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1996.02.21|国会会議録

136回 衆議院・外務委員会

岡田委員 新進党の岡田克也でございます。ちょっと時間が変則で途中で切れてしまいますので大変残念でございますが、私は、きょうは日米安保条約の再定義、再確認の問題を中心に御質問したい、こういうふうに思っております。

先ほども話が出ておりましたけれども、本年四月に予定されておりますクリントン大統領の訪日では、日米安保条約の再定義、政府は再確認という言葉をお使いのようでありますけれども、再定義が行われるわけでございます。この安保の再定義という言葉は、ひとり歩きしているようにも思うわけでございますが、一つは、その意味するところが国民にまだ十分理解されていないのではないか、こういう気がいたします。単に安保が大事ですよということだけではない、もっと深い意味を秘めていると思いますが、そのことが十分理解をされていない。それから第二は、これは私の憶測かもしれませんけれども、日米両政府間でこの再定義について本当に見解が一致しているのかどうか。私は、村山政権を見ていた限りではかなりギャップがあるように思っておりましたけれども、政権がかわってその辺のギャップが埋められたのかどうか。こういった点を中心にきょうは聞いていきたい、こういうふうに思っております。

いずれにいたしましても、残すところあとニカ月でございます。十分な国民の理解を得てこの再定義というものがなされなければ意味がないわけであります。それだけの重要な問題でございますので、そういう問題意識で質問していきたい、こういうふうに思っております。

まず、本題に入る前に、恐縮ですが日米安保条約の意義につきまして、先ほども少し出ておりましたが、政治的な意義、そして軍事的な意義、分けて簡単に御説明をいただきたいと思います。

池田国務大臣 日米安保条約の意義ということでございますけれども、まず軍事的というお話がございましたけれども、我が国の安全を守っていく、あるいは防衛という観点から申しますと、何といいましても我が国自身を侵略から守っていく、この我が国自身の安定、安全、そして平和を守っていくという意義がございます。それと同時に、それとの関連におきまして、我が国周辺にございます極東地域の安定にもその役割を果たしていくという、そういう意義があるわけでございます。

それから、政治的な意義というお話がございましたけれども、御承知のとおり日米関係は、経済、政治、文化、非常に広範な分野にわたりまして幅広い、また深い関係があるわけでございますけれども、やはり日米安保条約というものはそういった幅広い両国関係の政治的な基盤をなしている、このように考えている次第でございます。

岡田委員 軍事的といいますか防衛的といいますか、その意義の中で今大臣がお話しになったところの中で、私はもう既に恐らくアメリカの日米安保条約に対する意義づけと少し差が出ているような、そういう気がするわけでございます。これは後ほど触れたいと思います。

それから、これは前政権、村山政権時代のことでありますが、村山さんはたびたび、東西対立が終了した、いわゆる冷戦が終わった、このことによって安保条約というものを堅持するということを合理化したわけですね。東西対立が終わったということで安保条約というものが必要になった、こういう論理を展開されたと思いますが、この点について、橋本内閣の外務大臣としてどういうコメントをされるでしょうか。

池田国務大臣 日米安保条約の持つ基本的な意味は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、そういった目的がどういう国際情勢の中で、また日本の置かれた状況の中で大切であるか、意味を持っているかという点については、それは安保条約締結の時点、またその後の時代の変遷、そして状況の変化によって随分変わってきているなと思っております。

かつては、東西冷戦構造の中において我が国を守る、こう考えました場合には、それは先ほどの午前中の御審議でも質問が出ておりましたけれども、やはり念頭にありますのは、自由陣営の中にある日本、そして、その自由陣営のいわばリーダーである米国との間の緊密な連携、同盟関係の上に立って、対侍します東の陣営、具体的にはその中心でございますかつてのソ連、これが潜在的脅威かどうかということでいろいろ話題にもなったことがございますが、そういったものに対して、どういうふうに対応していくかという観点から考えておったんだと思います。また、そのことが、その時代にあっては日本の安全と平和を守る上で基本であったと思います。

今、国際情勢は大きく変わりました。旧ソ連はもうございません。冷戦も終えんしてもう数年たちました。しかしながら、それでは我が国の周辺の状況は全く安心していい状況かといったら、そうは申せません。まだ、朝鮮半島の状況、その他いろいろ不安定な要因も内包しているわけでございますし、また、あちらこちらに核を含むかなりの軍事力の存在というものもございます。さらに、近代化という名前ではございますが、現実にそれを強化するような動きが複数の国において行われているということも、そういう現実もあるわけでございます。

そういった状況の中で我が国が安全を保つためには、やはり、みずから守っていくという自衛隊の存在と同時に、日米安保体制というものを堅持いたしまして、ここのところは力の空白ではないんだ、この地域はきちんと守っていくんだということを内外に示すということが安全につながってくると思いますし、また、そういった日米安保体制が厳然としてあるということが、我が国の安全のみではなくて、アジア太平洋全域の安定にも好ましい影響といいましょうか、そういった役割も果たしておるんだ、このように考えます。それは、いわば効果という意味でございます。

