言っていながら、自分たちのそういうところとしっかり対立できているのかということに対しての国民の目は厳しいと思うのですね。いみじくも今の質問に出ました教育改革も、日教組としっかり対立できるのかというと、やはりぐずぐずなんですね。何かいろいろなことをおっしゃいましたけど、しっかりとした政策を出せていない。ですから、総論については大体わかっていて、小泉さんと目指す方向も同じで、その中で本当に国民の支持を得られるかどうか。逆に言うと、民主党が政権をとった時に、そういう政策を本当にやれるかどうかということはですね、自分たちの既得権ときっちり対決できるか、具体策を出せるかというところが問われるんじゃないかというのが1点ですね。

もう1点は、プライマリーバランスについてのご議論がありました。私も大体そういう方向性かなと思っておりますが、でもプライマリーバランスというのは実は算数でして、出と入りをいつあわせるかと、いつマイナスをなくせるかという本当に単純な算数なんですね。しかし、おそらく政党として問われるのは、国際的に見て、日本は国民の税負担率と、今、国民が受けているサービスとの間の決定的な差があるわけで、そこをいじらなければいけない。その時に間違いなく問われるのは、サービスを今の国民負担率の水準に落とす(17兆円落とすとおっしゃいましね)ということで、回るのかどうか。安易に増税を言いたくないというのはわかるのですが、しかし国民に対して、「今、あなたたちが受けているサービスと払っている負担との間にもの凄い差がありますよ」と、それは結局調整せざるを得ない(これははっきりとした痛みですからね)ということを、勇気をもって国民に問えるかという具体的なところで問われていくと思うのです。総論とか政策に関してはおっしゃることに賛成で、小泉さんとやはり似ているな感じました。でもそういう具体的なところがこれから厳しく問われていくときに、そこをしっかりやらないと、結局、小泉人気に取られてしまうんじゃないかという感じは受けました。

(岡田)小泉さんと昔飲んだことがあるんですね。彼が厚生大臣の時にお誘いをいただきまして、私も当時野党の筆頭理事だったものですからその時はお断りしまして、お互いそういう役職を降りた後、2人で2時間ぐらいお話をしたことがあるのです。その時、彼が言っていたことは、どうして君らは敵をつくらないのだ、これこそ一番わかりやすい。俺はそれをやってきた、と言われたんですね。その時はなるほどと思ったのですが、そういう意味では、小泉さんは非常にお上手ですね、敵をつくるということが。たまたま小泉さんが自民党の中の非主流にいて、敵を作りやすかった。また、小泉さん自身が寄って立っている金融業界とか医療業界は今あまり叩かれていない。建設など橋本派の牙城が叩かれていて、彼自身はそんなに痛んでないという見方もできるのではないかと思いますが、いずれにしても敵を明確にして叩くということは大事なことだと思っています。

例えば民主党は医師会と対決はしているんですけれども、まだちょっと見えにくい。去年も医師会から2000万円献金をもらっていて、2000万円ぐらいのことでいろいろいわれるなら全部返したらいいのではないかと私は思うのですが、2000万円でも惜しいのか、自民党に比べたら何十分の1なんですが、馬鹿げたことだと思います。

いろいろと具体的なお話がありましたが、我々を支持している人たちとの関係というのは、敵対することではなくてお互い信頼関係にもとづいて議論をすることだと基本的には思います。最後に喧嘩になるかもしれませんが、最初から喧嘩をするのではなくて、先ほど日教組との関係で申し上げましたけれども、お互いが信頼関係に基づいて議論ができるのが非常に大事ではないか。喧嘩をするのは簡単ですけれども、それで物事が進むわけではないので、私は基本的に、相手の人が私の立場ならあるいは私が相手の立場なら、お互い言っていることはわかるというぐらいのところまでは、きちんと議論すべきじゃないかと思います。それがわかった上で、賛成はしないけれどもやむを得ないなという所まで持っていく努力をすべきだと、私は基本的には思っています。ややまどろっこしいかもしれませんが、そういう姿勢で進めたいと思っているところであります。だからと言って筋を曲げてまで妥協するつもりはありません。