岡田委員 今の大臣の御認識、私も共有するわけでありますが、もうなくなった政権のことを言っても仕方がないのかもしれませんが、村山総理は、東西冷戦が終わって、自衛隊も認められるようになったし、安保条約も堅持をすることが必要になったと、こういう説明を聞いて、いつもよくわからないな、こう思っておりましたので、外務大臣も同じ連立与党の枠組みを崩さずにやっておられるわけでございますので、念のために聞いてみたわけでございます。今のお答えで、大臣の真意はよく理解したつもりでございます。

さて、村山総理は昨年一月十一日の日米首脳会談におきまして、アジア太平洋の安定と秩序維持のためには日米安保条約が大事である、こういうふうに述べられたと報道されております。またその後も、国会においても同趣旨の発言が続いてきたというふうに認識をしております。そのこと自身が、日米安保条約の適用範囲をめぐって政府を激しく追及してきた社会党の国会における姿勢を多少なりとも知る私にとりまして、非常に驚きであったわけでありますが、こういった、日米安保条約がアジア太平洋の平和と安定のために重要であるという認識は現政権においてもそのまま維持されている、こういうふうに認識してよろしいのでしょうか。

池田国務大臣 現橋本内閣におきましても、村山前首相が示されました認識、日米安保体制がアジア太平洋地域の安定のために重要であるという、その考え方は、何ら変わりはございません。

岡田委員 それでは、ここで言うアジア太平洋という言葉、これは具体的にどこまでを含んだ概念なんでしょうか。

池田国務大臣 地域の話というのは、往々にして必ずしも画然とした線が引かれていないというケースが多いわけでございますけれども、アジア太平洋地域というのも、そういった意味におきましては一義的な定義があるわけではないと思います。しかし、先ほど私の答弁でちょっと申しましたけれども、日米の安保条約があるということがアジア太平洋地域の安定のために好ましい影響を及ぼす、あるいは役割を果たす、こういう言い方をいたしましたけれども、そういうふうに考えているような次第でございます。

だから、これは決して適用がどうだこうだという話ではございませんで、日米の安保体制があるということが、我々の周辺でございます極東アジアはもとよりでございますが、東南アジアあるいはさらにオセアニアの方にも若干入りましょうか、そういった地域にも影響を及ぼすであろう、こういうことでございます。

岡田委員 この問題を議論するときに、いろいろな地域の概念がございまして、非常に議論が混乱をするわけであります。

日米安保条約は、極東という言葉を使っております。極東周辺地域というものについて一定の政府解釈がある。ところが、最近、アジア太平洋という言葉が出てまいりました。

今、大臣は、アジア太平洋の平和と安定のために安保条約が大事であるという認識は引き続き持っているというふうにおっしゃいましたが、最初の私の質問に対しましてお答えになったのは、日米安保条約の意義として極東地域の安定に役割を果たすという言い方で、そこでは極東地域という言葉を今お使いになったわけでございます。非常に言葉が混乱しているように思います。

加えて、私が非常に困惑しておりますのは、最近、我が国周辺地域という言葉が使われ出したわけであります。例えば、十一月二十八日に閣議決定されました防衛計画の大綱におきましては、日米安保条約に関する記述のところで、我が国周辺地域という概念を使っております。この辺は、一体どういうふうに整理すればよろしいのでしょうか。

池田国務大臣 言葉の定義の問題になりますので、必要があれば詳しくは政府委員から答弁させますけれども、極東地域と申しますときには、これは日米安保条約に使われている言葉でございまして、これは日米安保条約の目的とします平和なり安定なりを守っていく地域が要するに五条の日本、我が国と、六条の極東地域、ここにあるということは御承知のとおりでございます。そして、私がアジア太平洋という言い方をいたしましたのは、日米安保条約が直接その目的として平和、安定を維持していく、そういう対象には必ずしもしていないけれども、日米安保体制がきちんと機能しているということが広く周辺の地域も含めまして安心感を与えるといいましょうか、信頼感を持つということ、及ぼす、そういったことで、その影響をもたらす、あるいは効果を持つ、こう言ってもいいかと思いますけれども、そういった意味では、極東地域というよりははるかに広い地域を対象にしていると思います。

それから、防衛計画の大綱でございますが、新大綱で使っております。辺地域というのは――大綱の中で使われている言葉も、必ずしも一つの定義で説明できない、文脈によっていろいろ変わっているようなこともございますので、その点について私の立場で御答弁を申し上げるのは、ちょっと控えさせていただきたいと思います。

川島政府委員 お答え申し上げます。

大綱におきましては、いろいろな形で、御指摘のとおり、周辺地域という言葉が出ているわけでございます。ただ、これは、具体的にどこまでが周辺地域で、どこの国がどうこうということで使っているのではなくて、我が国の安全に重大な影響を与える事態が起こりそうな地域というくくり方でむしろ使っているように考える次第でございます。

したがいまして、この国は入っているのかとか、この国は内側かということではなくて、あくまでも我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態との関連でとらまえるということでございまして、ただ、そうはいっても若干の、新大綱の、防衛大綱の中においては幾つかの地域は言及されておりますけれども、この国とかこの地域とかいうことを念頭に置いて使った概念ではないということでございます。

岡田委員 これは、外務省に聞くのはやや適切でないかもしれませんが、この大綱の中の、まさしく日米安保体制について述べたところで、我が国周辺地域における平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境構築のために日米安保条約は引き続き重要である、こういう記述をしているわけであります。本来の、村山総理の、アジア太平洋の平和と安定のために重要である、こういう発言からくれば、当然ここは、我が国周辺地域というよりは、アジア太平洋の平和と安定のためという、そういう言葉が使われてもよかったのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、それが注意深く避けられた。そして同じ日に、当時の野坂官房長官は、談話におきまして、我が国周辺地域という表現は、日米安保条約に言う極東の範囲の解釈を変更するものではないということをわざわざ述べているわけであります。

こういった一連の流れを見ておりますと、状況に応じてうまく使い分けているような感じもいたしますし、あるいは政府の中が混乱しているようにも思うわけでございます。この点について、もし何か補足的に局長の方で御答弁ありましたら。

折田政府委員 御指摘の野坂前官房長官談話は、昨年十一月二十八日に政府が大綱を発表した際のものでございますが、この大綱が、日米安保体制は、今先生御指摘のように、我が国周辺地域における平和と安定を確保するためにも引き続き重要な役割を果たしていくものと考えるという認識をしているわけでございます。日米安全保障体制に基づきます米軍の存在、それから米軍の関与が我が国周辺地域の安定要因となっている、それから日米安全保障体制を基調とする日米両国間の安全保障、それから政治、経済、いろいろな各般の分野におきます幅広く緊密な協力関係が我が国周辺地域の平和と安定に貢献しているという趣旨であろうかというふうに思います。これは、官房長官談話で言われました「我が国周辺地域における平和と安定を確保し、」との表現によって日米安全保障条約に言う条約上の極東の範囲の解釈に関する政府統一見解を変更したものではないという認識を示されたものというふうに考えております。

岡田委員 今北米局長の方から事実関係の御説明があったと思うのですが、そういったいろいろな言葉が出てくること自身が政府の方で考え方がうまく統一されていない、そんな気がするわけでありますし、これは後で触れますが、この日米安保条約の再定義の問題にも響いてきているように私は思っております。これは後で触れたいと思います。

それでは、昨年の二月の二十七日に米国防総省の東アジア太平洋地域に関する米国の安全保障戦略、略称東アジア戦略報告が出ておりますけれども、ここにおきまして、米国のアジア太平洋地域における国益とは何かということについて、いろいろ記述をしております。アジア太平洋地域というのは世界で最もダイナミックな地域であり、アジアの繁栄と安定は米国経済の健全性にとって死活的に重要である。そしてまた、米国の同地域における国益は、一つは平和と安全を確保することであり、第二は商業上のアクセスである。第三は航海の自由であり、第四が覇権主義勢力の勃興阻止である、こういうふうに明確に述べております。

そこで大臣に御質問でありますが、じゃ、日本のこのアジア太平洋地域における国益というのは一体何か、どういうふうにお考えでございましょうか。

池田国務大臣 日本のアジア太平洋地域における国益という御質問でございますが、まず、日本は、我が国は我が国自身がアジア太平洋の真ん中にある、存在する国でございます。したがいまして、我が国のあらゆる面での、それはもう経済から文化から政治から、あらゆる面でのその利害というものは、すべてこのアジア太平洋地域とのかかわり、アジア太平洋地域との関係にかかわっておるというのは当然だと思います。

なお、今御指摘ございましたけれども、アメリカのいわゆるESRというレポートの中でも、米国自身がアジア太平洋との関係において自分たちの国益がかかっておるということを明らかにしたという点は、私もそのレポートが出ましたときに非常に注目し、また評価しているところでございますけれども、これは、米国は太平洋と大西洋の両方に面した国でございますので、全体として見れば、必ずしも太平洋地域の国家であるという認識はこれまでなかったのじゃないのかな、あるいは、ましてやアジアの一部ということではない、こういうことがあったのだと思います。

しかし、先ほどもお話がございましたけれども、アメリカの経済的な面あるいは文化的な面、政治的な面でのいろいろなかかわりということからいいますと、今どんどん成長しておりますアジアとの関係は、従来より以上にどんどん強まっている、そういうことを認識して、自分たちもアジアと太平洋のいわば一部である、あるいは深い国益があるのだということを鮮明にしたということで、非常に意義があるのだと思います。

我が国の場合には、そもそもがアジア太平洋の中にある存在でございますから、そのことを改めて認識するまでもない、全存在がかかわっておる、こう思っております。

岡田委員 日本にとってはアジア太平洋地域の平和と安定はあらゆる利害にかかわる、当然のことである、そういう御答弁だったと思います。

それでは、この米国の東アジア戦略報告の中に一貫して流れる見方で、アジア太平洋地域における米軍の前方プレゼンスは、アジア太平洋の安全保障と米国の全世界的な軍事体制にとって不可欠である、こういう考え方があると思います。またそういう表現も出てくるわけであります。この点について大臣は、認識を同じくされますでしょうか。