プライマリーバランスの話は、もちろん数合わせなんですが、さっき言いましたように、このぐらいは歳出を削減することでやらないと帳尻が合わないんだろうと思います。それは相当大変なことですね。実は民主党の中でも十数兆減らす案というのは作ったんです。党の中でネクストキャビネットというのを作っておりますが、これは本当の大臣と一緒だなと感じました。例えば社会保障担当大臣は、社会保障は聖域だからびた一文まけられない、教育は教育で聖域だから予算を減らすのはけしからんという話で、なかなか厳しかったのですが、何とか十数兆減らすところまでは案ができました。まだ外には出していませんが、中では具体的な議論はしているということはわかっていただければありがたいと思います。

(問)3点ほどお伺いしたいと思います。一つは不良債権処理の問題ですけれども、テロの前あたりから小泉内閣で不良債権処理のトーンが落ちてきたのではないかという感じがしております。ゼロ成長、あるいはマイナス成長になっても不良債権処理をするんだという竹中さんのパワーが落ちてきているという感じがするのと、もう一つはやはり景気がこういう状況だと要注意債権が不良債権に、優良債権も要注意債権になってしまうのではないかということがありますと、結局、小泉構造改革自体も口先だけになってしまうのではないかというのが一つです。

2点目は小泉改革と民主党との違いということです。民主党というのはどうしてもっとうまく言えないのかなという気がするんですけれども、民主党の寄って立つ地点というのは民主党の結党大会で出ました、消費者、納税者、生活者のための政治ということと、もう一つは例の地方の税金を取るときは2対1だけど配分するときは1対2というのを是正していくと、その他にもあったかもしれませんが、そういういわゆる寄って立つ機軸の違いがある。小泉改革と民主党の改革は、言葉は同じですけれども、党としてのスタンスは全然違うのではないかという感じがするのですが、そういう所の点についてこの前の参議院選挙のアピールの仕方はもう少し工夫があってよかったのではないかと言うのが感想です。

3点目は医療改革についてですが、自社さ政権の時に、ちょうど小泉さんが厚生大臣だったという記憶があるのですが、その時に、自社さの与党協で自社さの改革案というのをつくりましたが、今の厚生省案よりは医療の提供側の既得権に食い込む案だったと思うのです。今はそれよりも凄く後退している。そういう点についてもっと民主党としてアピールできたのではないか、以上です。

(岡田)まず不良債権の問題は、どうも竹中さんが何となくやばいという感じになっております。景気が悪くなって、それまで静かにしていた連中がまた騒ぎ出したという現象がおきていると思います。経済政策は需要追加型からそうではない方向へ、小泉さんになって180度ぐらい転換したわけですね。しかし経済閣僚はほとんど変わっていない。経済産業大臣とかそのまま留任しちゃっているわけですね。それから亀井静香とかが考え方を変えたということではないわけで、結局しばらく黙っていたのがまた元気になってきたという現象が今起きているのだと思います。そういう意味では、非常に小泉改革は正念場だと思います。少し話はずれますが、靖国問題で相当パワーをロスして、今回、このテロの問題で、今度は衆議院選挙制度の改革。もうそういうのをやっていたらおそらく構造改革をやる余力はなくなるのではないかと、懸念すら今しているところです。

それから民主党の生活者、納税者、消費者の立場に立つというのは、キーワードとして規約をつくるときに工夫をして入れた言葉なんです。私も非常に好きな言葉なんですが、ただ国民はもう、小泉改革に選挙の時はフィーバーみたいになっていましたので、いや俺たちは違うんだということを主張しても、一顧だにされなかったのではないか。そういう意味で我々は、まだ小泉さんからも具体論が出ていなかったわけですから、非常に戦いにくかった。そういう意味で、我々は自民党ではできないんだということを言って戦ったつもりなんですね。構造改革の中身でここが違う、あそこが違うというのではなく、自民党の中ではできないんだと。それが作戦としてよかったかと言われれば、私は作戦としてはあれしかなかったんだと今でも思っています。

医療制度は、今の厚生省の案は非常に問題があります。与党3党の案もいいとは思っていませんが、議論はこれからです。厚生省の案については厚生大臣も異論があるようですし、議論はまさしくこれからなので、ぜひこの国会で後半しっかり議論したいと思っております。具体的な中身は先ほど少し申し上げたようなことで、全体をいかにして効率化していくかという観点で構造改革していくべきで、負担だけを増やすとかキャップをはめるとかいう発想では駄目だという観点でやりたいと思っています。あとは医師会といかにして戦うかということだと思います。

(問)基本的に、岡田先生と私は違和感がなく、テレビなんか見ていても今日も、全く違和感がないのですが、党として先生の考えが活きているとは見えない。松原さんの話とも似ているのですが、そこのところが最大の問題だと思います。

それで、民主党の先生方というのは、長年いろいろつきあっておりますが、物分りがよくて優しいんですね。基本的に非常に物分りがいいんですよ、常識的だし。だから逆に、しっかり喧嘩してもらいたいんですね。やはり小泉さんみたいにやってもらった方がいいのではないかと思います。党内でも党外でも。特にそのためには、重要な問題について、具体的にどんどん対決的な意見をつくっていただきたい。思いついた問題でいえば、司法制度改革が非常に重要ですけれども、あれはこの前の中央省庁の改革と違って、かなり役所に任されたというか、役人がどうにでもできるような部分がたくさんあります。ああいうことについて、まさにフラフラしている時にこうすべきだという話を打ち出す。あるいは特殊法人改革でも、すでに自民党がやっていて去年の12月に閣議決定されているわけですから、ああいうことについて具体的な意見、大きなものでは道路公団について民主党はこう考えるんだという話をどんどん投げて、相当時間をかけた具体案をぶつけていくぐらいの話がなければいけないのではないか。道路公団だけでなく、住宅金融公庫も全部の特殊法人の問題についてやってもらいたいのですが、そういう問題をとりあげる。それから医師会との問題も、確かに2000万円ぐらいのことでフラフラしてもらっては困る。最大の問題は医師会なのですから、診療報酬支払基金などは止めてしまえということをどうして民主党が声をあげていわないのか。医療機関から保険者に直接やっていたときは、保険者にはちゃんとした医療をしているかどうかをチェックするインセンティブがあったのに、今はそうしたインセンティブがないわけですよ。こんなにコンピューターが発達した時代に、昔のように集まっていっぺんにやった方が合理的なんて誰も納得しない。いま、厚生労働省とか文部科学省が一番モノの考え方が各省を見ていて遅れています。この間、外務省を叩いたように、集中的に叩いていいと思うんですよ。

それから最後に666兆の国債の問題ですが、プライマリーバランスから始まってシコシコ減らしていくという話をされました。丁度昭和47年ぐらいに中曽根さんが調整インフレということを言っておりましたが、当時インフレというのは、国賊だ、犯罪者だと言っておりましたけれども、そこまで言うかどうかは別にして、今、おそらく政府がもくろんでいるのは、インフレにしてチャラにするのが一番楽なんですね。国家としては負担が軽くなるんですから。それは駄目だということを警告することが重要ではないか。貯金したってどうにもならない、国債買ったってあんなものは紙くずになるよということをどうして言わないのか。私はそういう極端なことをいって喧嘩ばかりしてきましたから言うわけではありませんが、民主党には挑戦的に対応することが一番足らないのではないのか。だから国民には見えない。重要な問題について、たとえば今の道路公団についての国土交通省の意見について我々はこう考える、ということをぶつけていただきたというのが私の期待です。

(岡田)今、お話を聞きながら思っていたのですが、野党というのはいろいろなことを言うのですが、報道されることがあまりにも少ない。それはやはりどうせ野党の言っていることは反対のための反対だと、55年体制的な目で見られているのではないかと思います。我々はかなり具体的なことを詰めて提案しているつもりなんですが、それがなかなか載らないということがあります。例えば、この前の国会で我々が出した無認可保育所を届出制に変えるというのも、載った新聞でせいぜい3行か4行。同じことを政府がいうとどーんと大きく載るわけですね。全く前の国会の我々のコピーなんですが。それから正式に政治家の政治資金収支報告をインターネットでアクセスできるようにするというのも、これも今総務省がいろいろと考えているようですが、これも前の国会で法案として出した時には2、3行載っただけということで、なんとなく徒労感はあるんです。だから今おっしゃった道路公団についての我々の改革案はあるわけです。これは少し大きく載せたところもあるのですが、ただちに工事を中止して、現在の収入の中で返していって民営化していくという案が実はございます。住金についても、基本的に民営化ということも出しておりますので、あとはいかにそれが伝わるかというのが問題かと思っております。