池田国務大臣 御承知のとおり、冷戦が終結いたしましてから、世界の安全保障環境がずっと大きく変わってまいりました。そういった中で、例えばヨーロッパにおきましては、格段の軍事力のレベルの低下があったと思います。そして、NATOとの関係で欧州に駐留しておりました米軍の兵力水準もぐっと下がった、このように考えております。それに対してアジアの方はどうかということでございますが、アジアの方は、先ほどの答弁でも若干申し上げましたけれども、依然として非常に不安定な要因を内包しているということがございますし、それから経済あるいは社会の発展段階から申しましても、なかなか、いわゆる統合だとか、きちんとしたかたい形での多国間のつながりというのはできにくい情勢にあろうかと思います。

ましてや安全保障の観点から申しますと、ヨーロッパにおきましては、いろいろな信頼醸成のための多国間の組織はもとよりのこと、実力を備えた、いわば集団的安全保障という言い方がございますけれども、多数の国が一緒になってそういった仕組みをつくるというのも現に存在するわけでございます、NATOのように。

ところがアジアの場合には、安全保障の関係では、信頼醸成の枠組みであるとか対話の仕組みというのは、ASEAN地域フォーラムを初めとしてようやくできつつはございますけれども、力を備えたそういうものがない、こんなこともございます。どうしても、アジア地域の安定、平和を守っていくという仕組みは、これまでございましたアメリカを一方の当事者とします二国間の同盟関係、日米とか日韓とかいろいろございますけれども、そういったものをきちんと前提にしながら各国が努力していく、こういうことじゃないかと思います。

そうして、米国は、冷戦が終わったからもういわゆる世界のお巡りさんだという立場は持つわけではないけれども、先ほども御指摘ございましたように、アジア太平洋地域にみずからも重大な、ハイタルな利害を有するという立場から、この地域の平和、安定に寄与していく、その役割を果たしていくという観点からいろいろ考えてまいりまして、十万人のプレゼンスが現在の情勢のもとでは必要である、こういうふうに考えておるというふうに理解しておりますし、そのことを我が国としても、米国のそういったこの地域の安定に寄与しようというコミットメントについては評価しておるところでございます。

関谷委員長 午後三時十分から再開することとし、この際、休憩に入ります。

   午後二時二十二分休憩

――――◇―――――

午後三時十一分開議

関谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

質疑を続行いたします。岡田克也君。

岡田委員 先ほどの米国防総省の東アジア戦略報告の表現でございますが、もう一つこういう表現があるのです。アジア太平洋の米国の安全保障政策は、日本の米軍基地へのアクセスと米軍の行動に対する日本の支援に依存している、こういう表現がございます。

この点について、大臣は同じような考え方に立たれますでしょうか。

折田政府委員 今委員御指摘のような表現がナイ・リポートの中に書かれているというのは、そのとおりでございます。

私どもは、アメリカの安全保障政策が、日本が日米安保条約に従って、米国に対して施設’区域を提供しているわけでございますけれども、そういう施設・区域に例えば第七艦隊が寄港する、そういうこととか、例えばホスト・ネーション・サポート、この前国会で御審議いただいて御承認をいただいた、ああいうことを通じて日本が支えていることがアメリカの安全保障政策に大きく役立っているというふうに思っておりまして、それを、アメリカ側から見た表現として今のような表現がなされているものであるというふうに考えるところでございます。

岡田委員 確かに、アジア太平洋地域における十万の米軍のうちの約半分近くが日本にあるわけでありますし、こういう表現になるのはある意味では当然のことかと思いますが、先ほど休憩前に大臣の方からお答えをいただいたわけでありますけれども、米軍の前方プレゼンス、この意味するところは私もよくわかりません。わかりませんが、前方プレゼンスがアジア太平洋の安全保障にとって非常に重要であるということをアメリカが言っている。大臣も、その点については評価している、こうおつしゃいました。そして、米軍の前方展開能力と言った方がいいかもしれませんが、それの具体的な運用に当たっては、日本の基地あるいは日本のサポート、そういうものが非常に重要な役割を果たしている、続けますとこういうことになるわけであります。

ということは、アジア太平洋の平和と安定のために、日米安保条約に基づく日本の基地あるいは日本のサポートというものが非常に重要である、こういうふうに考えるのが素直だと思いますが、この点について、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

池田国務大臣 先ほどのお話にもございましたように、米国がアジア太平洋地域の平和と安定を維持するために確固たるコミットメントをしていく、しかも、それは自分自身の国益にもかかわることだ、こういったお立場でコミットメントを維持していくということは、私どもとしても評価するところでございます。

さてそうして、そういった中で、我が国としては、日米間で安全保障条約を締結しておりまして、そして、その安全保障条約で米国が果たすべき責務、役割というものをきちんと果たしていく。そのために必要なものとして、我が方として区域また施設を提供していくという責務を果たしていく、こういうことになっておるわけでございます。