インフレになるぞということも言っているのですが、伝わらないもどかしさはあります。そのための手段をどうするかということは我々も悩んでいるところです。

(問)すごく次元の低い、私の身近なことを聞いていただきたいと思って発言します。まず民主党は私の仲間にとって、なんか絵空事みたいな、身近な存在ではないということを凄く思うのです。実は海江田先生とか江田先生は、昔、しょっちゅう来てくれたし、一緒に泳いだこともあります。私は江田さんが大好きですし、海江田先生は最初に選挙に出たときはお茶汲みしたんです。その頃は区民祭りにも来てくれて挨拶してくれたのが、最近は取り巻きがいて、目があってもやぁというだけで、取り巻きが私たちのグループから離して偉い人たちのところに行ってしまう。今となってはお会いしても挨拶することすらないという民主党になってしまっているというのが、私のグループにとっての実感です。

具体的に言うと選挙の前に、私たちは教育関係の人とコミュニティスクールを港区につくろうと張り切った時期がありまして、都議さんが遠い存在にあったので、自分たちの手の届く、話のできる人に都議さんになって欲しいというので、結構、一生懸命思っていたんですね。それで民主党はどなたが立つかすごい感心をもっていたのですが、出てきた方はその前の大臣で汚職で辞めた方の息子さんでした。実はそのときの選挙運動では自民党の奥さん方から、他の候補に入れないようにお願いねと言われましたが、自民党の候補は80代ですから冗談じゃないわよということでしたが、すごくがっかりしました。その後、なにしろ偉いお父様の息子さんですから、私たちが何を言ったって近づくわけにはいきませんし、現在も最も遠い存在にいます。その次の参議院選挙の時は、誰に入れていいかわからないという状態で、案外私のまわりは棄権した人が多かったんですね。私はもっと多くの人が投票に行くかと思ったら、2時か3時に行って少ないなと思っていたら、周りの人が行っていなかった。もっと民主党でいい人が出ていたらみんなで応援したのになと今でも思っています。

なぜこういうことになってしまうのかと思いますと、自民党のみなさんは組織的にそれこそ時には劇場の切符をくれたり確実に動く人たちがいる。それから共産党とか公明党の人たちは、ご近所の人たちが働きかけてくる。議論したり、時には喧嘩することもできる。最近公明党の先生方から、うちのグループにお声がかかるんです。実は都会の生ごみを土に返そうという運動をずっとやってきまして、それを福祉の方とつなげて、高齢男性やボランティアで参加しているおばさんの作業を仕事にしよう、税金で賃金を払おうじゃないということをやっています。それが共産党の方からも公明党の方からもアタックがあるのに、民主党からはない。まして知っている先生方もいるのに、全然来ない。それはなぜかというと、やはり私たちの生活からどこか離れて理想をおっしゃっているけれど、それは私たちにとっては絵空事に近い。例えば構造改革を例にとっても、先日の加藤寛先生の話をきいて感動して帰って、地域でまた勉強会をしてみたりして、私たちがやっていることはもしかして構造改革の一端を担っているかもねと言いながら勉強会を進めています。その時も、公明党の方は来てくれる。自民党の人も来てくれる。しかし、残念ながら民主党の方と手をとりあうこともないし、何かつかめない感じで、それが選挙の結果に出るのかなぁ、それも何かもったいないという気がするんです。

(岡田)海江田さんも江田さんも党の中で偉くなりまして、忙しくなっていることは間違いないでしょうね。自分も地元に帰る時間が少なくなったなと思って、反省を込めてお聞きしていたのですが、確かにだんだん、当選1回の時は火水木は東京にいて、あとは地元を回っていたのが、いまでは土日でも戻れない日があるという状況があると思います。

ただおっしゃったように、我々が活動していく中で、自前の支持をしてくれる人をつくっていくということは非常に大切だと思います。それがないと、いつも風頼みで選挙をしていると本当に不安定ですので、自分の足で歩いて理解者を増やすという地道な活動が、地方にいけば非常に大事で、そこがこの党は決定的に不足しているのではないかと思っています。そのことは参議院選挙の結果につながってきたのではないかということで、その点は非常に大事な点だと思っています。私は地域で自民党に互角に戦えれば、トータルで見て絶対負けないと思っていますので、そういう地道な活動をもっと議員はすべきじゃないかと思っています。

それから民主党の参議院議員は東京都だと鈴木君で、優秀でいい男なんですよね。ただ東京全部を見ていますから、なかなか接点がなかったかもしれませんが、これからぜひ可愛がってやっていただきたいと思います。参議院の限界もあると思いますが、都議のO氏もいい男ですので、お父さんがどうのと言わずに一回会ってやっていただきたいなと思います。

(問)2つ申し上げて見解をうかがいたいのですが、1つは先ほど税制の問題で、課税最低限の問題を、配偶者扶養控除のお話の中で言われました。しかし、私はもう少し民主党は根本的に、納税意識の問題、国に対する信頼感というか、私たちが政権をとったら税金を納めてくださいと。それはいくら収入の少ない人でも納めてもらうんだということをもっと強く言わなければいけないのではないかと思います。女性問題ではない、男女平等問題ではないと私は思いますけど、その辺はいかがでしょう。

2点目は鷲尾さんが理念がどうのこうのと言われたということと、先ほどの経済の再生と社会的公正ということを言われたのですが、経済を再生した後にどういう国にするのかということで、これは私、自動車屋ですから産業エゴで言っていると思わないので欲しいのですけれども、やはり日本は技術立国しか生きていく道はないと思います。サービス業や金融、ITが対立概念ではなくて、そういう力を総合して日本は、いわば資源のない国ですから技術で生きていくという最終的な国づくりのイメージが必要だと思うのですがいかがでしょうか。

(岡田)まず所得税の話ですが、課税最低限を下げるというのは、なるべく多くの人に負担をしていただくということではあるのですが、具体的手段としては、やはりどこの控除を縮小、廃止するかということなんですね。課税最低限があって、それを下げる上げるという話というのは一つのフィクションであって、控除のどこをどう縮めるかの議論なので、そういう視点でどこを下げるのかというと、配偶者特別控除や配偶者控除になるだろうと思うのです。そういうものがない独身の課税最低限は充分に低いので、さらにそれを下げるという話はないと思うんです。課税最低限があがってしまうのは、いろいろな控除があって上がっているので、そこはやはり手をつけるということだと思っています。もちろん、そのバックグラウンドにある考え方は、なるべく多くの方に負担をしていただくという考え方であることは間違いありませんから、そこは矛盾する考え方ではないと思います。

それから技術立国というのは非常に大事だと思いますし、日本は何で食っていくかというと、一定程度の製造業を基盤としてやっていかないと、アメリカのように豊富な資源があるわけではありませんから、食えない。そういう意味で中国をどう位置付けるかというようなかなりいろいろな議論は必要だと思っていますが、そういうことを全てひっくるめて一言でいうと経済の再生ということですが、中身はおっしゃられたような技術をどう考えるかということも重要なファクターとして当然あると思います。それを言っていくと言葉が多くなってしまうので、一言で言えば経済の再生。経済の再生というのは簡単にできるのではなく、持続的にやっていかなければならないので、ある意味ではそのことによって、一定の所得をもつということが政治の基本だと思います。社会的公正というのは分配の問題ですから、国としての富を確保しつつそれをいかに分配するかという意味で経済の再生と社会的公正という風に申し上げたつもりです。各論としてはおっしゃられたことを含めていろいろとあると思います。

(問)ちょっと質問になるのですが、全体に前から気になっているのですが、経済の再生と社会的公正とおっしゃられましたが、僕らのような市民運動をやっている立場からすると、それを言うのであれば、国際的公正と地球的民主主義という視点がしっかりあって、その国際的公正と地球民主主義にどう絡んで日本の経済が再生をし、日本の政治が変わっていくという風にならないと、中々説得性がないのではないかと思います。小泉さんとの最大の違いはそこになければいけない。小泉さんというのは、孤立主義であってアメリカ主義でしかない。それに対して民主党はどういうことが言えるのか。アフガニスタンにボランティアで行くのか、パキスタンにボランティアで行くのかというようなことが何かあってもいいのではないかと思いました。