岡田委員 私の一番最初の質問、つまり日米安保条約の意義というところで、大臣は、我が国自身の安全を確保するために安保条約が重要である、それから、極東地域の安定に役割を果たしている、こういうふうに言われましたが、今の国防総省のレポートを読みながら考えてみますと、要するに安保条約について、そういう我が国日本、あるいはその周辺極東地域ということだけではなくて、アジア太平洋全体の平和と安定のために安保条約というものが非常に役に立っている、このことはもう何回も言われているわけですけれども、そのことの意味というのは、もっと具体的に言えば、日米安保条約に基づくいざというときの基地の使用、あるいはそのときの日本のサポート、こういうものについて当然アメリカは期待をしている。そのことが、アジア太平洋の平和と安定のために日米安保条約は重要であるということの意味なんだ、こういうふうに理解できるわけでございますが、大臣の御見解を聞きたいと思います。

池田国務大臣 私は、日米安保条約の安全保障面における、軍事面における意義というのは、先ほども申しましたように、まず我が国の安全を守るということが第一義であり、そして、極東地域の安定のためにも役割を果たしていくということだと思います。そして、我が国の区域・施設の提供というのは、そういった目的を果たしていく上で米軍が担っていくべき役割を可能たらしめるような、そういったものとして提供しているものだ、このように考えております。

ただ、そのような役割を持っている日米安保体制というものが十分に機能するということは、これはさらに広く、アジア太平洋全域の安定に好ましい影響を持っている、こういうふうに御答弁申し上げたと思っております。

岡田委員 なかなか説明が難しいところなんですが、もし大臣のおっしゃるようなことだといたしますと、日米安保条約はアジア太平洋の安定のために必要だ、しかし、アジア太平洋全体でなくて、あくまで安保条約は極東及びその周辺である、これは条約上当然そうなっているわけですけれども、そこに乖離が出てきているのじゃないか。アメリカの方は、少なくとも私が読む限りでは、アジア太平洋全体の平和と安定のために安保条約が必要である、重要である、こう言っていて、そこに、極東及びその周辺地域と、それ以外のアジア太平洋というのを分けて考えていない、こういうふうに読めるわけでございます。

そして、安保の再定義、再確認の作業というのは、そういった安保条約が、日本そのもの、あるいは極東地域の平和と安定だけじゃなくて、アジア太平洋全域に適用されるということについて、まあその適用の意味はなかなか難しいところでありますが、そこに安保再定義の本質があるのじゃないか、こういうふうに私は思うわけでございますけれども、いかがでしょうか。

池田国務大臣 日米安保条約の解釈、そうしてその果たすべき役割については、日米間に意見の相違はございません。私が先ほど申し上げたようなことでございます。

ただ、見方を変えますと、同じことを二つの言い方があるだろうと思います。私が申しましたのは、日米安保体制の役割というのは、まず日本、そして極東地域、この地域の平和、安定を守るということが目的である、しかし、そのことがさらに広い地域の安定に好ましい影響、効果を持つよ、こういうことを申し上げたわけでございます。

逆の見方をしますと、この非常に広範なアジア太平洋地域の安定が大切でございますよ、そういった外周から話を始めまして、そうして、さあその中に、この地域の安定を守る役割を担うものとして、この日本を守るということで日米安保体制がありますよ、あるいは、極東地域を視野に入れながら日米安保体制がございますよ、これがちゃんと役割を果たします、これが全体としての安定にも役割を果たしていますよ、そういう言い方だと思いますね。

中心からずっと外へ向かって説明をしていくか、全体の安定ということをまず最初に置きまして、そして、それを担っていくいろいろな要素について言及していくか、物の見方というか、その説明の仕方の違いで、本質は全く同じだと思います。

岡田委員 ただ単に、米軍がいるということ、もちろんそれも平和と安定に役に立つわけですが、有事の際に現実にそれが展開される、あるいは使用される、米軍戦力が使用されるということを除いては、やはりこれは実際の担保がないわけですね。そういう意味で、私は、アメリカのこの国防総省のレポートを読む限りは、別に極東周辺に限らずに、アジア全体のことについて同じように見ているんじゃないか、こういう気がするわけであります。それは見方の違いかもしれませんが。

それでは、仮に極東地域あるいはその周辺地域以外のアジア太平洋地域で何か有事が発生したときの在日米軍の役割というものはどういうものが考えられるんでしょうか。

池田国務大臣 まず、前半の部分で、委員、有事のときでなくては余り意味がないという御趣旨に聞こえましたけれども、私は、そうではなくて、やはりこういったプレゼンスがあるということ自体が、不安定な情勢を招く、緊張を招くということを回避する、あるいは抑止といってもよろしゅうございましょうか、そういった効果もあるんだ、このように考えております。

そうして、さて、有事の際に駐留米軍がどういうふうに行動するかという点につきましては、これまでもいろいろその議論があったところでございます。あくまで、私が申しましたように、日米安保体制、安保条約の目的とするところは日本とそして極東地域の安定でございますけれども、しかしながら、その他の地域においていろいろ起こりました問題がやはり我が国あるいは極東地域の安全にもいろいろな影響を与えるということはあり得ることでございますし、またそういったことは別にいたしましても、いわば我が国に駐留いたします米軍というものが移動いたしまして、そして、その後別の地域での何らかの任務につくということは従来もあったところでございますし、それは何ら日米安保条約あるいは我が国の法令に、法秩序に反するものではないということは、もうこれは確実なところであると思っております。