そういうことをなぜ思うかというと、今政治というのは政党の中だけのものであって市民社会との間で非常に断絶ができている。先ほど柳川さんが言った話はそういう話だと思います。非常に距離ができてしまって、政治をやっているのは政党の特別の人だけがやっている状態になっている。それから経済というのは、僕らからすると全くわからない金融の話ばかりやっていて、不良債権がどうだとか、国債をいっぱい発行してどうだとか言っているけれども、実際に僕らの普通の生活と経済がどこでつながっていて、それが世界経済とどうつながっているかということもよくわからない。そういうどちらも自閉的に内向化している問題をどう市民社会に開くことができるのか、そういう政策をしっかり出していけば、資源の新しい再配分とかあるいはそのための新しい仕組みのあり方とか、そういう問題提起が淡白にわかりやすくできるんじゃないかという気がするんですね。どうも岡田さんを批判する気はないのですが、民主党はエクスキューズが多すぎるんですよ。いろいろな価値観があるからだと思うんですけど、ぜひむしろどこかの方向へびしっと決めて政策を出していただけるとありがたいと思いました。

(岡田)今のお話は政党とは何ぞやというのとつながる問題だと思いますが、私も国際的公正とか地球民主主義というのも大事な言葉だと思いますが、政党が活動していく中で、やはり国という枠組みはある程度前提にせざるを得ないと思うんですね。それは別に排外主義に戻るということではないのですが、我々が国際的公正ということを貫いて、日本と中国の所得を同一水準にしろという議論は、それは日本の政党の人間としてはできないですよね。本質的にはそういうことが必要なのかもしれませんが、ある程度枠をはめて議論をすることは、やむをえないことではないのかなと思います。だからそれを越えた話は政党ではない視点で、そういう立場の方がおっしゃることは必要だけれども、そこまで政党が言ってしまうと、それはおそらく、むしろ国民の意識から離れてしまうのではないかなという気はします。いつも頭の中に位置付けておかなければならない問題意識だと思いますが、しかし政党であるがゆえの枠組みもあるのではないかと、そんな風に思って今、お聞きしておりました。

(問)質問じゃなくて、反省をちょっと。私、日本経済新聞というところにおりまして、新聞記事を書いてきたわけですけれども、先ほど岡田さんが言われたように、野党のことが報道されないというのは、非常に痛い所を突かれたなと思っております。選挙の時は平等に報道しています。選挙以外の普段の場合にはまるで極端です。昔に比べれば大分よくなったんですけれども、例えば国会なら国会の報道でもですね、まるまる大臣がこういう答弁をしたということがメインなんですね。これが民主党の何々議員の質問に答えたものであるというのがちょっと付くだけなんですね。国会質疑の一問一答も報道され、要約が報道されるのですが、よく見ればわかるように、答弁に中身があったところを載せて、それに質問をつける形なんですね。だから本当にいい論議がされているかというのは、新聞を見ているだけではよくわからないということをずっとやってきました。これは私が力がないから、私の力で新聞を変えることはできないけれども、非常に犯罪的だったという気はしています。それに対して極端なのが、役所の記事はそれほどの意味がなくても、これがまた大きくなってしまうんですね。経済産業省の課長しか考えていないようなことがどーんと経済産業省の方針のように出たりするんですね。そういうことをやってきますと、読む人間というのも、かなり物事を判断する時に、物事を判断する材料が平等に与えられていないというのがあるのではなかろうかと思いまして、こんな場でこんなことを言ってもどうにもならないのですが、岡田さんが一言言われたので、私の反省を述べさせていただきました。

(岡田)率直なご意見をありがとうございました。多分、日経新聞で経済産業省に貼り付けられている記者の数と野党全体に貼り付けられている記者だと経済産業省の方が多いんじゃないでしょうか。記者の皆さんも多くて4、5人で野党をカバーして、政局から政策から全て書く状況ですから、政策の細かいことまでわかりっこないんです。我々もわかりやすい政策の出し方をしなければいけないとは思いますが、人の配置から考えていただくと大分違うかなと思っておりますので、一つよろしくお願いいたします。

(司会)ありがとうございました。民主党のホームページも少し工夫して、今のホットイシューは何で、それについて民主党はどう考えているかをぱっぱっとわかるようにしてもらうといいかもしれません。いまのように、見る方が苦労しないといろんな政策が出てこないというのは問題で、新聞があまり期待できないとすると、そういうものを活用することを考えないといけないのかなという気がしております。

まだ具体的な問題について議論したいと思っておりますが、こういう時期ですので、またの機会にお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。




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