岡田委員 私が申し上げましたのは、有事でなければ意味がないということではなくて、いざ有事のときにそれが使われる可能性があるということがなければ、それを全く頭から否定してしまったんでは、これは張り子のトラになってしまう、そういう意味で申し上げたところであります。

さて、今大臣の方から移動という考え方が示されたわけでありますが、私は、基本的にこの移動という考え方は極めて妥協的な考え方で、ある意味じゃ日本の責任というものの所在が不明確になってしまう、こういうふうに思っているところであります。

それと同時に、この移動という考え方で説明できない場合が出てまいります。例えば、日本から直接に戦闘作戦行動に出る。出る先は極東ではなくて、あるいはその周辺地域ではなくて、その他のアジア太平洋地域である。こういう場合には、これは日本としてはどういう対応になるんでしょうか。

林(暘)政府委員 前々から御答弁申し上げているとおり、我が国が提供いたしております施設・区域を使用していわゆる戦闘作戦行動に出る場合は事前協議の対象になっておりますが、日本の施設・区域を使用するという使用目的が、第六条に書いてありますように、あくまで極東の平和と安全の維持ということでございますので、今御指摘のアジア太平洋地域における出来事というのは、具体的にどういうことか想定しないで一般論を申し上げるのは非常に難しいわけでございますけれども、極東の平和と安全の維持ということに関係のない目的のために戦闘作戦行動の基地として日本の施設・区域を使用するということは、安保条約が想定しておらないことですし、安保条約が認めるところではございません。

岡田委員 一方で、アメリカは極東ということではなく、広くアジア太平洋地域の平和と安定のためということを言っているわけでありますから、具体的にはそういうことが場面としてあり得るわけですね。極東以外のアジア太平洋地域で何か紛争が発生した、在日米軍を使いたい、こういうことは論理的にあり得ることであります。そのときには、恐らく超法規的な措置といいますか、条約では読めませんから、条約の根拠なくアメリカは日本に対して基地の使用について承認を求める、こういうことにならざるを得ないような気がするわけであります。リビアを攻撃したときのアメリカ、米軍がイタリアの基地を使ったときも同じような場面であったというふうに聞いておりますが、論理的にはそういうふうに考えてよろしいんでしょうか。

池田国務大臣 我が国も米国も、高度に発達した民主主義国家であり、また法治国家でございます。そして、その両国の憲法その他の法令の体系、そしてその条約関係も、これはいかなる場合であってもきちんと遵守していくべきものであるし、そういうことでまいったと思います。そして、現在のそういった国内法並びに国際法の体系の中で、私どもは、いろいろな事態に対して対応するそういった備えをしてまいるということでございます。

岡田委員 御趣旨は必ずしもよくわからなかったんですが、そういった超法規的な場合には、これは認めない、こういう御見解だというふうに理解してよろしいでしょうか。

池田国務大臣 まず、何といっても一番大切なのは、いかにして平和なまた平穏な状況を維持していくか、そういった良好な安全保障環境を維持していくか、その面で努力をしていくということでございましょう。しかし、そういった努力にもかかわらず、何らかの対応をしなくちゃいけない事態が出てまいりました場合に、どうやって対応するかということは、安保条約それからそれぞれの国内法制があるわけでございますけれども、そういった中で我々は対応していかなくちゃならないし、対応していける、こう考えているところでございます。また、そのような役割を果たせるような条件というものを整備していくというのが我々の務めであろうと思っております。

岡田委員 なかなかお答えしにくい問題であることはわかりますが、明確なお答えはいただけなかったように思います。いずれにいたしましても、そういった極東以外のアジア太平洋、これの平和と安定は大事だとアメリカは言っている。そして、極東以外のアジア太平洋で何か紛争が起こる、有事になった場合には、一つは移動の考え方で処理をする。もう一つは、直接的な戦闘作戦行動というのは、これは基本的には条約外だからだめだ、こういうことになりますと、安保条約というのはアジア太平洋の平和と安定のために重要であると言いながら、実は極東以外の地域については、安保条約の外の話に皆なってしまっているわけですね。これは、安保をわざわざ再定義することの意義を全く空洞化していることになるんじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。

池田国務大臣 休憩前の御質問にお答えしたところだと思いますけれども、安保条約の持つ意味というものをここで再確認していくということは、何といいましょうか、国際情勢は大きべ変わったけれども、そういった国際情勢の激変した中にあってもやはり我が国を守るために、またその極東地域の安定を維持するために、安保条約が不可欠であるということをまず言うわけでございます。それと同時に、そのような体制が確固として存在するということが、広くアジア太平洋地域の安定にも資するんだ、役割を果たしていくんだということでございます。それはもうるる御説明したところでございますので、繰り返しません。

岡田委員 お話を聞いておりますと、安保条約が存在すること自身がアジア太平洋の平和と安定のために役に立つということは、何か瓶のふた論というのを思い出すわけでありまして、安保条約で日本をくくっていることが、抑えていることがアジア太平洋のために役に立つというふうにも聞こえるわけでございます。

いずれにしましても、今の移動の議論、そして直接戦闘作戦行動はできない、こういうことになりますと、私は実害もあると思うのですね。実害というのは、移動の場合は事前協議の対象じゃないわけですね。我が国としては、アジア太平洋地域において米軍が出ていく、しかしそれは移動という考え方だから日本は関係ないよ、こういうことになりますと、本当にクリティカルな場面で日本とアメリカの利害が一致しない、そういう場合もあるかもしれない、あるいは、日本としても何か意見を言いたい、条件をつけたいということがあるかもしれない、そのときに全くそういうことができずに、ただ単にアメリカの船舶が日本の港を出ていくのを見ているだけだ。これは、私は日本にとって責任ある態度とは言えないのじゃないか、こういう気がするわけでございますが、大臣の御感想を聞きたいと思います。

池田国務大臣 まず、私どもはそういった事態を避けるためにあらゆる努力をしなくてはいけない、こう思っております。

それから、先ほどから御答弁申し上げております私の答弁も、あるいは条約局長の答弁も含めまして、答弁いたしておりますところは、極東の地域以外の地域で起きました事態に対して、我が国にございます基地から直接作戦行動に出ることはできないということを言っているわけでございますけれども、それも条約局長が申しましたように、極東の地域に大きな影響を与えない事態であるにもかかわらず直接作戦行動に出ることはできない、こういうふうに従来から政府としては申し上げているところでございます。

そうして、また移動という概念はいろいろございますけれども、軍の運用におきましては、通常におきましてもいろいろな軍の移動というものが当然日常的にあるわけでございます。そういうものも含めてのことなのでございますから、我が国に駐在します米軍というものが我が国の基地から出ましてそして日米安保条約の対象としております地域を外れた地域でまた別途の行動をするということは、それは従来もありましたし、これは決して条約が禁ずるところでもございませんし、憲法以下の我が国の法律に触れるところでもないと考えております。

岡田委員 なかなか議論がかみ合わないわけでありますが、従来は、安保条約というものは基本的に米軍が日本を守ってくれる、そのかわり米軍には日本の基地を使わせてあげるよ、こういう考え方だったと思うのですね。それが私は次第に変わってきているのだと思います。

ということは、もちろん日本を守ってもらうことは当然でありますが、米軍のアジア太平洋地域における行動というものについて、日本も憲法の枠の中で許される範囲の中で協力をしていく、そういう大きな流れの中で安保条約そのものの意味というものが変わってきているのだ、そういうふうに思うわけでございます。

そして、今回の橋本・クリントン会談というのは、そういう意味で安保の再定義ということを言っている。アメリカは、防衛庁長官との記者発表の中で、これは前防衛庁長官でありますが、歴史的な意義を持つという表現を使っているのですね。もし、従来の考え方をそのまま踏襲していくのなら、そんな表現は使わないはずであります。

そういう意味で、私はその大きな流れの変化というものを十分に踏まえ、理解した上で日本も対応していかなければいけない、あるいは、対応するに当たっては、国民にそのこともきちんと説明しなければいけない、こういうふうに思うわけでございます。今のままでは、何か安保再定義といっていろいろ言う割にはよくわからないというのが今の国民の受けとめ方でありますし、私どもも含めてそういうふうな感触を持っているわけでありますが、ぜひそういったことも含めてわかりやすく国民にお話をいただければ大変ありがたいことだ、こういうふうに思っております。もし大臣の方で何か御発言がありましたら。

池田国務大臣 私は、日米安全保障条約の持つ意味ということでございますけれども、その解釈が変わらなくても、また現行憲法その他の解釈が変わらなくても、国際情勢の変化に応じまして、そういった解釈の中でなし得る行動というものがアジア太平洋の地域の平和と安定を維持する上において果たす役割、あるいは及ぼし得る好ましい影響力というものが当然変化しているのだ、このように考えております。

岡田委員 昔からの条文をそのまま維持をしながら、その解釈を多少変え、あるいは移動という概念を使いながら対応していく。いわば守りの姿勢だと思うのですね。それで果たして日米間で、本当に日米安保条約の重要性、必要性についてきちんとした理解がされるのだろうか、支持がされるのだろうかということを非常に心配するわけであります。

むしろ、日本として、ここまではやります、場合によっては安保条約の適用範囲についての改正もいといませんね、そして日本の支援というものはここまでやります、こういう提案が橋本総理からクリントン大統領に対してなされる、そのぐらいの心意気でこれをやっていただきたいな、またそうしないと、この安保条約を単に守っているだけではもたないのじゃないか、こんな気が私はしているわけでございます。ぜひまたお考えいただければありがたいと思います。

時間もございませんので、次に進みたいと思いますが、集団的自衛権の問題でございます。

簡単に触れたいと思いますが、最近マスコミ等でも、集団的自衛権というのは認めるべきだ、こういう議論がふえてきているように思います。私は基本的に、日米安保条約に基づいて米軍が活動するときに、日本がそれに憲法の枠の中で可能な限り協力すべきだという考え方に立っておりますけれども、しかし集団的自衛権を認めてしまうということについては否定的でございます。

いろいろなことが言われるわけですが、例えば、集団的自衛権というものを認めたとしても、その具体的内容というのは政策選択の問題だから実害はないのだ、こういう議論があります。これに対して、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

池田国務大臣 申しわけございません。ちょっと最後の、こういう議論があるがというところを、ちょっとよく聞こえませんでしたので。恐れ入ります。

岡田委員 集団的自衛権というものを憲法上認めたとしても、具体的にどこまで集団的自衛権を実現していくかというものは、これは政策選択の問題、立法政策選択の問題と言ってもいいかもしれませんが、であるから、そんなに心配しなくてもいい、例えば集団的自衛権を認めたからといって、アメリカ本土の攻撃に対して、日本の自衛隊が行ってそれを守らなければいけないというような議論にはならないから心配しなくていいんだ、こういう議論があるわけでございますが、この議論について、大臣の御感想を聞きたいと思います。

池田国務大臣 御承知のとおり、我が国も含めましてあらゆる国が、国際法上は個別的自衛権と同時に集団的自衛権も有しているところでございます。しかしながら、我が国の場合には、現行憲法の規定からして、集団的自衛権は有してはいるけれどもその行使は憲法上認められるところではない、これがこれまでの我が国がずっと一貫して持してきた態度である、立場である、このように考えております。

そういった観点から申しますと、そもそも我が国の場合は集団的自衛権の行使というものは憲法上認められないのであるので、認めたとしてもどうかという議論は成り立たないと思いますけれども、我が国ではなくて、国一般の話として申し上げますならば、それは、集団的自衛権があったからといってそれをどこまで行使するかというのは、これはその国その国の政策上の判断に係るところだと思います。それは個別的自衛権についても同じことがあり得るのかと思います。

岡田委員 私は、ちょっと今の大臣のお答えと趣旨は違うかもしれませんが、立法政策でいかようにもなるので心配する必要がないという議論に対しては、やはり憲法というものは重いわけでありまして、憲法のたがを一回外してしまって、そして立法政策で国会で多数決で決めればどうにでもなる、こういうのはそこで質的に変わるのだと思うのですね。加えて、憲法九条というものの存在価値ですが、個別的自衛権は発動を認める、集団的自衛権の発動も認める、こういうことになりますと、残るのは集団的安全保障かそういった概念ぐらいのことでありまして、九条は完全に空洞化するのではないか、こんな考え方に立っているところでございます。

したがって、集団的自衛権というものを憲法上認めても実害がないのだという議論はちょっととれないのではないか、こういうふうに考えているところでございます。この点について、大臣のお考えがありましたら聞かせていただきたいと思います。

池田国務大臣 委員の御見解は御見解として承らせていただきましたけれども、政府といたしましては、集団的自衛権の問題については先ほど申し上げましたような姿勢で、立場で一貫してきたところでございます。御議論は御議論として承らせていただきます。

岡田委員 有事の際の米軍に対する我が国の支援活動、そういう観点で集団的自衛権の問題が議論されていると思いますが、私は、もしそういう場合について議論するのであれば、むしろそれは武力行使との一体性の議論で処理できることではないか、こういうふうに思っております。ぎょうはもう時間もございませんので、余り中身には触れませんが、もちろん武力行使の一体性というものについて、内閣法制局の見解は極めて抽象的でありまして、基準として果たして適当かどうかという問題はありますけれども、そういう問題として、より明確な基準を置くことでかなりのことができるだろう、こういうふうに思っております。相手国の領土、領海、領空に至らない範囲であれば、かなりの範囲で支援活動というものが憲法上認められるのではないか、こういうふうに思っているところでございます。

最後に、先般、パレスチナの選挙監視に私も参加をさせていただきまして、大変勉強になりました。ありがとうございました。日本の総員七十七名ですか八名ですか、世界で一番多くの数でありまして、それぞれのお立場で大変活躍をされたわけでありますが、その中で、一般のボランティアの方と話をしていて若干なるほどと思ったことがございます。

それは、せっかくこういった選挙監視活動に参加をしても、その後のフォローアップ体制がきちんとしていなければ、せっかくパレスチナまで来て活動したのに、その後パレスチナの和平問題がどういうふうに変わっていくのか、もちろん新聞その他ではわかりますけれども、外務省からきちんとしたそういったことについてのフォローアップが欲しい、こういうお話がございました。この点について、外務省としてどういうふうにお考えか、最後にお聞かせいただきたいと思います。

池田国務大臣 先般、パレスチナの選挙監視団に岡田委員御自身も参加されまして、大変難しい環境の中で大きな活動をなされました。外務省といたしまして、また政府といたしまして心から感謝を申し上げるとともに、評価させていただく次第でございます。

この監視団、御指摘のように、衆参両院からも大勢参加していただきましたし、全体で七十七名と、最大の規模で大変大きな役割を、選挙監視という名目でも果たしましたし、またあの地域の諸国からの日本に対する評価を格段に高めたのではないか、このように考えている次第でございます。

そして、ただいま御指摘のございました、ボランティアで参加された方へのフォローアップが大切ではないかという御指摘、おっしゃるとおりだと思います。委員御自身の経験を踏まえての大変大切な御指摘と承らせていただきまして、外務省としても適切に対応してまいりたい、このように考えます。

岡田委員 ありがとうございました。終わります。




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